第26話 外の気配

 私とロコは、ラナリアちゃんと一緒に寝ることになった。

 ラナリアちゃんが、部屋で人の気配のようなものを感じたらしいので、このような状況になったのだ。


「それにしても、ベッドが広くてよかったね」

「あ、はい。そうですね……」


 私は、ベッドで寝転がりながらそのようにラナリアちゃんに話しかけた。

 ここのベッドは、かなり広いため、二人と一匹が入ってもかなり余裕がある。

 流石は、公爵家と言いたい所だが、そのような部分で感心するのは少し失礼なのかもしれない。


「クゥン?」

「あれ? ロコ、どうかしたの?」


 そんなことを考えていると、ロコが少し窓の方に目を向けた。

 ロコは、周囲の気配などに敏感である。もしかしたら、外に誰かいるのかもしれない。

 そうなると、ラナリアちゃんが感じていた気配は本当だったということになる。それは、かなり怖いものだ。


「ロコは、外に何かを感じているのでしょうか?」

「うん、そうだと思う。でも、安心してもいいかもしれない。ロコが吠えていないからね」

「吠えていない?」

「不審者だったら、ロコが吠えるはずだよ。だから、ロコが知っている人が外にいるということだと思う」


 しかし、私はロコが一向に吠えないことで少しだけ安心することができた。

 もし外に不審者がいるなら、ロコは絶対に吠えるはずだ。それがないということは、外にいるのはロコが知っている人になるということである。それなら、別に怖がる必要はないだろう。


「でも、知っている人が外にいるなら、ロコはこのように反応しないのではないでしょうか?」

「あ、うん。それは気になる所なんだよね……」


 だが、まだ気掛かりはあった。

 知っている人が外にいるだけなら、ロコは何も反応しないはずである。

 それなのに、反応しているという事実は、中々おかしいことだ。


「……考えられるとしたら、ロコが知っている人と知らない人がいるというパターンかな?」

「外に二人、誰かがいるということですか?」

「うん。それなら、ロコも吠えないかもしれない。知っている人が近くにいるなら、とりあえず吠えなくてもいいと、ロコも判断するはずだから」


 以上のことから、私はそのような結論を出した。

 ロコが知っている人と知らない人がいる。それなら、ロコのこの行動も納得することができるのだ。


「でも、それはおかしな話ですね。こんな夜遅くに二人の人物が外にいるのは、中々不自然ではないでしょうか?」

「そうだね……」


 しかし、その推測は少しおかしいものでもあった。

 こんな夜遅くに、外に二人の人間がいるとは中々考えにくい。

 これが昼間なら、配達人と使用人などの組み合わせで納得できるのだが、この時間ではそうもいかないのだ。


「……例えば、庭に不審者がいて、誰かがそれを見つけたという可能性はあるかもしれないね」

「あ、そうですね。それは、あるかもしれません」


 私の予想に、ラナリアちゃんは同意してくれた。

 庭に不審者が入って来て、それを誰かが見つけた。それなら、全てのことが納得できなくはないのだ。


「庭で、誰かが見回りをしているとかあるの?」

「聞いたことはありませんが、もしかしたらそうしているのかもしれませんね」

「そっか……でも、とりあえずは安心してもいいのかな……?」


 ラナリアちゃんは、庭で見回りがあるかどうかはわからないようである。

 結局、外で何が起こっているのかはわかりそうにない。


「まあ、気にしても仕方ないよ。とりあえず、何も考えずに寝た方がいいと思う」

「そうですね。ミナコ様の予測通りなら、きっと問題ないでしょうし……」


 そこで私は、結論を出した。

 これは、あまり気にしても仕方ないことなのだろう。

 ロコが吠えないことから、誰か知っている人が外にいる可能性は高い。それなら、何も問題はないはずである。

 こうして、私達はそれ以上気にしないことにした。きっと、何も問題ないはずである。

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