第25話 不安を感じて

 夕食や入浴を終えて、私とロコは部屋に戻って来ていた。

 今日は、ラナリアちゃんがやって来て色々とあった。だが、なんだかんだ楽しい一日だったと思う。


「さて、そろそろ寝ないとね……」

「クゥン……」


 とりあえず、私はそろそろ寝ようと思った。

 すると、ゲージの中にいるロコが何かを訴えかけてきた。

 恐らく、一緒に寝たいということなのだろう。


「今日も一緒に寝たいの?」

「クゥン」


 しかし、私は少し考えていた。

 こちらの世界に来てから、私は毎日ロコと一緒に寝ている。だが、それがそこまでいいことだとは思えないのだ。

 このままでは、ロコが一人で寝ることができなくなってしまう可能性がある。そうなると、色々と都合が悪いのだ。


「……でも、ロコも不安なんだよね」


 だが、ロコが一人で不安なことはよく理解できた。

 あちらの世界にいた時は、ロコはこのように一緒に寝たいと言ってくることはなかった。むしろ、私から誘うことの方が多かったくらいだ。

 つまり、こちらの世界でロコが要求してくるのは、特別な理由があるからである。その理由は、恐らく不安だ。こちらの世界にまだ慣れ切れていないロコは、一人で眠るのが不安なのである。

 私も、不安を感じていない訳ではない。そのため、ロコの気持ちはよく理解できるのだ。


「仕方ないか……」

「クゥン」


 私は、ゲージの中にいるロコをゆっくりと抱き上げた。

 今日は仕方ないので、ロコと一緒に寝ることにしたのだ。

 というよりも、これからしばらくはロコと寝ることになるかもしれない。ロコの不安が解消されるまで、そうしてあげた方がいいと思うからだ。


「うん?」

「クゥン?」


 そう思いベッドに向かっていた私とロコは、部屋の戸が叩かれる音に反応した。

 こんな時間に、誰が訪ねて来たのだろうか。


「し、失礼します」

「えっ?」


 私が戸を開けると、そこにはラナリアちゃんがいた。

 寝間着姿のラナリアちゃんが、部屋の前に立っていたのだ。


「ラナリアちゃん、どうしたの?」

「えっと、実はミナコさんにお願いがあるんです」

「お願い?」


 どうやら、ラナリアちゃんは何かお願いがあって、ここに来たようである。

 しかし、こんな夜遅くにお願いとは一体なんなのだろうか。


「何かな?」

「その一緒に寝て欲しいんです」

「一緒に?」


 ラナリアちゃんのお願いは、そのようなものだった。

 一緒に寝て欲しい。それは、奇しくもロコと同じような願いだった。

 もしかして、ラナリアちゃんも新たな環境が不安なのだろうか。まだ子供であるため、そう感じてもおかしくはないのかもしれない。


「もしかして、不安なの?」

「……はい。なんだか、人の気配を感じてしまって……」

「人の気配?」

「多分、気にし過ぎだと思うんですけど……」


 私の質問に、ラナリアちゃんはそう答えてくれた。

 どうやら、人の気配を感じたようである。そういう風に不安になることは、よくあることだ。私にも覚えがある。


「わかった。それなら、一緒に寝ようか」

「はい……」


 私は、ラナリアちゃんの要望を受け入れることにした。

 不安を感じているラナリアちゃんを、追い返すことなど絶対にできない。ここは、私の部屋にいてもらった方がいいだろう。


「……そういえば、ロコもそわそわしていたね」

「クゥン……」


 ラナリアちゃんの話で、私は少し考えた。もしかして、ロコが不安になっているのは人の気配を感じたからではないのかと。

 しかし、それならロコも吠えたのではないだろうか。怪しい人がいたなら、ロモも吠えるはずである。だが、吠えなかったため、不審者はいなかったのかもしれない。

 結局、私にはわからなかった。とりあえず、警戒しておく必要はあるのかもしれない。

 こうして、私とロコは、ラナリアちゃんと一緒に寝ることになるのだった。

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