第24話 開かれた心
私とロコは、ラナリアちゃんとのお茶を終えて廊下を歩いていた。
ラナリアちゃんのおかげで、とても楽しい時間を過ごすことができた。ロコも、結構な時間構ってもらえたので、満足そうである。
「あっ」
「クゥン」
そんな私達は、廊下の正面からアムルドさんが歩いてくることに気づいた。
アムルドさんも、私達に気づいているようだ。
「ミナコさん、こんにちは」
「こんにちは、アムルドさん」
「ワン」
私達は、そのように言葉を交わした。
そこで、私はあることに気づいた。なんだか、アムルドさんは少し嬉しそうにしている。何かいいことがあったのだろうか。
「アムルドさん、どうかしたんですか? なんだか、とても嬉しそうですね?」
「え? ああ、そうですね。少し嬉しいことがあったのです」
私の質問に、アムルドさんはそのように答えてくれた。
やはり、何か嬉しいことがあったようだ。
「どんな嬉しいことがあったんですか?」
「ええ、実はラナリアのことで少しいいことがあったのです」
「ラナリアちゃんのことですか?」
どうやら、ラナリアちゃんのことでいいことがあったらしい。
ラナリアちゃんとは、先程お茶をしたばかりだ。そのラナリアちゃんにいいことがあったとは、どういうことなのだろう。
「ええ、ラナリアが先程、ミナコさんとお茶をしたと嬉しそうに話していました」
「ああ、確かに先程お茶はしましたね」
私の疑問に、アムルドさんはそう答えてくれた。
ラナリアちゃんにいいことがあったとは、私とのお茶だったようである。
しかし、あのくらいのことで、アムルドさんまで喜ぶとは意外だ。別に、そこまで喜ぶようなものなのだろうか。
「ラナリアはミナコさんにかなり懐いているみたいですね?」
「え? そうなんですか?」
「ええ、そうですよ。ラナリアは人見知りをする方ですから、あなたとお茶を楽しむということは、あなたに懐いている証拠なのですよ」
「そうなんですね……」
アムルドさんの言葉に、私は驚いた。
ラナリアちゃんが人見知りとは、まったく思っていなかったからだ。
だが、考えてみれば最初に話した時は、かなり私を警戒していた気がする。その警戒が早くに解けたため、気づかなかっただけなのかもしれない。
「これも、ミナコさんの人徳でしょうね」
「人徳……」
「おや、どうかしましたか?」
そこで、私は少し疑問を感じた。
アムルドさんは、私の人徳がラナリアちゃんの心を開いたと思っているようだが、それは少し違う気がする。
私は、腕の中で大人しくしてくれているロコを見る。ラナリアちゃんが心を開いているのは、私ではなくロコなのではないだろうか。
「ラナリアちゃんは、私に懐いているというよりは、ロコが好きだから、私と話せるようになったということではないでしょうか?」
「ロコですか?」
「ええ、ラナリアちゃんは、ロコには心を開いていると思います。だから、私とも接することができるようになったんじゃないですか?」
私の考えは、そのようなものだった。
ラナリアちゃんが私に懐いているのは、人徳によるものではない。ロコが好きだから、私にも慣れた。そのような流れのはずなのだ。
「いえ、それは違うと思いますよ」
「え?」
そんな私の考えを、アムルドさんはすぐに否定してきた。
どうやら、私の意見は違うようだ。アムルドさんもかなり自信を持っているため、何か理由があるのだろう。
「それは、どういうことですか?」
「ラナリアは、その程度のことで心を開いたりはしませんよ。ロコと接して、あなたと接して、大丈夫だとわかったからあなたに心を開いたのです」
「そうなんですか?」
「ええ、絶対にそうです」
アムルドさんは、そのようにはっきりと言ってきた。
兄であるアムルドさんがそう言うなら、間違いないのだろう。
私自身の人柄で、ラナリアちゃんが懐いてくれている。それは、私にとって嬉しいことだ。
「これからも、ラナリアと仲良くしてあげて下さいね」
「はい、もちろんです」
アムルドさんの言葉に、私はゆっくりと頷く。
こうして、私とアムルドさんの話は終わるのだった。
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