第18話 仕事の手伝い

 私とロコは、アムルドさんの元に来ていた。

 私の仕事に関して、相談するためである。


「なるほど、事情はよくわかりました」


 話を聞き終わって、アムルドさんはそのように呟いた。

 その後、アムルドさんは考えるような仕草を見せる。

 どうやら、私の処遇について考えてくれているようだ。


「……ミナコさんが、仕事をしたいという気持ちは、とても立派だと思います」

「あ、ありがとうございます」


 最初に、アムルドさんはそのようなことを言ってきた。

 そのように褒められると、照れてしまう。

 ただ、その入りをしてくるということは、仕事は与えられないということだろうか。


「しかし、ネセーラが言った通り、あなたに使用人の仕事をしてもらう訳にはいきませんし、外で働かせることもできません。これは、公爵家の見栄ということですね」

「あ、はい……」


 ネセーラさんが言っていた通り、私が使用人の仕事をしたり、外で仕事をしたりすることはできないようだ。

 やはり、私は仕事ができる訳ではないようだ。

 少し残念だが、それも仕方ないのだろう。保護してくれている公爵家に迷惑をかける訳にはいかない。


「わかりました。それなら、今回は諦めます」

「あ、いえ、まだ結論を出すには早いと思いますよ?」

「え?」


 そう思った私だったが、アムルドさんの結論は違うようだ。

 どうやら、私の早とちりだったらしい。


「あなたにできる仕事は、僕の手伝いだけ、その結論は間違っていません。つまり、その結論に従えばいいということです」

「えっと、それじゃあ……」

「ええ、あなたに私の仕事を手伝ってもらいたいのです」


 アムルドさんが出した結論は、そのようなものだった。

 私がアムルドさんの仕事を手伝う。その案でいいようだ。


「でも、私に手伝えるのでしょうか?」

「ええ、書類の整理などなら、ミナコ様でも問題ないと思います。そこに、書類の束があるでしょう? あれを仕分けて欲しいのです」

「あ、はい」


 私の心配に、アムルドさんはそのように言ってきた。

 アムルドさんの視線の積にあるのは、書類の山がある。それを整理するのが、私の仕事であるらしい。


「あ、それとロコのことなんですけど……」

「ああ、ここに柵でも立てましょうか? 無駄に広いので、スペースは余っていますからね」

「あ、ありがとうございます」


 ロコのことを聞いてみると、アムルドさんはそう言ってくれた。

 これで、ロコとも一緒にいられそうだ。

 こうして、私はアムルドさんの仕事を手伝うことになったのである。




◇◇◇




 私は、アムルドさんの仕事を手伝っていた。

 アムルドさんの元にある書類は、大量だった。その書類を、私は仕分けているのだ。


「それにしても、すごい量ですね……」

「ええ、この辺りの領地の管理に関することが色々と送られてくるのです」


 アムルドさんは、この辺りの領地の管理に関する仕事をしているらしい。

 それに関係する書類は、膨大にあるのだ。公爵家の領地ともなれば、かなり広いはずだ。そのため、これだけ書類があっても仕方ないのだろう。


「次から次へと書類が来るせいで、書類が山のようになってしまって……だから、ミナコさんに整理を頼んでいるという訳です」

「そうなんですね……」


 しかも、書類は毎日増えているらしい。

 それは、中々大変なことである。


「領主の仕事は、大変なんですね……」

「ええ、しかし、それが僕達の務めです」

「務めですか……」


 私の言葉に対して、アムルドさんはそう呟いた。

 やはり、アムルドさんは領主としての自覚を持っているのだろう。

 だから、どれだけ書類が迫って来ても、頑張っているのだ。


「それにしても、ロコは大人しくしていますね?」

「あ、ええ、多分、私達が忙しいことを理解してくれているのだと思います」


 そこで、アムルドさんはロコのことを指摘した。

 ロコは、私が作った柵に囲まれた空間で大人しくしてくれている。

 恐らく、私達が忙しいことを理解しているのだろう。だから、柵の中でうとうととしているのだ。


「でも、アムルドさんのおかげで、ロコは寂しくないと思いますよ?」

「寂しくない?」

「ええ、あのように安心しているのは、私達が傍にいるからだと思います。誰もいなかったら、もう少し不安そうにしていると思いますから……」


 柵の中で、ロコは安心しきっている。

 それはきっと、私達が傍にいるからだ。

 もし、別の部屋で待ってもらうことになったら、ロコは不安を覚えていただろう。

 だが、アムルドさんのおかげで寂しい思いをさせずに済んだのだ。


「まあ、寂しくないのは僕も同じですから、気にしないでください」

「え?」

「いえ、僕も普段は一人で仕事をしていますから、こうして誰かがいてくれると安心なのです」


 そこで、アムルドさんはそのように言ってきた。

 どうやら、アムルドさんも普段は一人のため、寂しかったようだ。

 それなら、私達が来てよかったということなのだろう。

 こうして、私はアムルドさんの仕事を手伝うのだった。

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