第19話 突然の来訪
私とロコは、今日も屋敷で過ごしていた。
昨日から、私はアムルドさんの仕事を手伝うことになっている。
という訳で、私はアムルドさんの部屋に向かっている。だが、道中気になるものを見つけてしまった。
「そうか、それは中々困ったことかもしれないな……」
「はい……」
それは、廊下で何かを話しているアムルドさんとホーデインさんだ。
二人は、神妙な顔をしながら話をしている。何か、良くないことでもあったのだろうか。
「あの、どうかしましたか?」
「クゥン?」
「あ、ミナコさん、ロコ」
私が声をかけると、アムルドさんとホーデインさんは少し驚いたような表情を見せた。
どうやら、会話に集中していて、私が来ていることに気づいていなかったようだ。
「お二人とも、かなり悩んでいたみたいですね? 何かあったんですか?」
「あ、いえ、実は少し問題………いや、問題という訳でもないのですが、気になることがあったのです」
「気になることですか?」
私の質問に、アムルドさんはそのように答えてくれた。
問題という訳ではないが、気になることがあるようだ。
なんだか、よくわからない表現である。一体、何があったのだろうか。
「ええ、僕には妹がいるのですが、その妹が急遽こちらに来ることになったのです」
「妹さんが? それが気になることなんですか?」
「そうなのです。彼女を迎え入れるには、色々と準備をしなければいけません。そのため、使用人達はかなり忙しくなってしまうと思います」
「なるほど、そういうことですか……」
アムルドさんの言葉に、私は気づいた。
アムルドさんの妹は、当然公爵家の人間である。そんな人間を迎え入れるのだから、半端な準備ではならないだろう。
そのため、使用人達は色々と準備で忙しくなる。二人は、そのことを心配していたのだ。
「確かに、それは忙しくなりますよね……」
「ええ、だから、大変なのです……」
確かに、これは大変なことである。
使用人達にとっては、予定になかったはずの仕事だ。かなり、忙しくなるだろう。
「それで、ミナコさん、今日は仕事の手伝いはいりません。仕事よりも、まずは妹を迎えることに集中するべきですので……」
「あ、はい」
どうやら、今日は仕事の手伝いはいいらしい。
というよりも、そもそも仕事をしている場合ではないので、手伝いも必要ないということだろう。
「それと、後であなたとロコのことを妹に紹介したいと思っています。その心構えだけはしておいてもらえますか?」
「あ、はい、わかりました」
そして、私やロコも妹さんに紹介されるらしい。
少々緊張するが、きっと大丈夫だろう。
こうして、私とロコは妹さんを待つことになるのだった。
◇◇◇
私とロコは、部屋で待機していた。
もうすぐ、アムルドさんの妹さんが来るはずなのだ。
「どんな子なんだろうね?」
「クゥン?」
私はロコを撫でながら、そのようなことを呟いていた。
アムルドさんの妹が、どのような人なのかはかなり気になっている。
貴族のお嬢様と聞くと、なんとなく高飛車な人を想像してしまう。だが、あのアムルドさんの妹がそのような人だとは思えない。
もしかしたら、アムルドさんと似たような人なのだろうか。そうだとしたら、親しみやすそうなのでありがたい。
「それに、ロコに慣れてくれるかな?」
「クゥン……」
どのような人が来ても、ロコに慣れてくれるかは心配だった。
この世界の人間は、犬のことを知らない。そのため、拒絶される可能性は大いにあるだろう。
そうなると、中々悲しいものである。だが、元の世界でも犬が嫌いという人はいるので、それは仕方ないことなのだろう。
「まあ、なるようにしかならないよね……」
「クゥン……」
色々と考えても、結局は会うまではわからない。
もしかしたら、ロコのことを大好きになってくれる可能性もある。希望を捨てずに、期待しておこう。
「あれ?」
「クゥン?」
私がそんなことを考えていると、外の方が少し騒がしくなってきた。
恐らく、アムルドさんの妹さんが来たのだろう。
「もうすぐ、私達も紹介してもらうんだね?」
「クゥン……」
「しっかり、構えておかないとね……」
「ワン」
妹さんが入ってくれば、いずれ私も呼ばれるはずだ。
そのため、しっかりと心構えをしておかなければならない。
「ミナコ様、失礼します」
「あ、はい……」
そんなことを考えていると、部屋の戸を叩く音と声が聞こえてきた。
その声は、ネセーラさんの声だ。私を迎えに来てくれたのだろう。
「あ、ネセーラさん」
「ミナコ様、準備ができたので、お迎えに来ました」
「はい、わかりました」
戸を開けると、予想した通りネセーラさんがいた。
そして、予想した通り、私を迎えに来てくれたようだ。
こうして、私はアムルドさんの妹と対面することになるのだった。
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