第16話 散歩の終わり

 私とロコは、アムルドさんとブルーガさんとともに散歩をしていた。

 屋敷の庭は広く、ロコの散歩には最適な場所だ。


「それにしても、ロコは楽しそうですね?」

「え? ああ、確かにそうですね」


 そんな中、アムルドさんがそのようなことを言ってきた。

 ロコの楽しそうな様子に、少し驚いているようだ。


「犬は、散歩が好きなんですよね?」

「あ、はい、そうなんです。大抵の犬は、散歩を楽しいと思うはずです」

「そうなのですね……」


 基本的に、犬は散歩が好きである。

 その知識は、アムルドさんにもあるようだ。

 そのことで、私は少し気になった。アムルドさんは、犬の知識が普通の人よりもある。それは、この世界では珍しいことかもしれない。

 犬が珍しい世界で知識を持つ必要は、普通はないはずである。それなのに、アムルドさんはどうして犬について詳しいのだろうか。


「アムルドさんは、犬について詳しいですよね?」

「え? ああ、そうですね」

「犬が珍しいのに、その知識を持っているのは珍しいんじゃないですか?」

「確かにそうですね。僕は、珍しい人間だと思いますよ」


 私の質問に、アムルドさんはそう答えてくれた。

 やはり、アムルドさんのような人は珍しいようだ。


「何か理由があるんですか? 犬について知識をつけた理由というか、なんというか……」

「基本的に、僕は動物が好きなんです。犬だけではなく、動物全般の知識については身に着けているのです」

「そうなんですね」


 どうやら、アムルドさんは動物が好きらしい。

 だから、犬についての知識を色々と持っているのだ。


「そうでなくても、アムルド様は博識だぞ? 俺が知らないことでも、アムルド様は知っているからな」

「なるほど、基本的に博識という訳ですか?」


 そこで、ブルーガさんが会話に入ってきた。

 アムルドさんは、普通に博識らしい。動物以外のことでも、詳しいということだろう。

 よく考えてみれば、貴族なのだから、色々と知識があるのは当然なのかもしれない。英才教育のようなものも受けているだろうし、色々な知識を持っているはずだろう。


「いや、別に僕はそこまで博識という訳ではありませんよ」


 私がそんなことを考えていると、アムルドさんがそのようなことを言ってきた。

 恐らく、謙遜しているのだろう。流石に、自分から知識があるとは言いにくいはずである。

 そんな話をしながら、私達は散歩を続けるのだった。




◇◇◇




 私達は、散歩を終えて家の前まで戻って来ていた。


「ふう、中々疲れましたね……」


 家の前まで戻って来て、アムルドさんはそのように呟いた。

 確かに、私も結構疲れている。今日の散歩は、かなりの距離を歩いたのだ。

 今日の散歩は、庭を回るようなルートを辿った。しかし、そのルートは意外にも距離があったのである。

 そのため、予想よりも長い距離を歩くことになってしまった。だから、かなり疲れているのだろう。


「そうですね、結構長い間散歩していましたから、疲れるのも当然だと思います」

「ええ、やはり日頃から運動しておく必要はありますね……」


 私に対して、アムルドさんは笑顔でそう言ってきた。

 だが、ここまでの距離を歩くなど中々あることではない。そのため、別に運動不足という訳ではないだろう。


「アムルド様、このくらいで疲れる程、体が鈍っているのですか?」

「え? ああ、まあ、そういうことになるかな?」

「そうですか、それは少し考えないといけませんね」


 そこで、ブルーガさんがアムルドさんにそのようなことを言った。

 どうやら、ブルーガさんにとって、これくらいで疲れることは許容できないようだ。

 しかし、屈強な護衛であるブルーガさんと貴族のアムルドさんでは、体力が違うのも当然である。そのため、そこまで気にする必要があるのかと思わないことはない。


「クゥン……」

「あ、ロコも疲れているの?」

「クゥン」


 そんなことを考えていると、足元のロコが声をあげてきた。

 どうやら、ロコも疲れているようだ。

 とりあえず、私はロコのことを抱き上げる。疲れているロコに、あまり無理はさせられない。


「流石に、ロコも疲れたみたいですね?」

「ええ、流石にこの距離は疲れたんだと思います」


 基本的に、ロコの身体能力は高いため、体力もそれなりにある。

 だが、今回のような長距離は流石に疲れたようだ。

 そもそも、私達よりもロコの方が一度に進める距離が短い。そのため、私達より長い距離を歩いており、疲れるのも当然である。


「さて、疲れていますし、早く中に入りましょうか? いつまでもここで話す必要もありませんからね」

「あ、はい。そうですね」


 アムルドさんの言葉に、私はゆっくりと頷いた。

 私達は家の中に入っていく。こうして、私達の散歩は終わるのだった。

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