第14話 朝起きて
私は、ゆっくりと目を覚ます。
昨日、私は愛犬のロコとともに新たな世界に転生してきた。
もしかしたら、あれが夢だったのかもしれない。そう思ったが、目に入ってきたのは、昨日見た天井だった。やはり、あれは夢ではなかったようだ。
「ロコ?」
「クゥン?」
私が横を向くと、ロコが反応した。
どうやら、ロコは既に目覚めていたようだ。
「クゥン……」
「あっ……」
私が起きたからか、ロコは私の顔をゆっくりと舐めてきた。
ロコの舌は、少しくすぐったい。だが、これはロコの愛情表現だ。嫌に思うことはない。
「おはよう、ロコ」
「ワン!」
私は、ロコの体をゆっくりと撫でる。
いつも通り、ふわふわな毛質だ。この感触は、本当に心地いい。
とりあえず、私は体を起こす。そろそろ、朝の準備を始めなければならない。
「ワン!」
「ロコ、どうかしたの?」
「ワン! ワン!」
私が起き上がると、ロコが吠えてきた。
何か私に伝えたいことがあるらしい。
私は、ロコが向いている方向を見る。すると、そこには昨日貰った紐があった。
「ああ、散歩に行きたいのね?」
「ワン!」
どうやら、ロコは散歩に行きたいようだ。
あの紐は、リードの代わりとなるものとして貰ったものである。そのため、散歩することができるのだ。
ロコはそれを理解して、私に訴えかけたのである。もちろん、私も散歩には行かなければならないとは思っていた。そのため、その要請を断るつもりはない。
「でも、色々と問題があるのよね……」
「クゥン?」
だが、少しだけ問題がある。それは、私がこちらの世界の地理をあまり理解していないことだ。
地理をわかっていなければ、外に出て戻って来られない可能性はある。そのため、誰かに案内してもらわなければならないのだ。
「ネセーラさんに頼んでみようかな……?」
とりあえず、私についているメイドのネセーラさんに相談しようと思った。
きっと、何か名案を与えてくれるはずだ。
こうして、私は朝の準備を始めるのだった。
◇◇◇
私は朝の準備を手伝いに来てくれたネセーラさんに、散歩のことについて聞いてみた。
「それは、中々難しい問題ですね……」
ネセーラさんから返ってきたのは、そのような答えだった。
どうやら、犬の散歩は難しい問題であるようだ。
「難しいんですか?」
「はい。犬は珍しい生き物です。そのため、誰に狙われているかわかりません。だから、外に出て散歩をするというのは少々危険だと思います」
「あっ……」
疑問に思っていた私だったが、ネセーラさんの言葉で理解した。
この世界では、犬は珍しい生き物である。そのため、誰かに狙われる可能性があるのだ。
それでは、散歩も危険かもしれない。確かに、厳しい問題である。
「ただ、ロコ様には散歩が必要なのですよね?」
「はい、散歩ができないとストレスも溜まりますし、運動もできないので、色々とまずいんです」
「そうですよね……」
しかし、散歩をしない訳にもいかない。
犬にとって、散歩はとても大切なことだ。それをやらないと、ロコは心身ともに悪くなってしまうだろう。
「……家の敷地内で護衛をつけたなら、散歩してもいいかもしれません」
「家の敷地内ですか?」
「ええ、庭の広さはかなりありますから、そちらで散歩すればいいのではないでしょうか?」
「なるほど……」
そんな私に、ネセーラさんはそのような案を出してくれた。
確かに、この屋敷の庭はとても広い。ロコが散歩をするのに、充分な広さだろう。
「それはいい案ですね。ありがとうございます。それなら、庭で散歩したいと思います」
「あ、ただ、アムルド様に相談はしておいた方がいいと思います。庭で散歩していいかどうか、最終的に判断できるのはアムルド様だけです」
「あ、はい、わかりました」
どうやら、庭で散歩するにしても、アムルドさんに相談する必要があるらしい。
ここの家主は、アムルドさんなのでそれも当然のことだろう。
こうして、私は庭で散歩をするために、アムルドさんの許可を得ることになったのだ。
◇◇◇
私は庭で散歩する許可を得るため、アムルドさんの元に来ていた。
「なるほど、庭での散歩ですか……」
私が事情を説明すると、アムルドさんは少し渋い顔をした。
もしかして、庭での散歩は駄目なのだろうか。
「あ、いや、散歩をすること自体は問題ありません。ただ、庭といっても完全に安全という訳ではありませんから、少々心配なのです」
「あ、そうなんですね……」
そう思った私だったが、散歩自体は問題ないようだ。
だが、屋敷の庭でも完全に安全でないらしい。それ程までに、犬は狙われているということなのだろうか。
「……散歩には護衛をつけた方がいいかもしれませんね」
「護衛ですか?」
「ええ、護衛です」
どうやら、犬の散歩には護衛が必要なようだ。
気軽に散歩ができないというのは、中々厳しいものである。
こうして、私とロコの散歩には護衛がつけられることになったのだ。
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