第13話 一日の終わり
私とロコが部屋で過ごしていると、そこにメイドのネセーラさんがやって来た。
なんでも、アムルドさんの指示で、私についてくれるらしいのだ。
そんなネセーラさんに、私はロコを触れ合わせることにした。これから私についてもらう以上、慣れてもらわないと困るからだ。
「どうですか?」
「はい、なんというか心地いい感触です」
「そうですよね」
ネセーラさんは、すっかりロコに慣れていた。
それは、ロコも同じである。
これなら、これから接していくことも問題ないだろう。
「さて、これなら大丈夫そうですね?」
「はい、機会を与えてもらい、ありがとうございました」
私の言葉で、ネセーラさんはゆっくりとロコから手を離した。
その手の動きは、どこか名残惜しそうな気もする。もしかしたら、もう少しロコを撫でていたかったのかもしれない。
「さて、ミナコ様、話を戻してもよろしいでしょうか?」
「え? あ、はい」
そこで、ネセーラさんはそのようなことを言ってきた。
どうやら、私がロコと触れ合ってもらおうと思ったため、話をそらした形になっていたようだ。
「実は、お風呂の準備ができたので、それをお伝えしに来たのです」
「お風呂ですか?」
「はい」
ネセーラさんは、お風呂の準備ができたことを伝えに来てくれたらしい。
そういえば、事前に準備ができたら伝えてもらえるようになっていたのだ。
こちらの世界にも、お風呂はあるらしい。なんでも、魔法や魔力でお湯をためるらしく、私がいた世界とは少しだけ違うものであるようだ。
だが、お湯に浸かるということは変わらない。そのため、そこまで違いがある訳でもないだろう。
「わかりました。それなら、入らせてもらいます」
「はい。それでは、私はこれで失礼します」
「はい、ありがとうございました」
それだけ言って、ネセーラさんは帰っていった。
とりあえず、私はお風呂に入らなければならない。
「ロコ、私はお風呂に入るから、少しだけ待っていてくれる?」
「ワン!」
私は、ゆっくりとロコを柵の中に下ろす。
私が別行動をする時は、ロコは柵の中にいてもらう。区切られている中なら、ロコも大人しくしてくれる。ロコの安全も考えて、その方がいいのだ。
こうして私は、お風呂に向かうのだった。
◇◇◇
私はお風呂を終えて、部屋に戻って来ていた。
「ワン!」
「ロコ、ただいま」
私が部屋に入ると、ロコが出迎えてくれた。
帰ってくるとロコが迎えてくれるのは、元の世界と変わらないのだ。
「よしよし……」
「クゥン……」
私はゆっくりとロコを撫でていく。
それに、ロコは気持ち良さそうにしてくれている。
やはり、ロコと触れ合っていると心が安らぐ。こちらの世界でも、ロコと一緒にいられることは本当に幸福である。
「ロコ……」
「クゥン……」
こちらの世界に来てから、アムルドさんにオルゴさんにも私はロコのために色々とできてすごいと言われた。
だが、ロコのために私が色々とするのは当然なのである。
なぜなら、ロコがいなければ、私はすぐに駄目になっていただろう。それを考えれば、ロコに私がしていることなど、本当に些細なことなのだ。
「さて、そろそろ寝ようかな……」
「クゥン?」
「なんだか、お風呂に入ったら眠くなったんだ。だから、もう寝ようかなって……」
私は、そろそろ寝ることにした。
お風呂に入って温まったからか、眠たくなってきたのだ。
という訳で、私はベッドの上に上がろうとする。
「ワン!」
「うん? ロコ? どうかしたの?」
そんな私に、ロコが吠えてきた。
ロコが吠えるということは、何かがあるということだ。一体どうしたのだろうか。
「もしかして、一緒に寝たいの?」
「ワン!」
私の言葉に、ロコは大きく返事をした。
どうやら、ロコは私と一緒に寝たいようだ。
元の世界でも、ロコと一緒に寝たことはある。そのため、その要求はそこまでおかしいことではない。
考えてみれば、ロコと一緒に寝るのもいいかもしれない。一人で寝るよりも、安心感があるはずだ。
「それじゃあ、ロコ、一緒に寝ようか」
「ワン」
私はロコを抱きかかえて、電気を消した後、ベッドの上に上がった。
とりあえず、布団を捲りその中に入る。すると、ロコも私の隣で体から力を抜いた。
「さて、布団をかけるからね」
「クゥン……」
私は、ロコも入るように布団をかける。
これで、寝る準備はできた。私の隣では、ロコが既にうとうとしている。
どうやら、ロコももう眠たいようだ。やはり、ロコも疲れているのだろう。
「ロコも、疲れているんだね……今日一日、本当にありがとう。ロコがいてくれて、私は本当に助かっているよ」
「クゥン……」
「ロコ、お休み、ゆっくり休んでね」
「クゥ……」
ロコにそう声をかけてから、私はゆっくりと目を瞑る。
今日は、本当に色々とあった。疲れもあるので、きっとすぐに眠れるはずだろう。
こうして、私の一日は終わるのだった。
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