第12話 補助のために

 私とロコは、夕食を終えて自室に戻って来ていた。

 こちらの世界での食事は、洋食のようなものだった。オルゴさん達が作った料理は、とてもおいしく、私はすごく満足している。

 ロコの食事も、きちんと食べられる物を作ってくれていた。ロコも、かなり満足しているだろう。


「ロコ、今からあそこがロコの過ごす場所だからね?」

「ワン」


 アムルドさんが色々と取り計らってくれたため、部屋の中にはロコ用のスペースができていた。

 柵のようなもので囲まれているが、かなり広いスペースをとってある。

 元の世界よりもかなり広いので、ロコも最初は戸惑うかもしれない。だが、これしかないので慣れていくことを期待するしかないだろう。


「でも、今は一緒にいるし、しばらくは入らないでいいかな?」

「クゥン?」


 しかし、今はロコをそこに入れる必要はあまりなかった。

 そのため、私はロコを抱えてベッドに座る。


「ロコ……」

「クゥン……」


 私はロコの体をゆっくりと撫でていく。

 私の膝の上で、ロコは気持ちよさそうにしている。

 今まで、色々なことがあったので、こちらの世界でロコに構ってあげられなかった。そのため、今からいっぱい構ってあげるのだ。


「今日は、色々とあったね……」

「クゥン?」

「こっちの世界に来たのが昼だったけど、仕事を終えて散歩に行ってからずっと続いている気がして、なんだか変な感じなんだ」


 私は、ロコにそのように語りかけた。

 今日は、こちらの世界に転生してきたが、その前からずっと続いているような気がする。

 不思議と体はそこまで疲れていない。だが、ずっと続いている気がして変な感じはしている。


「ワン」

「あ、ロコ……」


 そこで、ロコは自らの体を反転した。

 お腹を見せるようする形だ。

 私は、ロコのお腹や胸を撫でていく。


「クゥン……」


 ロコが、このようにリラックスしているのはこちらの世界に来てから初めてだ。

 よく考えてみれば、ロコもずっと緊張していたのだろう。

 そんなロコが、このようにリラックスできて本当によかった。慣れない環境だが、これからもロコと頑張っていけるといいだろう。

 それからも、私はロコと一緒に遊ぶのだった。




◇◇◇




 私は、ロコと一緒に遊んでいた。

 そんな私の耳に、戸を叩く音が聞こえてきた。

 私はロコを床に下ろしてから、戸を開けに行く。


「失礼します」

「は、はい……」


 戸を開けると、そこには一人の女性が立っていた。

 その人は、メイド服を着ている。つまり、メイドであるということだろう。


「えっと、あなたは?」

「私は、ネセーラといいます。これから、ミナコ様のお世話を担当させてもらうことになっています」

「え? お世話ですか?」

「はい」


 その人は、ネセーラさんというらしい。

 ネセーラさんは、私のお世話を担当することになっているようだ。

 だが、私にそのような人が必要なのだろうか。ただ保護されているだけの私に、メイドをつけるというのは少し不自然な気がする。


「私にメイドさんがつくということですか?」

「はい、アムルド様が、記憶喪失でありこちらの世界のことをよくわかっていないミナコ様にはメイドをつけた方がいいと判断されました」

「あ、そういうことなんですね……」


 色々と思っていた私だったが、メイドさんの言葉で理解することができた。

 私は、こちらの世界の常識を知らない。その補助のためにメイドさんがついていた方がいいと、アムルドさんは判断したのだ。

 その判断は、とてもありがたいことである。わからないことがあれば聞ける人がいる方が、絶対にいいだろう。


「それなら、これからよろしくお願いします」

「はい、よろしくお願いします」


 私が一礼して挨拶すると、ネセーラさんも一礼してきた。

 ネセーラさんとは、これから長い付き合いになるはずである。そうなると、ロコのことも説明しておいた方がいいかもしれない。


「ロコ」

「ワン」


 私の呼びかけに、ロコがこちらにやって来た。

 そんなロコを抱き上げて、私はネセーラさんに説明を始める。


「この子が、愛犬のロコです」

「ロコ様ですか」

「え? あ、はい」


 ネセーラさんは、ロコに対しても様をつけていた。

 犬にも様付けをするのは、中々変な感じだ。


「私につくということは、ロコとも接することが多いと思います。ネセーラさんは、犬は大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫だと思います」


 私の質問に、ネセーラさんはそう答えてきた。

 しかし、その表情は少しだけ不安そうだ。やはり、未知の生物と接することは緊張するのだろう。


「えっと、ロコの前に手を出してもらえますか?」

「え? あ、はい。こうでしょうか?」


 そこで私は、ロコとネセーラさんを触れ合わせることにした。

 少々強引だが、これが一番いい方法である。

 私の指示に従って、ネセーラさんはロコの前に手を出した。ロコは、その手の匂いを嗅いでいく。


「ワン」

「さあ、次はロコの体を触ってみてください」

「は、はい……」


 私がそう言うと、ネセーラさんはロコの体をゆっくりと撫でた。

 すると、ネセーラさんの表情が少しだけ変わる。触れ合えたことで、緊張が少しだけ解けたのだろう。

 こうして、ロコとネセーラさんの触れ合いができるのだった。

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