第9話
最初に動いたのは賊王だった。
賊王は背中に抱えていた巨大な両刃の斧、ラブリュスを構え、こちらに襲い掛かってきた。
そしてそのすぐ後に剣を構えた盗賊たちは識王と呼ばれた細身の男の指揮により、こちらの逃げ道をふさぐように回り込み始めた。
賊王はそんなことを気にもせず、ただ未だに動き始めていないように見える少年に向かってラブリュスを振り下ろした。
しかし次の瞬間、賊王は驚愕する。
まさか自分の一撃が受け止められるとは思ってはいなかったからだ。
賊王の一撃を受け止めたのは、突如として地面から現れた6本の脚のうち前の2本の脚が非常に広く発達した〈
おもしろい、と再びラブリュスを持ち上げ切りつけようとしたが、突如背後から聞こえてきた悲鳴に驚き、思わず振り向く。
するとそこでは、地面から湧き出したたくさんの蟻が盗賊達を食い散らかしていた。
何もやっていないように見えた少年がまさかこのようなことをしていたと知り、賊王は少年の脅威度を数段上げるのと同時に、強敵の出現に興奮で口の端を引き上げながら〈
そこからは半分泥沼化していた。
盗賊達が少年を攻撃しようとすれば、少年のまわりにいる蟻たちに妨害され、その間に地面の下からどれだけ警戒していても奇襲され、陣形を崩される。
撤退して陣形を整えようとすれば奇襲していた蟻たちは地面の中に潜り、少年の周囲にいて負傷した蟻も地面中に潜り新たに出現した蟻と交代する。
かと言って陣形が崩れた状態で無理に突撃しても無駄に盗賊達が被害を出すだけで蟻たちが特に減ったりしているようには見えない。
まあ、それは少年が蟻たちの死体を少しだけ残して他は地面の中に引き込むように指示しているからあまり減ったように見えないだけだが。
少年と盗賊達の戦いは長いこと続き、戦闘を開始してからすでに6時間が経過していた。
お互いの兵力は損耗し、すでに残っている蟻たちは戦闘が始まる前の4割しかおらず、無事な蟻たちの数も2割ほどに、盗賊達も馬はほとんどが全滅、歩兵たちもにせんほどしか残っていなかった。
しかし、残っているのはお互いに長いこと戦い抜いた精鋭たちだ。
戦闘がこの後、さらに激化するのはだれの目から見ても明らかだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます