第8話

 『はッ。仮に危険だとしてもガキ相手に引くわけがない。俺様はヘクトール盗賊団、この世界最高の盗賊団、その団長ヘクトール=レンダース様だぞ!』



 そう言って巨漢の男、賊王ヘクトール=レンダースは識王と呼ばれていた細身の男を盗賊たちの中に下げると、俺のほうへ少し足を進め話しかけてきた。


 「おい、てめぇ何もんだ?ラップスの奴があそこまで警戒するのなら、ただもんじゃぁ、ねぇよなぁ。」


 「ラップスがだれかは知らないけど私はただのこの村に住んでいた10もいかないガキだよ。」



 情報を引き出す時のコツは相手をちょうどいいぐらいに煽ること。


 今は手始めに、話は聞こえていたということを主張すると賊王は盛大に舌打ちし、盗賊達の方をギラリと睨んだ。

 盗賊達の何人かが腰を抜かしたが恐らく、識王と呼ばれていた細身の男をにらんだのだろう。



 「フン、とぼけるのもいい加減にしろよガキが。まあ、いい。おめえは何でここでこんなに暴れてんだ?その蟲どもを使えば村から逃げることも出来たろうに。」


 「確かに、逃げることは可能でしたよ。何せあなた方が村に襲撃をかけてきたとき私は村の外にいましたからねぇ。」


 「ならなおさらなんでこの村にまだいるんだ?まさか復讐か?よくも村のみんなを!!みたいに。だったらわりぃなあ、村の住人でまだ生きてるのお前ぐらいだからなぁ。キャハハハハハハ!!」


 賊王が笑い始めるとつられて盗賊達も笑い始めて辺りには下品な笑い声が満ちていた。

 しかし、それは長くは続かなかった。


 「おい、なんでなんも言わねぇ。」


 なんも反応がない俺に対して怪訝に思ったのか黙った賊王は静かにそう吠える。



 「今、返答しても意味がないと思ったからですが。」


 「あんだと?じゃあいつなら良いっていうんだよ。」


 「まあ、今なら静かになりましたしいいでしょう。単に恩を返そうと思っただけですよ。」


 「恩だと?」


 「ええ、私をこの年まで育ててくれた恩ですね。」


 そう俺が賊王に言うと、賊王は一瞬止まりそして先ほどよりもとても大きな声で笑い声を上げ始めた。


 「ふはははははははは、はははははははは、はーはっはっはっは。ああ、やべぇなお前何が原因でそんなに壊れてんだか?いや、このこの年なら生まれつきか?ふはははははははは」


 「壊れてる?」


 「おいおい、自覚無しともなれば流石に笑えねぇぞ。まあ、理由も分かったことだしそろそろ話しも終わりにして戦おうじゃんかよお。」


 「何を言ってるかはいまいち私には掴めませんがいいでしょう。そちらの準備はよろしいですね。」


 俺がそう言うと賊王の後ろの盗賊達は武器を構えて殺気立ち、賊王は笑いながら言った。


 「誰に言ってんだ。俺は十大列強の十王第4位である賊王ヘクトール=レンダース様だぞ!!」

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