第5話

 とある年の夏ごろのある日、とある村の運命は、1人の少年の人生は、大きく狂っていった。




 それに気が付いたのはつい昨晩、5つほど隣の街のラパンで数百人から数千人規模の盗賊団が抗争をしていて心配だと、村に帰ってきたばかりの村長の息子だった。



 村の外を馬で走りながら見回りをしていた彼は最初、地平線の奥からもうもうとあがっていた土煙を見て、魔物の襲撃かと思い武器を構え待ち構えていたが土煙をあげている者の正体を確認すると、愕然とし急いで村に駆け込み自警団に招集をかけた。



 冒険者の中でも高位に位置していた彼が愕然とした土煙をあげていた者の正体。


 そう、それは千の騎馬と五千の歩兵からなる超大規模な盗賊団であった。



 自警団が装備を整え集まりきったのと、盗賊たちが村になだれ込んできたのはほとんど同時だった。



 盗賊たちは圧倒的だった。



 下手な軍隊よりをも上回るその練度と兵力で村の自警団はあっという間に押しつぶされ、村は蹂躙された。



 村がほとんど制圧され、盗賊たちが戦利品の確認をしようとしたちょうどその頃、村の一角で何人もの盗賊の悲鳴があがった。


 仲間の盗賊たちが駆け付けたそこには、人のサイズほどもある蟻が何匹もおり、いくつもの盗賊だったものが散乱していた。


 そしてその中央にはひときわ大きな蟻が存在し、その蟻に守られるように1人の少年が盗賊だったものに冷めた目を向けていた。



 村の中に突如現れた異常な空間に盗賊たちは戸惑っていると、突然少年は何事かをつぶやいた。


 すると、静止していたはずの蟻たちはいきなり動き出し、盗賊たちを襲い始めた。



 急に動き出した大きな蟻たちに対して盗賊たちも遅れながらも武器を構え戦おうとするが、もともと盗賊たちの相手は人だ。間違っても魔物ではない。


 故に、魔物に対しての戦い方を知らない盗賊たちは次々に数を減らし、大きな蟻たちは瞬く間に地獄絵図を作り上げた。



 やがて悲鳴も少なくなってきたころ、巨大な馬に乗った1人の巨漢の男が多数の盗賊を率いて姿を現した。



 赤の髪に緑の右目と青の左目、巨大な馬に乗ったそんな特徴を持った巨漢の男は引き連れた盗賊たちを左手をあげて少し下がらせると、同時に盗賊たちの中から進み出てきたモノクルをかけたひょろっとした細身で白髪の男と話し始めた。



 やがて、巨漢の男と細身の男は相談が終わったのか、細身の男は再び盗賊たちの間に入っていき、巨漢の男は2人の男が相談していた様子を無感動な様子で見つめていた少年に話しかけた。

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