第四話

あれから四日が過ぎ、お見合い当日、(そういえば、係長もお見合いだって言ってたな)叔母と一緒に香月亭という料亭に来た。時刻は10時45分、女将が来て離れの部屋に案内してもらい部屋に入ると、相手のほうはまだ来ていなかった。

しばらくすると、女将の声がし

女将「お連れの方が参りました。」

叔母「どうぞ。」

? 「失礼します、遅くなり申し訳ありません。」

叔母「そんなことないです。私たちも先ほど来たばかりですもの。」

来生母「お久しぶりね、千恵ちゃん、汐里ちゃん」

叔母「佳代ちゃん、元気そうでよかったわ。」

汐里「佳代子さん!?えっ、係長!?」

来生「まさか、工藤さんだと思わなかった。」

汐里「叔母さま、どういうことですか。」

叔母「どういうことも、行けばわかると言ったでしょ。」

汐里「そうですね。」

来生「…」

叔母「まあとりあえず、頂きましょう。」

来生母「そうですわね。」

たくさんの料理がテーブルいっぱいに並び、お昼からこんなにたくさん食べられるかと思ったが、何とか食べた。そのあと叔母様と佳代さんは「あとはお二人でと残し、二人そろって、外に出た。二人とも何も話さず、庭を歩き、来生が話した。

来生「実は、君が入社してた時から好きだったんだ、でも付き合っている人がいると噂になってたんだ。懲りずに告白していた奴らもいたみたいだけど」

汐里「…」

来生「とりあえず、お試しでいいから、付き合ってくれないかな」

汐里「わかりました。」

来生「よろしくね。汐里」

汐里「こちらこそよろしくお願いします。来生さん」

来生「違う、洸祐で」

汐里「こ…洸祐さん」

洸祐「さんもいらないけどまあいいか、じゃあこれからデートしよう。」

汐里「でも、着物」

洸祐「大丈夫、叔母さんたちに言って、出かけよう。」

と、手をつないで、料亭を出る。車に乗り向かったのは、ブティック。

松坂「いらっしゃいませ。来生様、ご無沙汰ですね。」

洸祐「この人は、私の大切な人、工藤汐里さんです。似合う服を見繕ってほしいです。」

松坂「かしこまりました。来生様、工藤様、お掛けになってお待ちください。」

洸祐「よろしく。」

汐里「こんな高そうな服いらないんだけど…」

洸祐「デート用に着てくれれば良いから。」

汐里「ありがとうございます。」

洸祐「逆に我儘聞いてくれてありがとう。」

ふたりで話していると

松坂「お待たせしました。こちらの胸元の刺繍が入ったトップスに、こちらの槐色のスカートに、パンプスはこちらの色でいかかでしょう。」

洸祐「いいと思う、着てみて。」

汐里「はい。」

洸祐「松坂さん、バックと同じ色のパンプスにしてもらえますか。」

松坂「かしこまりました。すぐにお持ちします。」

洸祐「汐里、どう?」

汐里「終わりました。」

カーテンを開けて出た。

松坂「お似合いでございますね。」

洸祐「とってもいいよ。松坂さん、この着物、包んでくれるかい。」

松坂「かしこまりました。お急ぎしますね。」

洸祐「汐里、着物の着付けもできるのかい。」

汐里「一通りはできます。」

洸祐「着物を送るから、着て見せてほしいな。」

汐里「わかりました。でもたくさんはいらないですからね。」

洸祐「はい。」

松坂「お待たせしました。お車までお持ちします。」

洸祐「ありがとうございます。」

汐里「ありがとうございます。」

それから、車で移動し、洸祐が住むマンションまで行き、そこからは徒歩で、洸祐行きつけの小料理屋に入った。カウンター席4つ、テーブル4人掛けが三つと奥に座敷があるのを教えてもらい、今日はカウンターで夕食をとることになった。

そこの女将さんはまさかの洸祐さんの従妹らしく、夫婦で経営しているそうだ。

織江「こんばんは、いらっしゃい。」

洸祐「どうも、こちら工藤汐里さん、大切な人だからよろしくな。」

汐里「こんばんは。初めまして、工藤汐里です。」

織江「きれいな子ね。お見合いの子?」

洸祐「うん。そして仕事では部下でもある。」

織江「そう。なんだかすごいわね。」

洸祐「今日のおすすめは。」

織江「今日はイカ大根、味が染みてるわよ。」

汐里「好き嫌いないのでおまかせでお願いします。」

洸祐「俺もおまかせで。」

織江「かしこまりました。お酒は?」

洸祐「汐里はどうする?」

汐里「ビールでもいい?」

洸祐「うん。瓶でもいいかな。」

汐里「はい。」

洸祐「瓶ビールとグラス2つで。」

汐里「なんか不思議な感じする。」

洸祐「そうだな、汐里はお酒強かったよね。」

汐里「まあそうですね。そういう洸祐さんだって強いじゃないですか。」

洸祐「俺の家系で弱いのは、父親だけだな。」

汐里「すごいですね。」

洸祐「汐里はあまり飲まなそうだけどな。」

汐里「周りがお酒好きなのに弱いから、酔えないのよ。」

洸祐「確かに、打ち上げの時も酔ったやつ介抱してたもんな。」

汐里「あれは大変でした。」

ふたりで笑っていると

織江「なんだか楽しそうね。お待たせ。お通しの菜の花の辛子和えとビール、グラス2つ。あとイカ大根と蓮根のきんぴらね。」

汐里「わぁ、美味しそう。」

洸祐「ありがとう。」

織江「洸祐、もしかして前に言ってた子」

洸祐「そうだよ。」

織江「前にね、洸祐ったら、気になる子がいるんだって、聡に相談してたことがあって、お見合いで出会うとは思わなかったけど。うまくいったならよかったじゃない。」

汐里「そうなんですか。」

洸祐「なんで、お前が知ってるんだよ。」

織江「聡に問いただしたら、白状した。恨まないでやって。」

聡「すみません。」

洸祐「完全に尻に敷かれてるな」

汐里「そうみたいですね。」

織江「汐里ちゃんていくつ」

汐里「28歳です。」

織江「同い年だ。織江って呼んでね。」

汐里「私は汐里で」

洸祐「おいおい勝手に盛り上がんなよ。」

織江「はいはい。」

汐里「この煮物も全部美味しかったです。ご馳走様でした。」

洸祐「ご馳走様。」

織江「汐里、今度は一人でおいで」

汐里「はい、洸祐さんとも来ますけどね。」

洸祐「じゃあ帰ろうか。」

それから洸祐さんの家に行き、荷物をもらって、タクシーで帰ってきた。


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