雨の日があるから晴れの日がたまらなく愛おしい
「雨の日があるから晴れに日がたまらなく愛おしいんだよなあ」となんとも歯痒いセンチメンタルな言葉を僕に行ってきたこの人はバイト先の先輩だ。先輩はどうやらバンドをやっているらしい。あんまり興味がないから聞いたことがないのだけれど、、、。
僕らはその時ちょうど二人並んで皿洗いをしていた。先輩が突然そんなことを言うもんだから僕は何か考える前に反射で「はあ。」とぶっきらぼうに返してしまった。先輩はそんな僕の失礼な反応にはお構いなしに話し始めた。「もしも人生の全てが成功しかなかったらどう思う?」「そりゃあ最高ですよ。人生勝ち組じゃないですか」と皿洗いのカチャカチャという音を立てながら返した。すると先輩は鼻で笑いながら皿を拭いている手を止め「君くらいの年齢の子は大抵そう言うんだ、いいかい?影があるから光は際立つし、クッパがいるからマリオを応援したくなるんだよ」意味不明な例え話を言ってやった感を出しながら言ってきた
普通に腹が立って僕は「はあ。」と返し、皿洗いを終えた。その次の日その先輩はバイトをやめた。
あれから約一年、僕はいろんなことに挑戦しては挫折し、気になるこをデートに誘っては断られ、好きな子に告白してふられた。そして初めてコーヒーを美味いと感じた。
今なら先輩の言っていたことがわかる気がする。先輩の作った音楽を聴いてもう一度先輩と話がしたい。そして「あー、わかります。マリオ、応援しちゃいますよね」と返したい。心の底からそう思いながら空を見上げると、そこには雨上がりのまっさらな空に歪な形の虹がかかっていた。そう、あの先輩の言葉のように。
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