第65話 神になるか人か

「ますた……じょーきょーが解らない、です」

 俺の(今は違うが)店内を映し出すPCを弄っていると、後ろからメルナに話しかけられる。


 腐っても中世ヨーロッパ風(と言うのも烏滸がましい)世界の住人達。エルフたちを含めて全員状況が呑み込めずに青ざめている。

 それは未知なるモノへの遭遇によるものか。俺がゴブリンとかやらに初めて出会った時の姿を彷彿とさせるな。


「私なら完璧とまではいかないまでも操作可能です、ので――と――が映るものを探してもらえますか?」

「しょうがないわね、と言うか何であんたは解るの?」

「まあ……昔の経験ですかね」


 



 四人が探している間に俺はコンサを弄っていく。基礎ステータスを上昇させ、見た目のステも上昇させ、いろいろ。

 はて、努力家の彼女に対してこんなインチキは良いのだろうか? 普通に彼女に対する冒涜侮辱なのでは? 


 知らね、好きにやっちまおう。

 後は野となれ山となれだ。


(うーむ、すこしAPPを上げただけで妙に色っぽくなるなこいつ。こいつだけエロゲの住人と言われても信じられるぞ)


 元々十代後半だけあって肌はつやつやのもちもちで、髪などは綺麗なコンサであったがこれは凄い。

 顔は化粧すら要らないレベルで整い、体の凹凸はよりはっきりし、奴と既に三桁に近い夜を重ねた俺ですら興奮を隠しきれないものだ。


 なにがオカシイのかと言うと周りの反応だな。多少の変化かもしれんがあんなに美人に磨きが掛かったのに無反応だ。いや、もともと裸の彼女に目を向ける者は多かったが(公爵……あんた……)その視線は増えず変わらずだ。


 これで弄るとその変化を変化とは認識できないのか?

 てことはコンサにも自覚は無さそうだな。この罪悪感は俺が墓場まで持っていけば良いか。


(ん? ふぁぁぁぁぁっ!! やっべーの見つけちまった)

 何故気付かなかったのか、隣のPCには後の魔王タイガが映っていやがった。


 ふむふむ、はー、ほー。流石魔王やなぁ……。

 すべてのステが表と裏がある。表のステはクソザコだが裏は異常だな。魔王に覚醒したら、と言うステだろうが高すぎる。コンサとはすべての基礎ステが丸二つ多いぞ。HPやMPにいたっては五桁違う。

(まあHPなどは基本一体で出てくる敵と、複数でパーティを組む味方の違いだろうが)


 感情、相関図、確認するとキリが無いな。

(これ……魔王の力に覚醒させつつ俺への従属感情を上げればよいのでは? そもそも魔王の力をそのままに人間として生きることも可能では?)


 神の所業にすら近い。いいのか? こんなことして。

 このままこの部屋を使い続けるのは、神になるに等しいのでは。


 神になるか人でいるか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る