第64話 デバッグルーム

 台座に乗り、俺たち五人は最終階層へと足を踏み入れた。


「鬼が出るか蛇が出るか……(やっべぇ、言ってみたかったセリフ第二位が言えたぜ。後は『俺を置いて先に行け』と『ちっ、あばらが二、三本イカレたか』の二つだな)」


 光に包まれながらも呟く。

 マジで決まってるわ、俺。





「――ボス、が出てくるかと思ったけどね……身構えた自分が馬鹿馬鹿しいわねぇ」

「何か何十階か前のけんきゅうじょ? 的な奴に似たフロアだな」

「前回との違いは廊下の迷路だったのとは違い、今回は完全に広い部屋に出たっていうところですね」

「ますた、ますた……なんか気分悪いぃぃ」

 現代チックのメカメカしいフロアは獣人のメルナには合わないか。


 白い壁や床、いくつものデスクにはある筈の無いもの――パソコンが何台も並ぶ。


 向かいにある壁にはでっかい画面があり、何分割かされ映像が映し出される。

 スチルの国や王都、ダイやチタンなどはもちろんエルフの村すら映っている。アルが妙にエロい表情で見たことも無い街を破壊している姿。血まみれで倒れるジャインやスリード、農作業に耽る筋肉ダルマに全裸でお会計をしている痴女。


「こ、これはどういう事!? 世界中の……だ、誰が撮っているの!? 魔法で似たようなことは出来るだろうけど、こんな広範囲を映すのは無理よ!」

 ムーンは口を押え、驚愕に目を見開く。


「ふう、これが真理か? 笑えるな、おい」

「しんり……意味が解らない、です……」


 二人だけでは無く、ジュピターすら驚いている。



「真理、ゲーム……まさかね」

 俺は試しに一台のパソコンを操作する。


 このパソコンはコンサを映し出している。マウスカーソルをコンサの胸に置き、クリックすると無駄にデカく形の良い胸が揺れた。画面の中のコンサは胸を押えて辺りを見渡している。


 左クリックからのキャラデータに進む。するとコンサの情報が出てくる。今の身体データはもちろん、覚えている魔法やスキル、現在何を考えているかも出ている。


(こいつ、胸Hカップもあるのか……乙女ゲームに居てはいけないレベルのキャラだな。俺がブラとかを産み出したせいか?)


 試しに俺は胸のサイズをワンサイズ下げてみる。するとコンサの胸が少し縮んだ。


 コンサは口をあんぐりと開けて驚いている。


 サイズを戻すと、今度は成長率を弄る。どうやら水系統の魔法が伸びるようなので、俺と同じ火の系統に成長率を上げてみる。


 そしてこれはやっていいかどうか――まあ、何事にも挑戦か。


 俺は彼女の心理状態の項目に、『火の魔法をぶっ放したい』と書く。すると彼女は突然店内で火の魔法をぶっ放した。


 店は大惨事で、中にいた客は逃げ惑う。


 そして俺は弄ったデータを巻き戻す。

 すると何事も無かったかのように先ほどまでの店内の様子が映し出される。


「これは――ヤバいね」

 変な笑いが出てくる。


 これはゲームの中にある、デバッグルームか。









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