空白

綾羽

本編

「空白って、なんだと思う?」


彼女は急に僕の方を向き、そう訊いてきた。


「え?空白?」


「そう、空白」


「…それはー、どういう意味で?

 色々あるでしょ、例えば感情とか、考えの意味で”空白”なのか、何かをえがく前のキャンバスみたいな”空白”なのか」


「うーん…全部かな。

 色んな意味があるってことを分かったうえで、空白って言うのがなんなのかなって

 思って」


「ふーん。

 

 これはあくまで僕の考えだけど、”何色にでもなれるもの”だと思う。


 それが感情っていう意味でも、描かれる前のキャンバスみたいっていう意味でも、    

 どんどん何かしらの色に染まってくじゃん。


 まあ、描く人によってそれは変わってくけどね」


 僕はそう答えた。


「…へぇ、そっかぁ。」


「…何その反応」


「あ、ごめんごめん。

 

 とりあえず、そらの考えが聞けて良かったよ、ありがとね」


「うん」


―――――


僕は後々あんな意味不明なことに真面目に答えてしまったことに恥ずかしくなった。


けど、


「彼女がああ言ってくれたのならいっか」


そう思った。

 





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空白 綾羽 @ayh13626

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