好きな人の好きな人は私ではない

@uve

変化

第1話



ビーービーービーー


いつも通りケータイの爆音アラームで目が覚める。

同棲して2年の彼氏はもう既に起きていて、

なにやらリビングでドタバタと出勤の準備をしている音が聞こえる。


彼は現場職なので私より早く家を出ることがほとんど。

目覚めたばかりのぼーっとした頭で

仕事嫌だなーーとぼんやり考える。



そう考えているうちに、




バタン。


...... 玄関が閉まる音がする。



交際して3年、同棲が始まって2年の月日が経つが、今まで行ってきますと言われなかったことがない。

彼のこの些細な行動一つで嫌な予感を感じてしまう。


思わずケータイを手に取り、彼にLINEする。

(なんで行ってきますって言わなかったの?)


数分後、


(ごめん)





あぁ、もう私たちは終わりなんだな。





朝のたった一つの行動と、

ごめん。とただその一言だけのLINEで気づいてしまった。


そんな小さな事で?

そう思う人も少なくないと思う。

誰しも2人にしかわからない世界というものがあって、そこは2人だけの絶対領域である。


例えば、長く付き合った相手がいたとして、相手が周りからすれば全く怒っていないように見えても、自分だけは、怒っているなと気づくようなことはないだろうか。

表情だけでなく、行動や身に纏っている雰囲気で気づいてしまうようなことがないだろうか。


そのよくあるようでないような、些細な行動ひとつで、何かはわからないけどおかしい

そう気づいてしまったのだ。


こればかりは長年をかけて作り上げた、2人の世界の中でのみ通じる言語のようなものであると私は思う。




それが今、壊れた音がした






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