男は背中で語る⁈
ごぼうのobjet
第1話
「
突然声を掛けられて、訳も分からずOKと答えてしまった。クラスで1番の秀才である凛さんが俺に何の用事があるというのか。
真面目で成績優秀。部活は合唱部。すらっとした体型に黒髪ロングが似合ってる綺麗な子。そんな印象ではあるが、正直関わりは薄い。クラスの男子の中でイケてない方のグループに属してる俺には縁遠い人だと思っている。
「おいおい。告白されるんじゃないの?」
友達の池田や徳島たちがニヤニヤしながら持て囃すが、そんな訳あるまい。あんな子が俺のどこに惹かれるってんだ。数少ない取り柄は背の高さ。だがしかし、背丈と一緒に顔まで伸びて、今や立派な面長。付いたあだ名は「フランスパン」。そんな男の何に惚れるのさ。
「無い無い。何言ってんだよ。」
俺は苦笑いで答えた。
時は放課後になり、部活を終えた俺は、凛さんに指定された音楽室へ足を運んだ。中に入ると、静まりきった部屋で1人佇む凛さんがいた。
「ごめんね。待たせたかな?」
と聞くと、
「そんなことないよ。大丈夫。むしろごめんね。呼び出しちゃって。」
凛さんは気丈に答えた。
「で、話って?」
俺の問いかけに対し、凛さんはうつむき加減で話し出した。
「あのね、私、ずっと、河埜くんに言いたかったことがあるの…」
心なしか、凛さんの声は震えてるように思えた。そして頬は紅潮していた。
あれ?これってまさか⁉︎
思わぬ展開に俺は戸惑った。恋愛経験の乏しい非モテ男には、これはそういう場面にしか思えないのだ。
「河埜くんのこと、ずっと見てて、キレイだなって思ってて」
キレイ?俺が⁉︎平静を装いつつも頭の中は興奮と共に混乱していた。
「私ね、好きなの」
好き⁈好きって言った⁉︎どうしよう‼︎俺はもう完全にパニックに陥ってしまった。
「好きなんです。河埜くんの姿勢が。」
…へ?姿勢?呆気に取られる俺をヨソに、彼女は続けた。
「部活中の河埜くん見る度に、いつも思ってた。
…
「私ね、あなたの背中をもっと近くで追いかけたいって思ったの!ねぇ、どうかな?」
…ええっと、これは何だ。何が起こったのだ。彼女は俺の後ろ姿が好きってことか?アーチェリー部で弓を引いてる時の俺の背中が好きってこと?そりゃ
「えっと…それは、付き合うってことでいいのかな?」
俺は戸惑いつつ確認した。
「うん。河埜くんが良ければ。あなたを近くで見ていたい。」
…何か釈然としない。釈然とはしないが…可愛い女の子からの告白。断ることは出来なかった。
「えっと、俺で良ければ…」
「本当に⁈良かったあ。ありがとう!」
「う、うん。あはは…」
俺にもあった。あったんだ。モテる要素が。
正真正銘、自分じゃ見えない所にな。
男は背中で語る⁈ ごぼうのobjet @riverfield0848
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