レロンとメモンと……
「どうしていつも君はそうなのかなぁ」
呆れたような口調はいつものこととして、今回の発言は明らかにかおかしい。つい笑ってしまうほどに。だって、
「それ、僕が君に言うセリフだよね」
つまり、こっちのセリフだぞコラってことだ。
「そういうところだよまったく」
話がつかめない。
「君はいつも私に呆れてるでしょう?」
確かにその通りだ。僕はコイツに呆れている。彼女は僕に呆れていて、僕も彼女に呆れている。まったく面白い。
「で?」
「私はいつも真面目に話をしてるのに、君はそれを半分以上聞き流してる。そういうとこが、君をモテなくさせてるんだよってこと」
全然意味が分からない。べつにモテたいわけじゃないし、モテてないわけでもない。
「余計なお世話だよ」
とりあえずこういうことを言われたときの定番なセリフで対処しておく。
「でもさ、やっぱりメロンパンがあるならレモンパンも作るべきだと思うの」
そんな話をしてたのか。呆れすぎててまったく話を聞いていなかった。いや、急に話を逸らしたのかもしれない。彼女ならやりかねない。
「たしかに、メロンパンにもそろそろ飽きてきた頃だしね」
「しね? なにそれヒドくない?」
そういうところに呆れるのだ。
「誰もそんなこと言ってない。それより、レモンパンが出来たとしてもメロンパンよりは売れないと思うよ」
彼女はハテナ顔をして、「なんで?」と首を傾げる。……うん、ちょっと、かわ、いい。
「そう、皮がいいんだよ。あの周りのサクッとした皮。それが甘いからおいしいんだよ。レモンパンにしたら酸っぱくしなきゃいけないから、僕はどっちを食べたいかと言われたら甘い方を選ぶよ」
僕が慌ててそう言うと、彼女はぬふふふふふふふふふと笑った。不適だ。まさか、バレたのだろうか、彼女をか、か、かわいいと思ってしまったこと。
「君、まさか、メロンパンはメロン味だと思ってるね。メロンパンはメロンの形だからメロンパンなんだよ」
そんなことも知らないの? と煽ってくる彼女は、なんとも自慢げな表情だ。ムカつくけど……。
「じゃあ、レモンパンはレモンの形にするだけってこと? それじゃあ余計に売れなくない?」
「でもさ、メロンパンは売れたじゃない。ただメロンの形してるだけで売れたよ」
「メロンパンはそれで売れたかもしれないけど、レモンパンなんだったら酸っぱいのかなって思って買うかもしれないでしょ。それで期待はずれに甘かったりしたらもうその人は買わなくなるよ」
彼女はうーむと唸って考えている。僕の意見に納得してくれたようだ。あ、あれは頭がメロンパンっぽい。
「じゃあ、もう、いっそのことメロンとレモンをごちゃ混ぜにして、レロンパンってのはどう?」
「それだったらメモンパンでもいいでしょ」
「たしかに」
また彼女はうーんと唸る。
そこまでして彼女はレモンをメロンと同等のものにしたいらしい。そういう優しさに、僕は惹かれたのだ。そして周りは引いてゆくのだ。
メロンレモンレロンメモン。
melon lemon lelon memon
mとnとlとeとoだけで形成されてるー。
ってことは、木綿もいける?
モメンパン。ははっマズそ。
で、またもや何が言いたかったのか、わかりません……。
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