これから「紅白」の話をしよう

いずも

第1話 むかしむかしあるところに、漫画家を諦めた少年がいました


 自分のことを書くのはあまり好きでもないし得意でもないので上手くいくかわかりませんが、ちょっとやってみようと思います。


 そもそも創作のきっかけは『ドラクエ4コママンガ劇場』という4コマ漫画、今風に言うとアンソロジーですね。

 複数の漫画家さんがナンバリングなど関係なく、ネタバレはしない程度に自由に4コマ漫画を描いているという印象でした。

 出版しているのがエニックス社なのでいわば公式、公認なんですよね。

 同人誌とはわけが違います。

 当時は同人誌などという概念が自分の中に存在しなかったので、二次創作だという概念もなかったわけですが。


 そしてこのドラクエ4コマ出身で、その後ガンガン本誌で漫画連載されている漫画家さんもたくさんいて、じゃあ自分でも頑張れば漫画家になれるんじゃないか、ドラクエのネタなんていくらでも思いつくぜヒャッハーという考えに達してしまったというわけです。

 子供って恐ろしいですね。

 なんであんなにも全能感があるんでしょう。


 そして画材を用意していざ描いてみますが全然うまくいかない。

 結果できあがったのはほぼパクリと言っても差し支えないネタ。

 当時でも「いやこれはダメなのでは……」と思っていましたが、今だと客観的に判断するまでもなく完全にアウトです。

 清々しいほどのパクリです。

 応募してみましたが当然採用されず。

 しかも私が応募してすぐに新規募集が終了してしまい、ドラクエ4コマ自体が終了してしまいました。

 プロ作家により続刊はされましたが、新規でプロデビューすることが叶わなくなってしましました。


 その後も漫画家を夢見る友人数人と漫画は描き続けていました。

 といっても原稿ではなくルーズリーフなどに線画を描くだけのもの。

 プロを目指すというよりは、創作活動を続けること自体が目的になってしまっている感じです。


 今でこそパソコンの無料ソフトでもCGや漫画が描ける時代になってますが、当時はフォトショとペイントショップしか選択肢がない時代、それも無料の試用期間内しか使えないようなレベル。

 SAIとかあと10年前に世に出ていればと思いますが、まぁそうだったところで漫画家になれたとは思えませんがね。



 そんな感じで日々ダラダラと意味のない創作活動を続けていたところ、別の友人からこんな誘いが来ます。

「小説を書かないか」と。

 あまりおおっぴらに言えることではないのでアレですが、その頃はエロゲの全盛期で中高生だった自分たちはその世界観に一気にのめり込んでしまいます。

 きのこに虚淵、ロミオにだーまえ……現在一般向けでも活躍しているシナリオライターが作ったシナリオに触発されて「エロゲにエロシーンはいらない」などと言っていました。

 まあ正しいんですけど、今にして思うとエロがなければそもそも売れてないんだから難しいよなってお話。


 自分は漫画家にはなれないと限界を感じていたところにきた誘いに乗り、小説を書き始めます。

 言ってしまいますが「小説くらいなら自分にも書けるだろ」という思いがありました。

 何だったら今でもあります。

 ただの文章です。

 誰でも書けます。

 書くことと面白いことと人に読まれることと人気が出ることは全部別物ですから。

 さらに追い風として個人サイトが流行りだした時期でもあり、いわゆる「テキストサイト」全盛期にあたります。


 今でも覚えている限りで私が見ていたサイトを挙げると「侍魂」「連邦」「ちゆ12歳」「ろじぱら」「斬鉄剣」「koikoi」など……。

 今では信じられないかもしれませんが、当時は侍魂が一日に10万アクセスが有ったと大騒ぎになっていたくらいです。

 ブロクが台頭する前の時代ですからね。

 もっと言えば侍魂で紹介されてgoogleが世に出回ったくらいの時代です。


 ネットの遍歴については熱く語ると万単位の文字が必要になるので割愛します。


 最初に執筆活動へ誘われた時はまだネットなんてほぼ触っていない時期だったので、小説を書く上で誰かの作品を参考にしようと本屋に向かいました。

 高校生だったので「そろそろ漫画を卒業して小説とか読まなくちゃいけない」みたいな固定観念に囚われていた時期でもありますね。

 今ほど漫画やオタク文化が受け入れられていない時代でした。

 だから当時は「ラノベ」という言葉も浸透していないため、初めて目にした時は全く意味がわかりませんでした。

 というか説明書きがしてあったくらいです。

 漫画くらい軽く読める、まさにライトなノベルです、みたいに。


 ずらりと並ぶ文庫本を前に、じゃあ一体どれを選べば良いんだと。

 シュリンクがしてあり中を試し読みすることもできない。

 じゃあ表紙買いするしかないよね。

 まだラノベが量産される前だったので、表紙絵も質が高いものばかりだったと記憶しています。

 なのであとは好み。

 そして、とある一冊の表紙が私の目にとまりました。


「これ、サモンナイトの人の絵だ」


 それが『キノの旅』。

 黒星紅白という名前のイラストレーターでした。

 ラノベとの初めての出会いでした。




 本当ならここから紅白さんの絵について思いの丈を書き殴ろうかと思っていたのですが、ここまでで意外と文字数が多くなってしまったので泣く泣くカットです。

 というか文章だけで見ても実際の絵を見ないことには魅力は伝わらないと思いますし、別に目的は紅白さんの絵を好きになってもらいたい、ではなく「こういう出会いがあって黒星紅白さんというイラストレーターを尊い存在だと思っている」ということが言いたいだけです。

 もちろん時雨沢先生の世界観があってこそですが、私にとってはあの表紙絵がなければその出会いすらなかったわけなので、最初の取っ掛かりとしてはやはり絵って大事ですね。



 それでですね。

 今年の1月に黒星紅白さんの3冊目の画集が約6年ぶりに発売されました。


 それを記念して、『黒星紅白画集発売記念展 -trois-』が開催されます。

 期間は2021年3月20日(土)~4月25日(日)で、

 場所は青山オーバルビル2Fです。



 緊急事態宣言も解除されたことだし、行ってきました。

 新幹線代含め往復3万円、片道6時間かけて。


 会場は複合ビルの一室で、ビル内に入ってすぐ案内板があります。

 階段は近くに見当たらず、2階だからエレベーターで向かえばいいと乗ったらまさかの「2階のボタンがない」という事態に。

 軽く混乱していると次々と各階に止まって乗り込んでくるリーマン。

 なんだこの人種。

 シャレオツなオフィスで働いている奴らは佇まいからして違うなオイ、などと脳内で突っ込んでから、周りが皆スーツの中場違い感を覚えて一旦脱出。

 再び1階に戻ってきて階段を探すも見つからず。

 いや階段あるのはあるんだけどその先は明らかに会社のオフィスだし、まさかそんなところで個展なんてやるわけないだろと思っていると非常口っぽいところに主催者の『青山GoFa』の文字が。

 何なのこれ、迷路じゃん。

 マリオの隠し通路使って進んでいく感じじゃん。

 まばゆい限りのオフィスビルの裏面、ひっそりと存在している路地裏みたいな場所に会場はありました。

 隠れ家レストランじゃないんだから、もうちょっとわかりやすいところにあってもいいじゃない。


 会場はビルの一室って感じでした。

 小さな画廊、中規模の個人の雑貨屋くらいの広さ。

 そこに画集の中に掲載されている作品のうち約90点が飾られています。


 主催が角川だからでしょうね。

 キノの旅とガンゲイル・オンライン、あとはLINEスタンプの自作キャラが飾られており、FGOやプリンセス・プリンシパル、ポッピンQなどの版画はありませんでした。


 クリアファイルやキーホルダー、アクリルスタンドやシャツにパーカー、時計にデジタル原画など様々なグッズが売っていました。

 一番の目当てはサイン入り画集だったので、無事に買えて一安心です。



 たしか前回も個展やるって情報は知っていた気がするのですが、確か「東京まで行くのはさすがに難しいな」ってスルーしてた気が。

 それが今回このコロナ禍にも関わらず「行こう」ってなるんですから不思議。


 多分自分が再び創作活動をするようになって、クリエイターへの尊敬の念が高まった結果なんでしょうね。



 これが東京行きを敢行した3月25日(水)のお話。

 そしてKAC2021の8日目のお題が「尊い」で、発表されたのが3月25日(水)。



 ……つまりこの出来事書けってことでしょう?

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