第2話  ある夫婦の物語 Sideアンジェリカ

 それから数日の間私は指示された通りそれを飲めばです。

 よく朝目覚めると全身が何とも言えない気怠さと秘めたる場所は最初に比べて痛みこそはないけれどもです。

 何と表現をすればいいのかわからない。

 ただ異物感が挟まってってこの様な場所にそんな事等決してあり得ない。

 なのに全身……特に上半身には赤い発疹が消える事はなくいえ、確実に増えている?



 異常でしかない状態。

 それなのに誰も病ではないと言う。

 では病でなければこれは何?

 問い質せば皆口を貝の様に閉じ、何も答えようとはしてくれない。


 何と言うもどかしさと苛立ちさ。

 それに加えて彼女達とはこれまでの間特に大きな問題もなく信頼関係も構築出来ていると思っていたのは私だけなの?

 

 皆何故その様に困り切った表情をするのかしら。

 わからない。

 何一つとしてわからない。


 こんな時リザが傍にいてくれると――――ああ駄目よ。

 リザは今家族と休暇を楽しんでいるのですもの。

 お父様達がお亡くなりになったからとは言え、彼女の休暇返上を認めなかったのは他の誰でもない私なのですもの。


 ずっと私へ仕えてくれたリザにはしっかりと休養を取って貰わなければね。

 だから彼女が戻るまで私は気を強く持って元気でいなければいけないのです。


 

 そうして十日後リザ……私の乳母であるハンプソン伯爵夫人クラリッサが帰るなり私の顔いいえ、入浴時の私を見て彼女の顔の色が一瞬で消えてしまったのです。


「驚かせてごめんなさい」

「アンジェ……殿下これは一体どういう事なのでしょうか」


 少しだけ緊張感のあるリザの声にやはりこれは病なのだと私は思ったのです。

 そしてあの時から今までの事を私は説明をしたのです。


「ま、まさかっ、では……あなた達は何の対策も講じなかったのですか!!」

「「で、殿下っ、伯爵夫人申し訳あり、ですがこれは厳命を受けた故にどうしようもなかったのですっっ」」



 弾かれる様に答える彼女達の話に私は全く理解が出来ませんでした。

 侍女達は皆床へ突っ伏す様にリザと私へ謝罪をします。

 一体何を謝罪……それに何て私は出した覚えはないのです。


 だとすれば一体誰が……お兄様?

 いえ、あの優しい兄がその様な命令と申しますか一体何を命じたと言うのでしょうか。

 もしかしてお兄様は私の病について何かご存じなのでは……。


「「お許し下さいませっ。厳命の内容をお話出来ない私達をどうかお許し下さいませ」」


 泣きながら許しを請う侍女達を見て私は何も言えなかったのです。

 何故なら怒る理由がなかったのですもの。

 でもリザは彼女達へ謹慎を命じました。

 

 私的には何もそこまで……と思ったのですが、リザにしてみればこれは当然の処置なのだと余りに強く言うもので私は暫くの間ならばと承諾しました。



 また再び夜も更けていきます。

 今宵はリザに言われてお兄様の勧める果実水を飲まずに休む事にしました。

 彼女が言うにはきっと今宵全てがわかる――――と。


 一体何が分かるのかと思いつつ、リザの言う通りならばと思い夜通し起きている心算だったのです。

 ですが寝台で休むと直ぐに眠気に襲われれば私はあっと言う間に夢の中へといざなわれてしまいました。

 最近は毎日この様な感じなのです。


 そうして気づけば翌朝――――ではありませんでした。



 最初は何もわからなかった。

 ただ眠っている間に時折呼吸がし難い感じと表現すればよいのでしょうか。

 それから次第に身体中が何とも変な感じなのです。


「あ、あんン⁉」


 自分でも信じられない変な声に思わず纏わりつく様な眠気は去れば私は目が覚めてしまいました。


 一体なんて声を――――⁉


「ああ、起きてしまったのだねいけないお姫様だ。ほらこれを何時もの様に美味しそうにアンジェの胎の中へ飲み込めば思いっきり感じてごらん。お兄様のものを食い千切りそうになるアンジェはとても厭らしくも美しい。ああ、お兄様だけのアンジェっ、あい、愛している!!」


 お兄様の言葉と同時進行の様に私の身体の、秘めたる場所へ何かが侵入すればです。

 勿論私は必死に抵抗します。

 でもお兄様はあろう事か私の領の足の間へと割り込むだけでなく、どの様に押し退けようと――――って何故お兄様は衣装を纏ってはいらっしゃらないの?

 

 わからない。

 何故、どうして?

 流石に兄妹と言えどです。

 裸の男の肩の胸を触るのは躊躇われます。

 だから私の腰を掴む腕を押すのですが全くびくりともしないのです。


 そしてお兄様が動かれる度に何か下半身が疼く様な初めて感じるこれは何?

 私の拒絶を無視したまま魘される様に何度も私の名を呼ぶお兄様。

 そんな時でした。

 お兄様の手が私の胸のふくらみを――――ってそこで初めて気づけば何故私も夜着を纏っていないの⁉


 それってつまり私達姉弟はお互いの裸を見せている。

 私はもう理解が出来る出来ないの区別何てと言うよりもです。

 パニックへと陥ってしまいました。


 だからありったけの声を上げて何とかこの状態より逃れたい!!


 ただそれだけを想い……。


「あ、や、やめいやあああああああああああ」

「で、殿下っ、アンジェ様っっ⁉ 王太子殿下これは⁉」

「そなたに用はないハンプソン夫人、下がるがよい」


 駆けつけてくれたのはリザでした。

 私は泣きながら自由にならない身体でリザへ助けを求めます。


「リザ、リザ助けてっ、リザ、いや、いやあああああああああああああああ」

「う、くっ、締ま……るアンジェ!!」


 突き上げられる毎に何かがせり上がれば行き成り、そうリザへ助けを呼ぶと同時に視界は真っ白になってしまいました。

 

 そうして訳が分からない中で胎の中へ熱い何かを吐き出された感覚だけがしっかりと身体が感じ取っていました。

 

 翌朝いえ、あれから身体を清めてくれたリザは私が目覚めるまでずっと傍にいてくれました。


「アンジェ様っ、申し訳御座いません。まさかここまでとは〰〰〰〰」

「私はお兄様の子種を受け取った。そう理解してよいの、ですか」


 涙が止めどもなく溢れては流れ落ちていくのです。

 昨夜は気が動転して何もわからなかった、いえわかりたくはなかったのです。

 でも一夜明けた今だから少しだけ冷静になりました。



 そう座学だけなのですが閨の事について教えを請うた通りのものが行われた。

 それも実の兄に!!

 きっと昨夜の事を振り返ればあれが初めてではなかったのでしょう。

 恐らく――――。


 15歳の私にはどうする事も出来なかった。

 そしてこれから襲い掛かる現実に私はなす術もなくただ寝台の中で塞ぎ込む様になったのです。


 

 

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