第二章 とある夫婦の絆
第1話 ある夫婦の物語 Sideアンジェリカ
「絶対に嫌よ!! 到底受け入れう事なんて出来ません」
「ですが王女殿下、これは最早決定事項なのです。つきましては――――」
「嫌っ、嫌よ。皆部屋から出て行って!!」
私はこのアーモンド王国の第一王女アンジェリカ。
ほんの数ヶ月前までは毎日がとても幸せに満ちていたのです。
本当に何もかもが色鮮やかで、でも数ヶ月前に前国王夫妻が諸外国へ外遊中に事故に見舞われお二人共が即死状態で発見されたのです。
私は余りの出来事に、そう何故なら彼らは私の愛するお父様とお母様なのですもの。
本当にお優しくて国をあるべき道へ正そうと必死になっておられたわ。
まだまだお元気で、なのにこんなにも呆気なく亡くなってしまわれるだなんて、一体この先私はどうすればいいのかしら。
ただ幸いな事に私は一人ではなかった。
そう四歳年上の兄が、でもその兄も喪が明ければ即位と同時に結婚をするでしょう。
そうなれば王妹である私は今までの様には……きっと肩身が狭く、いえ多分政略の駒として国内または周辺国の王族若しくは貴族の許へ嫁がされるでしょうね。
私のお兄様はとてもお優しい御方。
でも臣下達はきっと私を駒と使う心算でしょう。
そしてお優しいお兄様はそれを抑え込む事――――いえ15歳にもなって何時までもお嫁に行きたくはないと駄々を捏ねる方がどうかしているのだわ。
何故なら私は王女として国の為にこの身を捧げなければいけない。
臣下が望むのであらば国の為に嫁ぐのが王女たる者の務め。
でも、でもお願いだからせめてもう少しだけお父様とお母様を悲しむ時間を与えて頂戴。
そうすればきちんと望む家へと嫁ぐから……。
そうして両親の裳に服せば、あれはそうひと月程経ったある夜も更けた頃だったと思うの。
私は何時もの様に寝台でぐっすりと眠っていたわ。
だから最初は何も気づかなかった。
いえ、何時もより少し深い眠りだったのかもしれない。
何故ならあの日はお兄様より頂いた飲み物を飲んでから休んだのですもの。
珍しい飲み物だけれど余り日持ちがしないから今晩飲む様にって。
そうして飲んだ後に強烈な眠気へと襲われればそのまま……。
最初に感じたのは身体の中が裂ける様な熱くも鈍い痛みだった。
でも何故か私は普通に起きる事が出来なくて、瞼を一生懸命開こうとするけれどもとても重くて、直ぐにウトウトと意識が深い海の底へと沈みかければまた何かが身体を襲う衝撃の様なモノが幾度となく感じられた。
翌朝いつもより少し遅めに目覚めた私は寝台を見て吃驚してしまった。
確か月のものはまだだけれどもだ。
今まで狂った事がなかったのに敷布を血で汚していたのである。
おまけに身体は酷く疲れていて、月のものとは違う重怠さと秘めたる場所がじくじくと痛んでいた。
本音を言えばずっと眠っていたかった。
でも何か無性に身を清めたくてお風呂へ入ればそこでまた私は驚いたのです。
何故なら身体中に赤い発疹が、然も一つや二つではなく数え切れない数の発疹に私は何か病に罹ったのではと真剣に悩みました。
私へ仕える侍女達もそう思った筈なのに何故か誰もその事へ触れようともしない。
そこへ兄が私の許へ会いに来ると先触れがあったのです。
流石に国王となられるお兄様に病をうつす事になっては国の一大事です。
私は侍女へ命じ侍医の手配とお兄様には会えない旨を伝える様に申し付けたのですが……。
「殿下、これは病……ではないと思われます」
そう言葉を発したのはまだまだ年若い侍女だった。
「何故? これが病でなければ一体……」
「それは何とも私の口からは申し上げる事は出来ません」
病でなければ一体何だと言うのでしょう。
兎に角お兄様へお会いする事は流石に躊躇われた為、後日事の次第が判明すれば……と言う事で納得をして頂ければ、何故か今晩から暫くの間あの飲み物を飲む様にと言い渡されたのです。
まあフルーティーで美味しいものでしたから私も拒否もせず飲む事にしました。
でもまさかあの様な事になるだなんて――――⁉
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