第20話 史乗は恥にも武器にもなる

 使徒族クピトには、器官を多く持つ他に創作者デューに近い能力がある。ただし、新たな"もの"を生み出すことはできず、自分の経験や記憶から特に印象強いものを創り出すことができる。

 それは、当人の背中からまるで翼が広がるように生み出されるため、想像の翼-想翼そうよくと呼ばれている。想翼そうよくとして生み出されたものは、イメージが強いものは実体化するが、弱いものは面影を失い崩れ落ちる。

 日常では活用しやすい能力ではないが、収穫祭ハロウィンではそれを使ってモール・モースを薙ぎ倒す変わり者もいた。

 例えば、想翼によって巨大な青りんごを創り出した彼である。

「やったぜ!」

「すごいわね。でも何で真っ先に創れるのがりんごなの?」

「まぁ、昔から好きだったからかな…」

 と、新しい恋人に返す彼。

 酒を覚え始めた頃に、林檎酒を飲み過ぎて死ぬほど吐いて倒れるという醜態を晒した過去史乗があるからだとは、死んでも教えないつもりだった。

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