「ほらほら！お前も遠慮せずにやれぇ！」

「最高っすね先輩！」

「ちょ、兄貴！何に酒飲ませてんすか！」

　精霊（ウィスプス）は種族全体を通して大の酒好きである。

　特に石霊種（ドワーフ）はその筆頭であり、"酔う"ことこそが命への賛辞であるとまでのたまっている。

　しかし、酒に対する尊びと飲み方が必ずしも合致することはなく、何にでも"例外"はあるものである。

　あろうことか、"死（モール・モース）"の口になみなみと酒を流し込んでいる彼がそのいい証拠であり、普段の生活でも適当な、もしくは不条理な口実を付けては身内を酒席に誘い、からみ酒に付き合い倒すことで有名だった。しかし、それを抜けばよき人物であることから、慕う者がなくなる事はなかった。

　そんな彼にとっては、"命の悪あがき"を銘打ったハロウィン（享楽の宴）は、絶交の口実でしかなかった。

　しかし、本来の指針（命の悪あがき）から外れる者が増えているハロウィン（享楽の宴）の中で、"死（モール・モース）"に命の賛辞と謳う代物（酒）を薦める彼の行動は、あながち的外れでもないようにも見えた。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい