第13話 式神は”死”を喰らう

「そういえばこいつに名前はあるんだっけ?」

「"式神アラヤ"よ」

「そっちじゃない。自身のだ」

「そういえば、決めてなかったわ」

 巨大なカワウソが、"モール・モース"に喰らいついている。

 妖霊種もののけの夫婦が具象化した"式神アラヤ"だ。

 生活資源の一種であった魔法技術を、神事での祈祷・演出に用いるようになった事から派生した代物だ。

 周囲の粒子パティに刺激を与え、変異を起こす錬成魔術マギアと異なり、集約させた粒子パティに術者の創造ワンダーを投影させ具現化させ、使役する。

 優れた術者であれば、仮初の意思を持たせる事もできるが、"創作者デュー"の領分を犯しかねない禁忌性タブーと、不条理な事象を起こしかねない危険性リスクを孕むことから、座礁魔術ストランギアと呼ばれ、使用は厳しく制限されている。

 もっとも"式神アラヤ"を生み出せるのは、優れた創造力ワンダーを持つ妖霊種もののけぐらいに限られ、神事の際にしかお目にかかる機会はなかった。

「決めた。テッペにする」

「雄だったのか?こいつ」

 ハロウィンの夢ナイトメアの出現により、享楽の宴と化した収穫祭ハロウィン

 式神アラヤと思しき存在も確認されるようになり、それを神事のひとつと取るか、危険な愚行と取るかは、その後しばらくの論争事となるのであった。

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