第二章  Microwave Operated BiSUDs

数日後、永山から友氏に電話が入った。分析の結果か上がったので支部に来てほしいという内容だった。その声には力があり、おそらく何かを掴んだであろうことが予測できた。

「何か、わかったということですね?」

 友氏は部屋に入るなり尋ねる。

「ああ、色々とわかったことがある。まずは掛けてくれ。」

 そう言われて初めて自分が立ったまま永山に詰め寄っていた事に気付く。椅子に掛け、心を落ち着けるため一度深呼吸をする。

「冷静さというのも正義の執行のために重要だぞ。君は普段冷静なのにここぞという時に取り乱す癖がある。悪はそういう弱いところをついてくるから気を付けたほうがいい。」

「アンタにだけは言われたくないわよ。」

 横を見れば残りの二人が着席している。只野が軽く指を差しながら説教臭いことを言っているのはあまりいい気分ではないが、言っていることは正しいので反論しづらい。よく見れば須磨すまとの通信回線も開かれており、実質的に関係者全員が集められている。すなわちかなり重要な話であることが推測できた。

「では、始めようか。」

 そこで永山から伝達された事項は、回収した2つの遺体はここ最近行方不明者として届け出がなされていたこと、その2人に生前関係性は確認されていないこと、そして遺体の共通点としてこめかみに焼け焦げた跡が見つかったという事だった。

「で、その焼け焦げた跡ってなんなワケ?」

 早く結論を話せとばかりに天野が問い正す。友氏もその点は気にかかっていたため天野が聞いてくれたおかげで話がスムーズに進む。只野は難しいことは任せたとばかりに聞き役に徹している。

「ここからは僕の推測になるんだけどね、おそらくこれはブラックドッグ系列のエフェクトで脳に直接刺激を与えて、一般人を覚醒させている。そしてその過程で均一なジャームにすることで連携を可能にしているんじゃないかと僕は睨んでいる。」

 自らもブラックドックのシンドローム保有者である永山の言葉は、推測とはいえ友氏を納得させるには十分なものであった。

「つまり彼らは『僕たちに感知されない方法でコミニュケーションを取っていた』わけではなくて『同じ思考を持つためにコミニュケーションを取らずに連携できる』というわけですか?」

 にわかには信じがたい話であったため友氏が確認を求める。通信回線の向こうでも、「そんなこと……いや理論上は、でも……」と須磨の疑問が聞こえてくる。それらの疑問を受け、永山が答える。

「ああ、彼らの高レベルの連携はそういうカラクリだろう。そして当支部ではこれらの人造バイサズジャームを"Microwave Operated BiSUDs"、本事件を"M.O.B.事件"と呼称して正式に原因究明、及び解決を図ることとなった。エージェントの2人は勿論任務となるが、イリーガルの友氏君および須磨君も協力してもらえるね?」

 断る理由のないような件でも必ずイリーガルには確認を取ってから話を進める。永山の人間性の現れなのだろう。

「はい、もちろんです。」

 元々自分が持ち込んだ事件のようなものと感じている友氏は即座に返事をする。須磨も二つ返事で了承する。

「つまり人々をジャーム化している悪の権化を見つけて排除するということだな?実に正義的ではないか!内なる正義の炎がメラメラと燃え上がってくるぞ!なぁ天野くん!」

 話の区切りを感じ、只野が立ち上がり会議を自らの言葉で締めようとする。

「アンタはいつも単純でいいわね……」

 天野の意見には永山も友氏も同意せざるを得なかった。

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