02

 何か、違う生き方をしたかった。どこまでも普通。どこに行っても普通。平均で、平凡な人生。

 顔と身体だけは、少しだけ自信があった。でも、普通の人間の外側が良くても、誰も寄りつかないらしい。浮いた話も友達もなく、何事もなく日々だけが過ぎて。今ここでひとり、仕事。

 窓際部署。備品整理がお仕事内容。普通の自分には、ぴったりだった。普通に天職。わたしは普通だから、備品もぜんぶ普通になる。普通による普通のための普通の備品整理。


「あの、すいません」


 誰か来た。印刷用紙運ばれてきたのかな。台車あったっけ。


「はい」


「備品部署はここですか」


「あ、はい」


 この部署には名前がない。備品のところ、とか呼ばれてる。いるのは、わたしひとり。


「ここに配属になりました。利津可といいます」


「新人さん?」


 そんな話は聞いてないけど。誰だろう。

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