僕はずっと追いかける、それでも。

ヤグーツク・ゴセ

 空への摩天楼

淡雪が空から迸る海に恋をした。


歩くたびに芝桜に足を吸われるような岬から見える景色は青一辺倒な海だけだ。そんな岬から海の波打ち際に君を見た。君はもういないはずなのに、僕の目にはいつも笑っている君が見える。それは決して幽霊とかじゃない気がする。


君のおもかげを追いかける日々が夏に溶けていく。君のおもかげを見るといつも夏の匂いがした。芝桜が消えていく足音が理不尽に聞こえる。君のいない空は空っぽで色が無い。

わかってるんだ、こんな色のない世界は僕にとって誰のものでもなくて理想とはかけ離れた無機質な世界。僕は君をここから見下ろすことしかできない傍観者だ。僕が君に溶けてく、夏に溶けてく、淡白な世界に溶けてく。

僕は君に会うために岬から限りなく青い海に飛び込んだ。


春が終わる頃。ずっと僕は夢を見てた。

僕が死んで君に会う夢を。


僕の靴の裏には芝桜がついていた。夏が始まる。これが忘れたくないこと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕はずっと追いかける、それでも。 ヤグーツク・ゴセ @yagu3114

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ