第691回 ある噂が飛び交う
とある人物の家の中。
その部屋には一つのパソコンがあり、一人の人物はそれを見る。
インターネットの検索エンジンサイトで検索するだけでなく、その手の裏サイトなどを探る。
そんななかで、ある噂があることに気づく。
(葉積城台学園の文化祭前日に現れた魔物の映像か。
そこに映されているから分かりにくいが、映像を鮮明にしてくれるソフトを用いた奴の映像だな。
そこに各田十言らが映っているわけか。)
と、この人物は心の中で思いながら、その映像を確認する。
そこには、各田十言が映っており、この人物の心の中で思っていることの説明で十分に合っている。
そして、もう一つの映像だ。
たまたま、家の中にいたと思われる人物が撮った映像である。
(………作り物ではないな。見た感じだと―…。
………………………………信用しても良さそうだ。
戦っている者たちの衣装から推測して、各田十言らだな。
というか、何だよ。
毎回思うが、衣装に統一性がなすぎて、ここはファンタジーとSFの世界か何かか。
この衣装を考えている人間がアニメやら漫画の衣装を担当させたら、統一感がなくなるだろうに―…。
それにしても、ニュース番組で、日本の現政権と強く繋がっている男が各田十言の名前を言っただけで、ネット上ではその写真姿すら捉えられている何て―…。
ネットって恐ろしいなぁ~。)
と、心の中で思いながら、ネットの情報力に恐怖するのだった。
まさに、集合知の力である。
その力に恐れながらも、各田十言らの衣装に統一性がないことに、この衣装を製作した者のセンスを疑問に思うのだった。
まあ、この人物はアニメとか漫画とかを十数年ほど読んではいないが、その知識に関しては、それなりにある。
文化部である以上、こういうことを知っておいて損はないからだ。
まあ、そのことは置いといて―…。
そして、今、見ている映像からネットの集合知によって、各田十言の名前だけで、姿さえもがバレてしまっているということである。
それも十言の本人の顔が―…。
(そして、各田十言の顔が割れた以上、こちらとしてもいろいろと擁護しないといけないということか。
印堂宝生、大田原山作次郎―…。あいつらの関係者は、ネット詐術に関しては、長けている企業と取引があるとか―…。
それに投稿時間から考えて、企業だと推定するネットの者すらいるしな。
本当に、ネットに関する専門家は、次第に、在野の中で育っているという感じだな。テレビとか出演していないような奴、……いやテレビに呼ぶことができないような奴らが―…。
俺程度の書き込みで擁護になるとは限らないが―…。
まあ、やらないよりかはマシだ。)
と、思いながら、この人物は十言に対する擁護の書き込みを開始していく。
そんななかで、この人物さえも誹謗中傷の対象とされていく。
だけど―…。
(数秒でこの反応か。
完全に印堂宝生と大田原山作次郎の下っ端どもが、ネットの海を監視しているという感じだな。
自分に対する批判の意見を封じてきたことだけはある。
少数の者による複数アカウントを使ってのこのような書き込みは相変わらず…か。
ということになると、こちら側も連絡しないといけないな。)
と、この人物はすぐにある人物へと連絡を入れるのだった。
◆◆◆
警察委員会。
この委員会は、委員会というが実態は大組織であり、日本政府における治安維持を担当している。
全国的に支署を持っており、網羅している範囲は日本全土である。
そして、この組織は、神信会には従属的であるが、日本政府にはそこまで付き従うような感じではなく、神信会にとって都合が悪くなれば、組織立って行動し、日本政府の政権を失墜させることがある。
だけど、大田原山作次郎の登場により、彼は警察権力を自分の意のままにし、かつ、神信会に付き従うようにしているので、組織としての腐敗も昔からあったが、さらに進行し始めているという感じだ。
その中で、上層部による会議が開かれていた。
「どういうことだ。この噂はどこから出ているのだ。」
と、この言葉を発した初老の男性はイラつきを憶えている。
「突き止めることができましたが、何せ、強制的に削除してもすでに拡散されてしまっていて、どうしようもありません。」
と、報告した男性は言う。
初老の男性よりかは、少しだけ歳が若いが、頭頂部に髪の毛はなく、かつ、その丸顔は、日々のストレスからか、弱々しそうに感じる。
イラついている初老の男性が、警察委員会の委員長でトップでもある
平伏は、パーマをかけているのだろうか、髪の毛が逆立っている。
そして、その髪型と目が厳ついせいか、周囲の者に対する威圧感を与えている。
だが、根はただの小心者であり、弱者にいびり、強者には平伏すような人間である。
そして、大田原山作次郎関連の事件の揉み消しに暗躍しているとされる。
「それでも、削除していけ。
それに、こういう投稿をするような輩を徹底的に洗い出して、場合によっては始末しろ。
日本政府には、一編たりとも反対意見や批判があってはならないのだ。
分かっているよなぁ~。」
圧をかける。
平伏にとって、日本政府における批判は、治安上の問題でしかないのだ。
なぜなら、日本政府がおこなっている政策は常に正しく、神信会の教えは常に正しい教えであり、それを批判したり、反対する者は頭がおかしいとしか思えないのだ。
平伏の世界観においては―…。
「はい!!! この
と、言いながら、部屋から出て行くのであった。
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