第22回 強い一撃におされるのなら、逆に利用すればいい

 キーン。


 阿久利美愛へ近づく方法は、頭に浮かんだ。


 勇者の剣撃を受けながら、前へ進む。


 第一段階としては、そうするしかない。


 ゆえに、俺は、勇者の剣撃を受けた後、すぐに、手が痺れるのを覚悟して、勇者の方へと走りながら進む。


 「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああ。」


 と、叫びながら―…。


 「侵入者。いや、各田十言。貴様は、神を信仰する教会に侵入した罪により捕えさせてもらう。」


 いまさら、それを言うのか、勇者。


 まあ、そんな言葉どうでもいい。


 俺は、今、自分が考えた作戦を実行するのみだから―…。


 俺は、勇者に長剣を当てられる範囲になると、長剣を上に振り上げ、まっすぐ振り下ろす。


 俺の攻撃を勇者は、剣で受け止める。


 キーン。


 俺は、長剣で勇者を押し倒そうとするが、それは失敗する。


 当たり前だし。俺にとっても、予想の範囲内の出来事だ。


 だから、勇者の重い剣裁きで弾かれる前、勇者を横切るかのように前へと移動する。


 もうわかっただろう。俺のやろうとしていることが―…。


 俺は、勇者から横切ることに成功する。


 すでに、この作戦のリスクは頭の中に入れている。


 さあ、行くぞ。


 そして、俺は、再度、横切った後、勇者のいる方向を向く。


 「隙ありだ。各田十言!!!」


 やっぱり、来ると思ったよ。それ―…。


 俺は、再度、自らの武器である長剣で防御態勢をとる。


 キーン。


 グッ!!!


 やっぱり、強いわ、勇者!!


 俺は、勇者の重い一撃を受け、後ろへと後退する。


 だけど、これでいい。


 後ろの白い服で覆われた奴は気づいたとしても、自分の名誉と出世のことで頭がいっぱいだろう。


 いや、恐怖か。恐怖の方ならヤバい方になりやすいが―…。


 「何、ボーっとしている。各田十言。俺を相手に余裕とはいい度胸だな。」


 そう勇者が言ってくると、勇者は俺に向かって走り出し、攻撃をしてくるのであった。


 あの目は、ガチだ。


 だけど、それは問題ない。


 むしろ、本気でこいよ。勇者。


 俺は、長剣で防御する。


 キーン。


 やっぱり、重いわ!! 何度受けても!!!


 だから、俺は、勇者から距離をとる。


 そう、この距離をとることで、阿久利美愛に触れるところまでいけるのだからな。


 そして、そのリスクとなる奴はどうだ。


 「貴様は馬鹿だな、各田十言。お前の作戦はわかっている。勇者の攻撃を利用して阿久利美愛に近づこうとしたのだろ。だけど、それには、弱点が存在する。このようにな。」


 と、白い服で覆われている奴が言うと、阿久利美愛の胸部に向かって、自らにしまっていたのであろう短剣を取り出して、上から重力を用いて刺し殺そうとした。


 「ハーハッハハハ。所詮、子どもの考えることだ。神信会の主導者を舐めるな―――――――――――――――――――――――――――。」


 「クソ――――――――――――――――――――――――――――。」


 白い服に覆われた奴は、俺の作戦を見破っていたようだ。


 まあ、すべてではないが―…。


 そして、白い服で覆われた奴に合わせて、あえて、悔しそうに叫ぶ。


 ああ、そうだった。


 「えっ!!」


 白い服で覆われた奴は、驚く。


 阿久利美愛は、すでに俺が干渉できる範囲にいる。


 そう、防御できるぐらいの場所に―…。


 そして、白い服で覆われた奴に言っておかないとな。


 「よく、見破ったよ。俺の作戦を―…。だけどさぁ~、俺がそんなデメリットを考えていないわけないだろ。お前のような奴がどういう行動をとるのか。二つぐらい考えたんだよ。一つは、俺がお前に近づいてくるので、その隙を狙って俺に攻撃してくること、二つは、さっきのように、阿久利美愛を亡き者にして、俺らの目的を達成させないようにすること。だから、俺はバリアを張ることができる範囲に入るために、近づいて、阿久利美愛にバリアを張らせてもらったんだよ。残念だったな。」


 白い服で覆われた奴は、絶句する。


 まあ、策を閃いた時から、このことは予測できたことだし―…。


 勇者が、攻めてくるな。


 でも、俺は、阿久利美愛に触れられる範囲まで到達する。


 ここからだな。


 俺は、阿久利美愛を守りながら、勇者から逃げないといけなくなる。


 俺は、阿久利美愛に腰の部分に触れ、俺の腕を腰の下にして、後は魔力を使い、阿久利美愛の体を彼女が目を覚まさないように動かし、神信会日本本部の教会からの脱出を図るのである。


 さあ、ここから本番ってところか。

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