第16回 魔力を辿って探そう、決してこれは、ストーカー目的ではありません。美少女を助けるためです。本当に本当だよ。

 ◇◆◇



 誰それ?


 俺は聞いてしまった。阿久利美愛という子が何者かに連れ去られたらしい。


 どうして、俺はここにいるのだ。関係ないよね。


 一人の女生徒を探すのに、一番関係ないよね。


 でも、ここに俺が呼ばれたということは、まさか!!


 「あの~、つまり、神に関することなのですか?」


 おずおずと丁寧な言葉で俺は質問する。


 雨音さんには、丁寧な言葉で接した方がいいと思う。


 なぜなら、まだ知り合ってからそれほど時間が経っていないし、最初から不躾な態度は相手に不快な態度をさせてしまうからだ。礼儀、大切。


 母さんであるアルケーに対する態度は、今更なので、どうでもいいけど―…。


 「そうです。神に関することです。アルケー様の魔法での監視によると、阿久利美愛は、兄で、勇者である阿久利正義によって、気絶させられたもようです。勇者の言葉から推測すれば、魔力因子を持っている阿久利美愛の命を狙ったものと思われます。

 そして、阿久利美愛に提出させた指印による魔法追跡および無意識下における他者の言葉の再現によれば、まだ阿久利美愛は生きており、勇者が人目のないところで、阿久利美愛を殺すことになっています。だから、今のうちに、追ったほうがいいでしょう。アルケー様。」


 雨音さんの言っていることを必死に聞くことで精一杯だ、俺は―…。


 でも、要旨をかいつまむと、阿久利美愛という少女が兄である勇者に連れ去られたということだ。そして、勇者は妹を殺そうとしている。


 だから、俺たちのすることは、阿久利美愛という人と一緒にいる勇者を発見し、勇者から阿久利美愛を奪還することと、阿久利美愛の命を守れということだろう。


 「そうじゃな。雨音。車の方は準備できているな。そして、指印は、どっちの方向へと向かっているのかわかるかの~う。」


 アルケーは、雨音さんに勇者がどこに向かっているのかを聞いている。


 「はい。たぶん、方角からして、神信会日本本部の敷地内にある教会だと思われます。」


 「そうか。なら、先回りして、神信会日本本部へと行く。そして、十言。」


 「はい。」


 アルケーは、急に俺に言ってくるので、ビックリして声が裏返ってしまい、大きな声になってしまう。


 「お前も戦闘に参加してもらう可能性が高い。覚悟を決めておけ。」


 「はい…。」


 今度は、弱く返事してしまう、俺。


 これから、戦いになる可能性があると、真剣にアルケーが言ってくる。


 それも真面目なアルケーの表情から言ってくるので、本当に戦闘になると思う。


 俺は、神を滅ぼすと決めた。そのためには、守って、守って、強い相手を引っ張り出さないといけない。


 ※主人公は、第7回で言ったアルケーのセリフの一部を聞き逃しています。聞こえたのは、武器の性能と仲間は女の子だけだというところだけです。魔力因子に関しては武器の性能に絶望して、主人公の耳には聞こえていませんでした。


 「では、行くぞ、十言。」


 と、アルケーは言うと、理事長室を出て、玄関から外へと向かい、そこから、雨音さんの車に乗せてもらう。


 そして、俺とアルケー、雨音さんは神信会日本本部へと向かって行くのだった。


 俺は思い出す。


 神信会日本本部って―…、神信学園と同じ敷地じゃん。

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