「第4話」 嘘と犬

「部長!!やばいです、緊急事態です!昨日の僕の小説覚えてますか!?」


「どうしたというの後輩くん。昨日のクソ...駄作を覚えているとでも?」


「その反応なら覚えているじゃないですか.....ってそうじゃなくて!大変なんです!昨日のアレが現実のものになってしまっていたんです!今朝校門の近くで僕の小説の登場人物そっくりの一年生がいたんですよ!」


「はあ.....後輩くん、認めたくないとは思うけどあなた頭が.....それに放課後になって早々に駆けつけたと思えばそれを伝えるためだったの?」


「僕は正常ですって!!それにそこら辺の人たちに聞いてみてくださいよ!小説通りなら今頃告白紛いのことして家に2人で行ってるとこですよ」


「そこまでいうなら、ねえそこのあなた?校門のとこで一年生2人がイチャイチャしてなかったかしら?」


『え?あーなんか同級生たちがそんなこと話して盛り上がってました。何かあったんですか』


「いえ、気になっただけよ。ありがとう」


『ならよかったです。では』


「どうですか先輩?少しは信じましたか僕のこと?」


「いいえ、まだ偶然という可能性が高いわ。流石に名前が一緒なら信じようかしら」


「そういうと思って...じゃん!名簿です!先生に頼み込んで少しだけぬs....いえ、借りてきました。この名簿にちゃんと名前があったから部長にこうして話に来たんですよ。」


「へーえなるほど、ね?たしかに名前はあるようね....では仮にあなたの小説が現実になっていたとして原因は?そしてあなたはどうしたいのかしら?」


「原因ですか、まあ一番に思いつくのは昨日の原稿ですかね。むしろあれくらいしか思いつきません。あと、何がしたいというのは?」


「そうね、仮に、もしよ?あなたの言うとうり小説が現実になっていたとして私たちに変化はないわ。当然よね、昨日の小説には上級生なんて出てこなかったもの。それならわざわざ私たちが何か行動を起こす必要はあるかしら?何もしなくても勝手に話は終わるでしょ。」


「たしかにそうですね...でもひとつだけ気になってることがあって、昨日部長に散々に言われたのであの原稿昨日のままなんですよ。もし現実と小説がリンクしているなら小説に書かれていない今日以降はどうなるんでしょう?」


「そのまま勝手に進んでくれるのが一番ね。でも最悪時間が止まったり世界が崩壊してしまったり..........なんてことがあるのかしら?」


「そうですよ部長!!世界の危機なんですからどうにか解決しましょうよ!絶対楽しいですって!」


「あなた絶対最後のが本音でしょう?まあいいわ付き合ってあげる。まずはどうするの?」


「そうですねーまずは昨日の原稿でも見てみますか。もしかしたら何か変化が起こってるかもしれないですし、続きを書いたら反映されるのかも確かめたいですし。」


「で、その原稿今どこにあるの?」


「じゃじゃーん!なんとこちらに!!」


「ふむ、わたしには何も見えないけれど心の汚い人間にしか見えないと代物なのかしら?」


「何ナチュラルに僕のこと心が汚いって言ってくるんですか...ちょっとふざけたのはすみませんでした。今原稿持ってないんですよ。ですから一通り学校回ってみませんか?」


「まあいいわ、そうしましょうか。あ、でも新入部員が私たちがいない間に来たらどうするのよ」


「同好会ですって。それに新入部員なんてきても何もすることないんですし入部届だけ置いておけばいいんじゃないですか?」


「それもそうね。じゃさっさと行きましょう。この世の謎は全て解かれるためにあるのよ後輩くん?」


「そうですかね?謎なんて偶然か作為のどちらかじゃないですか。でも乗り気になってくれて良かったです。ではどこから行きます?」


「じゃあとりあえず一年生の教室に行きましょうか」


「玄関じゃないんですか?色々見てた人もいると思いますけど」


「本当にあなたの小説通りなら一年生の教室には「はるはる」がいるはずよ。彼女から話を聞きたいわ。」


「なるほど。先輩がまだ僕のこと信じてないってことがよくわかりました。一年生教室は確か4階でしたね。なら僕は玄関に行ってみるので先輩は一年生の方に行ってください。」


「ほう?あなたは私1人に階段を上らせようと言うのね?」


「なんで不満げなんですか。別れて行動するのは大事ですよ?それに今日は珍しく幽霊部員もいることですし一緒に行ってきたらいいじゃないですか」


「幽霊部員は部活に来ないから幽霊部員なのよ。私に概念を連れて行けとでも?」


「え?できないんですか?まあいいです僕は行きますね。」


「今のところ人類は概念を目で見ることすら不可能よ....まあいいわ行けばいいんでしょ。それにしてもさっきから犬がずっと鳴いてて気が散る!!...ってもういないし。」

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