第13話 再会 4



 氷魔達の前方から複数の音がなる。クラスメイト達もしっかりと氷魔と同じように前方を観察する。さらに、氷魔は前方に鑑定を発動すると、配下のシャドウウルフだった。


 「蒲田!その魔物は俺の配下だ。他の奴らも手を出すなよ。」


 すぐに蒲田が返事をし、クラスメイト達にも念の為に指示を出す。

 「わかった!全員攻撃はするなよ!」

 陰屋が頷き、沢田が素直に返事を返すが、竹田と赤井が愚痴をこぼす。

 「………ああ」

 「うん。」

 「チッ。まぎわらしいな。」

 「びっくりさせないでよ。」


 氷魔は周りを少し確認して、念話の使えるシャドウウルフのキディルに確認を取る。

 「キディル。なんでシャドウウルフが前から来るんだ?」


 《すみません。念の為3体ほど先行させていました。》


 「そういうことか。いや、その方が安全だな。気にするな。ところで、わざわざこっちに来たってことはなんかあったのか?」 


 《聞いてきますので少々お待ちを。》


 キディルが前方のシャドウウルフと少しやり取りをして、すぐに氷魔に報告をする。

 《もう少し行くとゴブリンの群れに遭遇するそうです。群れの数は10体ほどだそうです。》


 (10体?どう考えても何かしらの上位種がいるな。上位種の個体は配下に加えたいが、こいつ等に何かあると今後が動きづらくなるしな。)

 「キディル達シャドウウルフはこいつ等の護衛を頼む。リル。前方にゴブリンがいるらしい。もう1体の魔狼と俺で一緒にゴブリンを奇襲するぞ。」


 《了解です。主君。》

 《ゴブリンですか。了解です主。もう1体と一緒に戦わせていただきます。》


 先に配下の魔物達に指示出した氷魔は、クラスメイト達の方を向いて、情報を共有する。


 「蒲田。一応情報を共有しておく。いま来たシャドウウルフ達の方にゴブリンが10体ほどいるらしい。俺と魔狼で倒しにいってくるが、お前たちに何かあるといけないから、シャドウウルフ達を護衛としてここにおいていく。」


 「ちょっとまて。お前とその魔狼という魔物だけで大丈夫なのか?俺なら敵の注意を逸らすくらいなら…」


 「いや。悪いが邪魔になる可能性の方が高い。

それに、お前が残らないで誰があいつ等を守るんだ。………問題行動を起こしそうなあの2人の手綱を握ってもらわないといけないしな。」


 後半は蒲田にしか聞こえないように特に気にしながら喋る氷魔。その意図がわかった蒲田は、すぐに頷き、返事をする。


 「確かにそうだな。くれぐれも気をつけろよ。」


 「ああ、わかってる。蒲田達はここで待っていてくれ。」


 蒲田に納得してもらった氷魔は、すぐに魔狼たちとシャドウウルフが来た方に向かっていく。すると、100m程進んだ先にゴブリン達を見つける。氷魔と魔狼は木に隠れてゴブリンに鑑定を使いながら観察する。


 「「「「グギャガガ。」」」」

「グギャギャギャ」「「「グギャ」」」「「…」」


 氷魔の視線の先には、蛇を木の棒で殴っている通常のゴブリン Lv.2 が4体。

 そのゴブリンの近くで嘲笑っているゴブリンの上位種、ホブゴブリン Lv.10 が1体。

 さらに、ホブゴブリンから少し離れたところに、通常のゴブリン Lv.3 が5体。3体が仲間のゴブリン達を眺めていて、もう2体が周囲を見ていた。


 (普通のゴブリンは全く問題ないな。特別なスキルもない。問題は、ホブゴブリンくらいだな。)


 氷魔が見たホブゴブリンのステータスがこのようなもの。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ホブゴブリン

 Lv.10 男

能力値

体力 230/230

魔力 10/10

物攻 15

物防 15

魔攻 0

魔防 10

素早さ 10

スキル

・悪食 

・棍棒術 Lv.1

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 《リル。聞こえるか。》


 《はい。主。どういたしますか?》


 《少し離れているゴブリン5体を全員で倒してから、1体だけ大きいゴブリン以外をリル達で倒してくれ。大きいゴブリンは、最初のゴブリンを倒したあとに俺が相手をする。》 


 《了解です。》


 最後に氷魔が《行くぞ。》と声をかけてからゴブリンに向かってリル達が走り出す。

 まず始めに氷魔がその場から操縛糸で2体のゴブリンを貫き、鑑定で死んだことを確認してから、ホブゴブリン達の様子を確認する。


 (まだ気づいてはいないな。)


 氷魔がホブゴブリン達の様子を確認している間に一番素早いリルが、ゴブリンを足の爪で切り裂き、近くのもう1体も同じように倒す。

 リル後ろから少し遅れて来たもう1体の魔狼が少しだけ遠かったゴブリンに噛みつき、木に向かって投げ飛ばして倒す。

 ゴブリン5体が死ぬのに1分とかからなかったが、倒し終わるのと同時に違和感を感じたのか、ホブゴブリンが背後を確認して、リル達魔狼を見つける。


 「グギャギャ!、ギギャ!」

 「「「「グギャギャ!」」」」


 (とりあえず、囲まれない数には減らせたな。)


 敵に気づいたホブゴブリンは、ゴブリンに声をかけリル達に向かっていく。

 そこを横から、氷魔の操縛糸で頭と腹部を狙い刺し貫くように動かす。そして、こちらに全く気づいていないホブゴブリンはあっけなく倒される。

 その後は、リル達魔狼に簡単に倒されるゴブリン達であった。


 「今回は、簡単にかたづいたな。ゴブリンはアイテムボックスに回収しておくか。」


 氷魔はゴブリン達をアイテムボックスに回収して、リル達と一緒に、蒲田達の待っている場所に戻っていく。



 「蒲田〜、とりあえずゴブリン達は倒した。案内の続きを頼めるか。」


 「おう、オーケーだ。」


 その後も氷魔達は、蒲田に案内をしてもらいつつ軽く喋りながらバスに向かっていく。その途中で蒲田が氷魔に対して喋りかける。


 「それにしても速かったな。ゴブリンは少なかったのか?」


 「いや、大きいゴブリンにただのゴブリンが9体って所だ。」


 「!……よく倒せたな。にしても、涼川と俺達じゃあ強さが違うな。」


 「まぁな。俺は食べるものとか探さないといけなかったからな。どうしても戦いになるんだよ。そのおかげでレベルは上がったけどな。」


 「そういうことか。……涼川、もうそろそろで付きそうだ。」


 「了解だ。それとバスに戻ったらでいいけど、

こまめにステータスだけは確認しておいたほうがいいぞ。レベルが上がっても教えてくれないからな。」


 「そうなのか! わかった。後で確認しておく。」


 氷魔たちの話し合いがちょうど終わったのを見計らったかのように、目的地のバスが見えてきた。


 「おっ!、涼川! バスが見えてきたぞ。」


 「そうだな。(遠目から見た感じだとバスはそんなに壊れてはいなさそうだな。)」


 とりあえず目的地についたことによって、氷魔たち全員がホッとしていたのだった。


 









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