第11話 再会 2


 「あんた、なんであいつらを庇うのよ?!」

 「そうだ!俺たちは生きるためにレベルを上げないといけないんだ!」

 「………」

 「皆やめなよ。」

 「涼川。良かった。……それにしても、お前どうして1人なんだ?」


 (サイレン女と竹田がいるな。他のやつが良かったんだが。)


 遭遇した5人のクラスメイトを喋った順番で説明すると

 1人目。赤井 千鶴(あかい ちづる) 。

ちょっとしたクラスの問題にも正面からズバズバ文句だけを言い、自分から解決案などを一切出さないという自己中な女子グループの中心人物だ。容姿など学校の成績も中の中。いたって平凡な感じだが、いちいちうるさいため、クラスの連中からは影でサイレン女と呼ばれたりしている。


 2人目。竹田 孝 (たけだ たかし)。

こいつは、サッカー部に所属しているが自分の失敗を認めようとしない性格のため、パスまわしや諸々のプレーで失敗するときは相手のせいにし、ケンカになる。最近は部活にいっていないらしい。容姿は普通で体は運動部らしくほどよい筋肉がついているが、頭はよろしくない。


 3人目。陰屋 悟(かげや さとる)。

陰屋は、特に性格が悪いわけではないが、いかんせん喋らない。誰かと喋っているのを見たことがなく、気配も感じないため、不思議な奴とクラスの全員が思っていることだろう。


 4人目。沢田 琴 (さわだ こと)

クラスでは、小動物のように愛でられている。いつも頑張って誰かのために動こうとするクラスの良心てき存在だが、いつもクラスの女子から愛でるという妨害を受け、ペットとしての存在感しか思い出せない。


 5人目。蒲田 亮吾 (かわた りょうご)

クラスの男子のなかでもよく話すやつだ。蒲田は皆に優しく気遣いのできる人気者だが、周りを気にしてゲームやアニメが好きなことを秘密にしている。俺は、偶然蒲田のその秘密を知って、よく二人でゲームやアニメのことを話している。


 (蒲田達の情報が欲しいな。…それに、なんか元気もないな。あの二人は別だけど。)

 「蒲田。飯は食べたか?」


 氷魔が蒲田に質問すると、周りの奴らが騒ぎ出す。


 「食い物があるのか?!」

 「食べ物?!私達にもよこしなさい!」


 (あーー。うるさい奴らだな。……とりあえずテキトーになんか食わせて、静かにさせるか。)


 「悪い涼川。俺たちの食べ物がそこをつきそうで、この辺りを散策してたんだ。それに、お前の仲間?なのか分からないがゴブリンを殺してしまった。」

 「涼川くん。その、ごめんなさい。」


 「何、蒲田や沢田が気にするな。俺についてきてくれ。……ディレット。お前達で死んだやつらを埋めてやってくれ。終わったら、周りの警戒を頼む。」


 氷魔は死んでしまったゴブリン2体を数秒見つめてから、ディレット達にスコップを渡し、返事を聞かずに焚き火の場所へ向かう。

 その後、アイテムボックスに入れていたホーンラビットの肉を焼いて、蒲田達に食べさせる。


 氷魔が周りのサイレン女と竹田が食べることに集中して、少し静かになったのを確認し蒲田から知っている情報を聞く。


 「………こんな感じだ。それにしても涼川、よく一人で生きてられたな。それに、他にクラスの皆は?」


 「いや。俺は最初から一人だったよ。」


 蒲田が持っていた情報は

1.蒲田が目を覚ました時にはバスの中いたこと。バスには運転手が1人、バスガイドが1人、担任の月波(つきなみ)先生が1人、クラスの連中が9人。約半数のクラスメイトがいなかったこと。


2.いなくなっていたクラスメイトの分も含めた荷物はバスの中にあり、クラスメイトのお菓子を含めた食べ物とバスに備えられていた保存食でいままで飢えをしのいでいたこと。


3.氷魔が最初に聞いたアナウンス?のようなものも、蒲田達は聞いていてステータスを確認していること。ただ、ゴブリンのような魔物には昨日から遭遇していて、魔物を倒してレベルが上がることに気づいたそうだ。


 このような些細な情報を聞いていた氷魔に向かって赤井が喋りかけてきた。


 「ちょっと。この2つの家ってあんたが作ったの?」


 「ん? あー、そうだな。ディレット達 ………ゴブリンに指示をだしながら俺のスキルで作ったんだ。こっちが俺ので、もうひとつがディレット達のだ。」


 「そう。なら、私達女子がこっちもらうわね。」


 「「「………」」」


 「なんで赤井がそっちなんだ。俺達男がそっちだろ。」

 「竹田こそ何言ってのよ!女子がこっちでしょ!」

 「なんだと!」


 赤井と竹田が急に意味のわからない言い争いを始める。これには、蒲田、沢田、陰屋、氷魔の4人とも呆れていた。さらに言い争いが強くなっていく様子に氷魔も黙っていられず喋りだすが、少々殺気が溢れていた。当然、殺気出ているなど氷魔は気づいていない。


 「お前ら何言ってんの?ふざけるのもほどほどにしろよ。」


 「「ヒッ!」」


 「お前ら何言ってるんだ!涼川に謝れ!

………人としておかしいぞ。」


 蒲田から叱られても、赤井と竹田は謝らずにはぐらかしていく。その姿を見ていた氷魔は、もうどうでもよくなり、赤井と竹田を無視しつつ蒲田と話を進め、とりあえず担任の月波先生と他のクラスメイト達がいるバスに向かうことに決まった。


 (こんなにあいつらがバカだとは思わなかった。念のため、まずは鑑定で全員のステータスを確認してから、月波先生と今後のことを話した方が良さそうだな。)


 一応の考えがまとまった氷魔は、配下の魔物を拠点に待機させるものと連れていくものに分けようとしたとき、タイミングよく食料を取りにいっていた魔狼とシャドウウルフが帰ってきた。そのときも、赤井(サイレン女)と竹田がうるさかったが無視して、蒲田達に俺の配下だと説明してすぐに食料をアイテムボックスにしまい、魔狼とシャドウウルフから現在の周囲の情報を確認する。


 「お前ら、周囲に変わったことはあったか?」


 先に魔狼達が返事を返す。

 《特になかったな。》

 《特に変化はありませんでした。せいぜい出会うゴブリンが減ったくらいでしょうか。》

 

 続いてシャドウウルフが

 《私たちも特には。》


 「そうか。それと、忘れてたが今後は名前をつけないと呼びづらいから、オスの魔狼がロシ。メスの魔狼がリル。シャドウウルフは、キディルだ。」


 とりあえず念話が使える魔物に名前をつけた

氷魔。それから、全体に指示を出す。


 「ディレット達ゴブリンは、全員拠点に待機。魔狼のロシグループもディレット達と一緒に待機だ。魔狼のリルグループとシャドウウルフ全員は、俺についてきてくれ。」


 指示を出し終えた氷魔は、蒲田の方を向いて話し始める。


 「それじゃあ、案内を頼めるか。蒲田。」


 「それはいいんだが。………そこのシャドウウルフ?とか言う魔物たちも一緒に来るんだよな?」


 「あぁ、もちろんそうだか。大丈夫だ。蒲田が

心配することにはならないよ。先生や他の奴らと会うときは、シャドウウルフたちには少し遠くにいてもらう。それに、あっちから襲ってこない限りは問題ない。」


 「わかった。その言葉とあいつらが馬鹿をしないことを祈っているよ。……それと、ここからなら2時間ほどでバスに着くと思うが、特に準備はしなくていいのか?」


 「大丈夫だ。これが今の完全武装だからな。」


 氷魔と話しが終わった蒲田は、4人のクラスメイトに声をかける。氷魔は、その姿を見ながら鑑定使って、それぞれのステータスを確認する。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る