第10話 異世界転移 再会
新たに魔狼をテイムしてから1週間がたった。
氷魔のこの1週間は、食料の調達、テイムによる戦力の確保、ジョブのレベル上げなど、転移してからの行動と同じようなことをしていた。
ただ、進展したことやわかったこともある。
1.拠点について。
氷魔は岩に錬成を使用して人一人分の穴を作り、そこを寝床にするという大雑把過ぎるものだったのだが。
今回は、氷魔の魔力が前よりもたくさんあり、あとのことを考えずに岩全体をいっきに錬成することができた。そのため、周りから見た場合はただの岩でも、中に入るとワンルーム程の大きさをもつ部屋に変えることができた。
部屋のなかは、乾いた木を床に敷き、前に干しておいた草をその上にのっけて、干し草の簡易ベッドがおいてある。
それと、川の近くに簡易拠点を作った。なぜかというと、ゴブリンを初めてテイムしたさいにゴブリン達が湖から離れた場所に住むところを作りたいと言っていたため、なら食料が取れ水も確保できる川に拠点を作ろうと氷魔が思ったためだ。
そのため、岩の拠点は現在入り口の穴を錬成でしっかりと塞いで、川の簡易拠点を現在の寝床にしている。
2.テイムした配下について。
こちらは、総勢20体の魔物をテイムすることに成功した。内訳は、ディレットを含むゴブリンが10体、魔狼は4体、そして新たにシャドウウルフが6体の20体だ。上位種などは、テイムに成功していない。
ちなみに現在念話が使えるのは、ゴブリンのディレット、最初にテイムした魔狼2体、シャドウウルフ1体だけ。
3.食料について。
ディレットに教えてもらった果物の他に、シャドウウルフと魔狼達のおかげでホーンラビットや猪、鹿、蛇などたくさんの肉を氷魔が狩りに出掛けずとも確保できている。
4.装備について。
いままではステータスを確認して装備などの数値がたされていたり、どういう装備をしているかなど、ゲームのように表示されていなかったので気づかなかったが、ふとしたときに装備に鑑定を使ってみると、装備の数値が表示されていた。
例として簡単ではあるが、剣(物攻+15)というふうに表示されてもいた。
「………あ~~、こっちにも干し草ベッドをつくって良かった~。前より全然いたくない。」
氷魔は、木で作った簡易拠点から体を伸ばして出てくる。その後、朝の身支度を整え、もう1つあるディレット達配下の簡易拠点に向かう。
「おーい。起きてるか?」
氷魔が声をかけると、ディレットが扉から出てくる。氷魔は、朝食の肉と果物を渡し今日の予定を話す。
「今日は休みにするから。ただ、あまり拠点から離れるなよ。もし行くときは、前に言ったゴブリン5体1チームで動けよ?」
《リョウカイデス。》
ディレットの返事を聞いた氷魔は、自身の拠点付近にある焚き火の場所へ向かい、朝食をとってから、最近日課にしている訓練をする。
「今日も操縛糸の訓練と剣の素振りだな」
現在の氷魔は、操縛糸を改良して使っている。前は、指輪部分からワイヤーが延び、先端には他の魔鉱石で作った穂をつけていただけだったが、新しい操縛糸はかなりコンパクトになっている。
それは、訓練しはじめの時に魔力を多めに流したら固くなったりするかと実験してみたところ、とんでもなく伸びていったのだ。この魔翠石の伸びる性質がわかってからいろいろと実験すると、魔力操作で流す魔力が増えただけ伸び、強度も上がることがわかった。
そのため、今では指輪部分からのばしているワイヤー部分を鎖の形に変え。鎖の長さを指の先端までの長さにし、以前と同じ先端の穂の部分を同じようにつけている。
装備していた操縛糸とアイテムボックスに入れていた操縛糸の5本改良して、新しく10本の改良型操縛糸を作った。
訓練の成果もあって、現在では両手に2本ずつ操縛糸をつけ、ベルト付近には左右3本ずつ装備している。
「セッ!ハッ!」
氷魔が振っている剣も改良はしているが、操縛糸のように大きな改良はできていない。
「ふぅ………朝はこれくらいでいいな。
この1週間いろいろと急ピッチで作業させていたから、あいつらにも休みは必要だろう。まぁ、食料をとってきてもらう魔狼やシャドウウルフには悪いが、あいつらが一番食べるからな。」
氷魔のアイテムボックスには、ある程度の食料が入っている。だが、余裕があるわけではないし、魔狼やシャドウウルフがよく食べるため、狩りにいかせている。
それに、魔狼は元々が狼で狩りが得意であり、シャドウウルフは魔狼より少し小さいが素早く狩りができ、黒い毛並みなため、木の影や夜の闇に紛れて狩りをすることがより得意らしい。
そのため、申し訳ないが魔狼やシャドウウルフに休みはない。
氷魔は、焚き火の所においてあるイスに腰をかけるとステータスを表示する。
「あ~、1週間は建物や色々作る方をしてたけど見てないだけでまぁまぁ変わったな。」
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涼川 氷魔
人族 17歳 男
ジョブ
1.錬金術士(異) Lv.6 2.テイマー Lv.5
3.条件を満たしていません。
能力値
体力 220/220
魔力 380/380
物攻 22
物防 22
魔攻 20
魔防 20
素早さ 27
保有ステータスポイント:64
スキル
・錬金術 Lv.1・錬成補助(簡易武器) Lv.1
・錬成補助(簡易防具) Lv.1
・テイム Lv.1 ・テイム確率上昇 Ⅰ Lv.2
・テイム時強化 Ⅰ Lv.10
・念話(テイムした生き物限定) Lv.1
保有スキルポイント:10
称号
・神の遊戯者
・神の少しの加護
・技神の加護(瞳)
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「ステータスポイント64。……今のところは、レベルアップごとに16か。スキルポイントが13…?……
…あ~なるほど。これがあの神様が言ってた遊戯参加者特典か。Lv.6からは、1ずつしか増えないのか。」
いろいろとひとりごとを呟きながら、ステータスをいじっている氷魔。
(スキルポイントは新しいスキル、融合に振るけど。ステータスポイントは、どうするべきか。)
氷魔がこの世界に来てから戦闘や生活をするなかでステータスの能力値についてある程度のことがわかり、さらには技神の加護(瞳)のおかげでステータスがよりしっかりと確認することができた。
簡単に言うと、体力の最大値が高ければ持久力も上がって疲れにくくなったり、攻撃を受けてもステータスの体力が残っていれば、ダメージを軽減してくれる。
魔力は、精神的な強さの補正といったもので、魔力が限界までなくなったりすると、体がダルくなったように感じたり、気を失ったりするようだ。
物攻は筋力に補正がつき、地球では5キロのダンベルを持てるぐらいの筋力で10キロや100キロのダンベルを持てたりする。それと単純に敵の体力と物防の補正を打ち破るのに絶対的に必要なもの。
物防は、体力のダメージ軽減の補正の他により強く敵の攻撃から身を守るためのもの。
魔攻はシンプルに、魔法などで敵を攻撃をした場合に補正がかかる。
魔防は、物防の魔法版。
素早さは、足の速さや瞬発力、さらには動体視力など動きに関しての補正がかかる。
このような感じで説明が出ていたが、より詳しく説明が出ていたわけではないため、氷魔は神様が急ごしらえで作った説明だろうとわりきってステータスポイントをふっていく。
「最初はこんな感じかな?」
物攻と物防と素早さに+20ずつ割り振っていき、ステータスポイントを4だけ残す。さらに、スキルポイントで融合を獲得すると融合の説明と通知のようなものが目の前に表示される。
*融合:魔力を使うことで、テイムした同じランクをもつ魔物を掛け合わせて、新たな種族や上位種、変異種などを誕生させることができる。ベースとなる魔物の記憶をそのままに素材となる魔物の記憶や経験を蓄積できる。
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魔物のステータスにランクが追加で表示されます。これは、特定のスキルを持つものに適用されます。
ランクが高ければ高いほどより強力な魔物ということになります。
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「へぇー。よりゲーム感が増したな。…
…それに、スキル欄に新しくユニークスキルの表示が追加されて、そこに融合があるな。
レベル表記もないから結構良いスキルなんだな。」
周りを確認する氷魔。すると、テイムしたゴブリンが川にいたため鑑定を使うと、ランク・1 とステータスに追加されていた。
「やっぱり、ゴブリンは1か。……昼飯の時にでも魔狼やシャドウウルフのランクを確認して、融合を使ってみるか。」
すると、急にゴブリンが騒ぎ出す。
「グギャギャ!?」「グギャガ!!!」
「どうしたんだいったい。……ディレット!どこにいる?」
氷魔は、ゴブリンの声がした方から見えないように隠れて、ディレットに声をかける。すると、ディレット達配下の家からディレットと4体のゴブリンが出てくる。すぐに氷魔を見つけたディレット達は、氷魔に近づいてディレットが念話で喋りかける。
《イマノコエハ、シュウゲキノヨウデス》
「ディレット。他のもう5体は一緒に行動していたか?」
《キョテンノチカクダト、バラケテイルカモシレマセン。》
「そうか。なら俺が様子を見て戦うかいったん退くか考える。お前達は、俺の後ろについてこい。行くぞ。」
訓練のあと装備をはずしていなかった氷魔は、ゴブリンの声がした場所へ隠れながら動ける速度で素早く向かう。
(ここで戦うことはあったがいつも魔狼やシャドウウルフが見つけていた。襲われるのは初めてだが、俺のゴブリンはテイムしたことで他のやつより知能やステータスがやや高い。それがあんなに騒ぐなんて。)
今も聞こえてくるゴブリンの声に近づいていき、木に隠れながらゴブリン達を見てみると、汚れた格好をしたクラスメイトだった。
氷魔はやられそうになっているゴブリンの近くにいるクラスメイトに向けて、すぐさま操縛糸に魔力を流して拘束するように動かしながら、戦いを止めるために木の影から飛び出す。
「やめろ!こいつらは敵じゃない。」
氷魔は配下のゴブリンとクラスメイトに向けて声を出す。
「涼川っ!うわっなんだこれ!クソッ!」
「体に絡みついてきやがる!」
「とりあえず全員動くな!……お前達は後ろのディレットに合流して、ディレットを連れてこい。」
ものの数秒でクラスメイト2人を拘束した氷魔は、配下のゴブリンに指示を出してクラスメイトの方を向く。
指示を出している際も、拘束されたクラスメイトの騒ぎ声が聞こえるが、氷魔が睨むと少しだけ大人しくなる。
「今から拘束を解くから、その場から動くなよ。わかったか?」
「わ、わかった。」
氷魔は2人の拘束を解きながら2人の後ろにいた3人。合計5人のクラスメイトに話しかける。
「やっぱりお前達もここに飛ばされたのか。」
氷魔は、厄介なことになったと思いながらこれからのことに考える。
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