第9話 異世界転移 3日目 夕方前~
「え~と、とりあえず使ってみるか。ほら、これで体を直せ。」
氷魔は1番怪我の少ないゴブリンに回復ポーション(初級)を渡して、飲むように指示する。ゴブリンは指示されたようにポーションを飲みほす。すると、擦り傷やかすり傷の場所がほのかに光り、光がおさまった時にはきれいに傷が癒えていたのだった。
「へぇー。こんな簡単に治るのか。ポーションってすごいな。……さっそく、全員分のポーションを作ったあとに、ここにある癒し草をあるだけ採取しないとな。」
錬金術のレシピがあるため、10分とかからずに全員分のポーションを作って、ゴブリン達に配っていき、ちゃんと飲むように指示する。
(こんなに簡単に作れるなら、後で採取した癒し草を全部ポーションにしてもいいかもな。)
ゴブリン達が全員ポーションを飲み、怪我が癒えたのを確認して、氷魔は全員に指示を出していく。
「ディレットと偵察ゴブリンは、俺を手伝ってくれ。他のみんなは、周囲の警戒を。
………ディレットと偵察ゴブリンには俺の手伝いをしてほしいんだが、この草、癒し草を根っこを抜かずにとってほしい。あとで短剣渡すからこんな風に………切って、採取してくれ。」
ディレットと偵察ゴブリンに癒し草の採取のしかたを教え、短剣を渡してから、氷魔は黙々と癒し草を採取していく。この一帯の癒し草をすべて採取すると、ポーション換算で合計30本分の癒し草を採取できた。
(これだけあれば、何かあったときに対応出来るな。…………あれ、これってフラグではないよな?……うん、ないな。ないったらない。)
「よし、そろそろ拠点に戻るぞ。帰りも同じ隊列で行く。魔狼もさっきと同じように先頭を頼む。」
川の確認、食料の調達、近くの地形の確認を終えて一段落した氷魔は、拠点に戻っていく。だが、川と拠点の中間に位置する場所で、魔狼が報告する。
《主。ゴブリンが複数体でこちらに近づいてきます。》
「どれくらいの距離で、正確な数はわかるか?」
《いえ、もう少しで見えると思いますが、ゴブリンは臭いが強く、詳しい数は複数としか…》
「よし。ゴブリン達は作戦通りの位置に。
魔狼達はディレット、こいつの隣に物攻の高いお前が。俺の隣に報告をしてくれたお前がついてくれ。最初はお前達魔狼に俺が指示を出すが、戦闘になったら各自判断して行動してくれ。」
氷魔の説明が終わり、少しすると目視でわずかに確認できるようになる。すぐに氷魔は操縛糸を操りつつ念話で魔狼に指示を出す。
《お前達は森に隠れていろ。俺が行けと声に出して指示を出すまで待っているんだ。
わかったな?》
魔狼達は首をかしげるが、すぐに氷魔の指示通りに森に隠れる。魔狼達が森に隠れてすぐに、敵のゴブリン達が氷魔達に気づき、近づいてくる。
氷魔はアイテムボックスから剣を取り出しつつ鑑定で敵のステータスを確認する。
(ただのゴブリンが5体でLv.2~Lv.6とばらばら。特に目立った個体はいない。………! こいつらは初めて見たな。)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ゴブリンリーダー(ゴブリンの1段階上の上位種)
Lv.12 男
能力値
体力 130/130
魔力 10/10
物攻 20
物防 20
魔攻 0
魔防 10
素早さ 15
スキル
・悪食
・統率 Ⅰ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ゴブリンファイター(ゴブリンの中で攻撃的な性格を持つ、1段階上の上位種。)
Lv.10 男
能力値
体力 130/130
魔力 10/10
物攻 21
物防 15
魔攻 0
魔防 10
素早さ 15
スキル
・悪食
・闘争本能
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(上位種はテイムしたいな。それに、この数なら強化された魔狼のいる俺たちが負けることはないな。)
敵のゴブリンリーダーが声をあげると、全員がばらばらに走ってくる。
(ずいぶんと大雑把な指揮だな。俺もそうなんだけど。)
「………行け!魔狼!」
盾持ちのゴブリンと敵のゴブリンが戦闘する前に、氷魔が声をかける。すると両側の森から、魔狼がゴブリンに向かって走っていく。当然、素早さが強化された魔狼が先にゴブリンと戦い、続いて物攻が強化された魔狼が戦闘に混ざる。
氷魔はディレットに声をかけ、一緒に上位種を攻撃する。
(ゴブリンリーダーはゴブリンファイター以外の面子で魔狼と戦い始めているし、ゴブリンファイターはこっちの盾持ちのゴブリン1体とやりあってるな。)
「ディレット!盾持ちのゴブリンが戦っているところに加勢する。相手はお前の格上だ、気を付けろよ。」
《ハイッ!》
氷魔は走りながら左の操縛糸でゴブリンファイターの頭を狙うが、こちらに気づいたゴブリンファイターが余裕をもって後ろに回避する。氷魔とディレットが盾持ちのゴブリンと合流してすぐにゴブリンファイターが突っ込んでくるが、前にいるゴブリンが盾で防ごうとする。しかし、ゴブリンファイターの体当たりで吹き飛ばされる。そこをディレットが槍で攻撃するが、ゴブリンファイターは避けたうえで、殴りかかっていく。氷魔はすかさず左右の操縛糸で頭などの上半身を攻撃しつつディレットに念話で攻撃を指示する。ディレットは氷魔の指示に従い、頭に向けて攻撃をすると、避けたゴブリンファイターの足元に氷魔が操縛糸を操って絡めとり、拘束する。
「ちょっと手こずったな。あっちはどうなった?」
目を向けた先にあった光景は、魔狼がゴブリンを蹂躙し終わり、現在、ゴブリンリーダーが必死にガードしている光景だった。
魔狼が前に言っていた、ゴブリン5体は倒せると言っていたことはテイムで強化される前のため、氷魔が考えていた想定よりも全然違っていた。
「うわぁ~、これはすごいな。」
氷魔はゴブリンファイターを絡めとって拘束している左の操縛糸をそのまま、ゴブリンファイターごと浮かべて、魔狼達の所に向かっていき、声をかける。
「その辺でいいぞ。」
魔狼が攻撃をやめてすぐに、右の操縛糸で拘束しつつゴブリンリーダーにテイムを使うが、失敗する。
「えっ?ダメ?じゃあこっちはどうだ。」
続けてゴブリンファイターにもテイムを使うが、失敗する
「どっちもダメか。上位種だから欲しかったんだけどな。」
氷魔は拘束したゴブリンの上位種を手に持っている剣で止めをさす。
そのあと、ディレットと偵察ゴブリンに短剣を渡して、ゴブリン達の魔石をとってもらい、魔石をアイテムボックスにしまってから拠点に向かって進んでいく。
「そろそろ夕方になるから、さっさと帰ろう。」
氷魔の言う通り、そろそろ夕方になる時間帯。戦闘のあとは、何事もなく拠点に帰ってこれた。ディレット達に夕食の魚と果物を渡し、魔狼の分も焼くことを頼んだ氷魔は、まず初めに昨日の切り倒してそのままにしていた木を錬成させにいく。その後、木を錬成し終わったあと、自身も自分の焚き火のする場所に向かっていき、焚き火をして夕食をとる。
「!……この魚、美味いな。アイテムボックスの時間が進まないから、多めに魚を確保してもいいかもな。」
食事を終えた氷魔は準備体操をして、アイテムボックスから剣を取り出しつつ焚き火から少し離れた場所にいき、素振りを始める。
上から下に振る、降り下ろし。
下から上に振る、切り上げ。
右上から左下に振る、袈裟斬り。
左下から右上に振る、右切り上げ。
右から左に水平に振る、左薙ぎ。
左から右に水平に振る、右薙ぎ。
左上から右下に振る、逆袈裟斬り。
右下から左上に振る、左切り上げ。
30分ほど体を動かした氷魔は、剣などの装備をアイテムボックスにしまい、焚き火近くからシャツをとって、湖で体をきれいにする。
「さっぱりしたな。……そういえば、湖の鑑定でみれない項目があったけど、技神の加護でみれるようになったのかな?〈鑑定〉」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
名も無き湖
生物は住んでいるが、魚などの小さい生物のみ。毒をもっているものはいない。飲料水として飲める。
魔物はこの湖に近寄ることはない。なぜなら微精霊がいるため。微精霊は湖を破壊することをしなければ危害を加えることはない。微精霊によって水が浄化され続けている。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「微精霊。流石は異世界。精霊なんているんだな。」
湖で体をきれいにした氷魔は、シャツをもとの場所に乾かして、そのまま寝床に行き、寝てしまう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます