第3話 異世界転移 2日目


 朝日がのぼり、拠点に日の光が射し込む。


 「うん~~………………ん~~。いつの間にか眠ったのか。それにして、体が痛い。

やっぱり、何か対策をしないとな。……喉が渇いたな、確かコップにまだ水があったはず。〈アイテムボックス 〉 え~と…… まだ残ってるな。ごくっごくっ。……ふぅー。」


 水を飲み、一息ついた氷魔は立ちあがり、枕にしていた学生服の上着を着て、湖に向けて歩き出す。

 湖につくとひとまず顔を洗い、コップに水をくみ、アイテムボックスに入れる。そして、昨日焚き火をしたところに向かい、石のブロックに座った。氷魔はまだ眠い目を擦りながら、周りを見渡し、特に変化がないのを確認して、アイテムボックスから、昨日焚き火で焼いたあと、食べていないホーンラビットの肉を朝食として食べる。食べ終わると、アイテムボックスからコップを取り出し、水を飲んで今日のことに関して考え始めようとしたが。


 「今の時間は、7時ぐらいなのかな? ……ごくっごくっ………あっ。そういえばレベルアップするときって、頭に何かお知らせ的なものが聞こえるのか?」


 氷魔はふと気になった。昨日はゴブリンと戦ったあと、湖を見つけ、簡易的に拠点作り、ホーンラビットの解体、武器と防具と道具の作成など、いろんなことをしなければいけなかったため、ステータスを開いていない。もし、ゴブリンと戦ったあとに、レベルアップのお知らせがなかったらレベルアップの恩恵をつかっていないことになる。嫌な予感はするが、ステータスを表示させる。


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 涼川氷魔

人族 17歳 男

ジョブ 1.錬金術士(異)Lv.2 2.テイマーLv.2 

3.条件を満たしていません。

能力値

体力 170/170

魔力 340/340

物攻 14

物防 14

魔攻 13

魔防 13

素早さ 19

 保有スキルポイント:6


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 「やっぱりかよ!そういうことは、ちゃんと説明しろよ!ああ~~もう!…………とりあえず確認しよう。」


 ステータスの上から確認していく。ジョブが2つともレベルアップしているが、錬金術士(異)は、スキルの錬金術を使ったためレベルアップしたのか、ゴブリンとの戦闘でレベルアップしたのかは、わからない。だが、テイマーのレベルアップは、確実にゴブリンを倒したことによるものだと思われる。そのため、錬金術士(異)もあれだけ、スキルの錬金術を使ったのに同じレベルだということは、ゴブリンを倒したことによるレベルアップと考えて問題はないはずだと氷魔は考えた。

 次に、体力などの数値に関して、錬金術士が魔力を使うジョブだからなのか、魔力、魔攻、魔防の数値は、他の体力などと比べてすこし多く増えていた。


 「今のところ、テイマーはわからないことがあるが、錬金術士(異)に関しては魔力系ってことだな。まぁこれで、保有スキルポイントはジョブレベルが上昇するときにもらえるってことがわかったな。スキルポイントがレベル毎に同じ数もらえるかはわからないが、これで新しいスキルとスキルレベルを上げられるな。」


 氷魔はさっそく錬金術士(異)のスキルツリーを開く。錬金術の次にとれるスキルは3つ。錬成補助(簡易家具)、錬成補助(簡易武器)、錬成補助(簡易防具)、これらはパッシブスキルと表示されている。パッシブスキルという表示をタップすると、説明が表示された。


 *パッシブスキルとは、スキルを常時発動し続けるタイプのスキル。パッシブスキルの他には、アクティブスキルがあり、アクティブスキルとは、スキルを声に出したり、頭で思い浮かべて任意で発動するタイプのスキル。


 氷魔は続けて新たな3つのスキルの説明をみるため、タップする……が、説明は一切表示されなかった。


 「えっ!嘘だろ。…………説明無しで選ばないといけないのか。しっかりしろよ!神様。はぁ~………スキルの名前だけで推測するしかないのか。」


 氷魔は気を取り直して、テイマーのスキルツリーを開いた。テイマーも錬金術士(異)と一緒で新しいスキルは3つ。テイム確率上昇 Ⅰ、テイム時強化 Ⅰ、この2つはパッシブスキルと表示され、念話(テイムした生き物限定)はアクティブスキルと表示された。


 「なるほど………どうするべきか。テイマーのスキルは名前的に、持っておいた方がテイムがしやすくなったり、強化されたりするんだろうな。念話がどれぐらい役にたつかわからないけど、命令して返事がわからないとテイムしてもうまく使えるかわからないしな。……………よし、今回はテイマーのスキルを3つ全部と錬金術士(異)の簡易武器と簡易防具の2つを取ろう。」


 氷魔はスキルツリーを操作し、錬金術士(異)の錬成補助(簡易武器)、錬成補助(簡易防具)を獲得し、続いてテイマーのスキルツリーを操作し、テイム確率上昇 Ⅰ、テイム時強化 Ⅰ、念話(テイムした生き物限定)を獲得した。これにより保有スキルポイントが残り1になった。

 氷魔は獲得したスキルをタップし説明を表示させる。


 *錬成補助 (簡易武器):錬金術のスキル、

 錬成を使用し武器の類いを作る場合、錬成の補助を行うスキル。武器関連の知識を知らなくても勝手に補填してくれる、知識系スキル。スキルレベルによって、より重要な知識を補填してくれる。

Lv.1だと、ちょっとよくなるくらいしか、効果が出ない。


 *錬成補助(簡易防具):錬金術のスキル、

 錬成を使用し防具の類いを作る場合、錬成の補助を行うスキル。防具関連の知識を知らなくても勝手に補填してくれる、知識系スキル。スキルレベルによって、より重要な知識を補填してくれる。

Lv.1だと、ちょっとよくなるくらいしか、効果が出ない。


 *テイム確率上昇 Ⅰ:スキルのテイムを使う場合に効果が出るスキル。魔物や動物、生き物をテイムするときにテイム確率を上昇させるスキル。相手の能力や状態に関わらず、少し上昇させる。スキルレベルをあげても劇的に変わらない。テイマーとして一般的なスキル。


 *テイム時強化 Ⅰ:スキルのテイムを使う場合に効果が出るスキル。魔物には、知能向上や一部のステータスを少しだけ上昇させることができるスキル。ただ、一部のステータスは、テイムするときにランダムで強化される。動物や生き物には、ステータスがないので、効果は少し体が丈夫になったり、頭が賢くなるぐらい。スキルレベルを上げることで、一部のステータス上昇量を上げられる。

Lv.1だと、一部のステータスを3上昇する。


 *念話(テイムした生き物限定):テイムした生き物と声に出さず会話ができる。ただ、知能が低すぎる生き物は、念話が出来ない。

スキルレベルによって、知能の低い生き物でも念話ができるようになる。

Lv.1だと、同じ生き物同士で会話ができる生き物の中でも、知能が高めの個体だと念話が可能。


 「こんな感じなのか。錬成補助の方は、簡易って書いてあるから、より効果が高いスキルがあるはずだし、テイマーのスキルも Ⅰ とか同じ感じだから、スキルツリーがもっと進めば、いいスキルが獲得できるんだろうな。………それに、スキルポイントがあと1ポイント残ってるんだよなぁ~。」


 氷魔はもう一度スキルツリーを開いてみる。すると、錬金術士(異)とテイマーの両方とも枝分かれしたスキルが灰色に染まっている1つのスキルに線がのびていた。なぜ枝分かれしていないのか疑問に思い、灰色のスキルをタップしてみると、


  [条件のレベルまで上がっていません。

条件をクリアされたときにまた、スキルツリーの枝分かれが始まります。]


 と錬金術士(異)、テイマーの両方とも同じ表示がでてきた。氷魔は、詳しい条件がわからないため、考えるのをやめた。とりあえず新しく獲得したスキルとはじめから持っていたスキルを見比べて、スキルポイントをどれにふるか、悩んでいた。現状では2つの道に別れる。錬成補助のどちらかのスキルレベルを上げて、自分を強化する道。テイマーのどちらかのパッシブスキルのスキルレベルを上げて、手駒を増やす道。


 「よし……まずは、テイマーのジョブスキルを優先的に育てて、錬金術士(異)のスキルは後で少しずつ育てる方向にしよう。そうと決まれば、テイム確率上昇 Ⅰかテイム時強化 Ⅰ のどっちにするかだけど……昨日のゴブリンのステータスが低かったから、テイム時強化 Ⅰ にするか。Lv.1でもどれか1つの能力が3上がるからな。Lv.2に上げてより強化出来れば、戦力としてかなりうれしいからな。」


 テイマーのスキルツリーを開き、テイム時強化 Ⅰをタップして、強化と表示されたので強化のボタンを押す。するとステータスには、Lv.2と表記された。続いて強化したスキルをタップしてみると、


 *Lv.2になったので一部のステータスをランダムで6、強化されます。


 と一部の表記が変わった。氷魔はとりあえず、ステータス整理が終わったので、アイテムボックスから、防具と武器を取り出す。そして錬成をして、素材をブロックにしたりして、もう一度錬成を使って武器と防具を作成し直す。地味で面倒な作業ではあるが、新しいスキルの効果で少しでも良いものができ、身の安全を守れるのならと、自分に言い聞かせて作業を進める。1つ発見だったのは、魔岩石は防具にするときに魔力を使ったため黒くなったが、防具からブロックにしてもやはり色が変わらなかったことだ。魔岩石は1回でも魔力による手を加えると色が戻らないことがわかった。

 防具や武器を全部錬成し直したのでかなり時間がかかってしまい、そろそろ10時ぐらいの位置に太陽が来てしまった。とりあえず防具を身に付ける。

氷魔は水分補給をしながら、短剣を腰に挿しておくためのホルダーを昨日の学生服の上着から切った残りの布で作り、ベルトに取り付け短剣を装備した。他には、石と魔鋭石混ぜて斧を1つ、水を入れておくための水瓶を石で2つ、氷魔が使っている500ミリリットルの石のコップを追加で2つ作り。水瓶とコップに湖の水を入れ、アイテムボックスにしまう。


 「今日は寝床の改善のため、木を切り落とすことと、ご飯の調達を優先で。あとは、操縛糸の練習に、テイムを使って配下となる仲間を増やすこと。……とりあえず30分くらいゆっくりしてから森に行きたいから、その間に操縛糸の練習でもするか。」


 操縛糸を操作するため、操縛糸を両手に1個ずつはめる。錬成のスキルを使っているときに感じた、お腹の中から両手に流れだす魔力の流れを自分で再現する。はじめは根本が動くだけだったのが、10分ほど練習をしていると、かなりスムーズに操縛糸のワイヤー部分が動くようになり。30分ほどで、焚き火の周りに置いていた石のブロックを持ち上げることまでできるようになった。氷魔は錬成のスキルで、イメージを頭に思い浮かべるのが前よりもうまくなったことで、こんなに簡単に魔力操作ができるようになったのだった。

 さらに緊急離脱の練習のために、森の近くまで行き、木の枝にワイヤー部分を巻き付け自分を引っ張ろうとしたら軽々と自分を木の枝の上まで引っ張ってこれたのだ。さらに、魔力で操縛糸を操作しているためか、指輪の部分には、ほとんどの負担がなかったのだ。


 「いやぁ~すごいなこれ!……ただ、操縛糸は片手で1本ずつなら操作できそうだけど、右手で剣とか持つと左手しか使えないし、槍は基本的に両手持ちだから操作が難しいな。…………そうだ、ワイヤーの先端に槍の穂の部分を魔鋭石で作って、取り付ければいいのか!それなら、魔翠石に混ぜるわけじゃないから柔軟性と魔力伝達の特性を消さなくてすむ。よし!さっそくつくって、休憩を終わりにしよう。」


 氷魔はすぐに槍の穂10センチメートルの物を魔岩石と魔鋭石を合わせたかなり良いものにして錬成をすると、魔岩石の防具と違う色になった。


 「今回は濃い緑色になったな。 いい感じじゃないか?」


 新しく作ったものを操縛糸の先端に錬成で取り付け、ちゃんと取れないか引っ張ってよく確認して、予備の操縛糸3個をアイテムボックスに入れ、残りの2個を両手の中指にはめる。

 このあと森に入って、食料を調達するために、ステータスと装備を確認する。まず、防具は魔岩石で作った、胸当て、籠手、脛当。武器は魔翠石で作った操縛糸を両手に1個ずつはめて、予備の武器として短剣を腰に挿している。

 次にステータスを見てみると、


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体力 170/170

魔力 297/340

物攻 14

物防 14

魔攻 13

魔防 13

素早さ 19


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 魔力が意外に減っていたので、操縛糸を使っていると魔力が減るのか、10分程ステータスを表示させながら、操縛糸を操っていたが、魔力が減ることはなかった。それに魔力操作で操縛糸を操れるようになったが、ステータスに新しいスキルとして、獲得したわけではなかった。


 「これで一応は、準備できたな。再度森に行きますか!」


 氷魔は森に向かって歩きだした。昨日とは違いやる気に満ちているのは、装備のお陰だろう。


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