第2話 異世界転移 1日目 夕方~


 開けた場所が見えてきた氷魔は、すぐに近くの草影に隠れて、開けた場所を確認する。すると、そこには見えているだけでも25メートルプール6つ程の湖が見える。念のために鑑定を使いつつ、周りを見渡すが、鑑定になにもひっかからなかった。そのため、氷魔は木の影からでて、湖も鑑定する。


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名も無き湖

 生物は住んでいるが、魚などの小さい生物のみ。毒をもっているものはいない。飲料水として飲める。

 魔物はこの湖に近寄ることはない。なぜなら〇〇〇がいるため。〇〇〇は湖を破壊することをしなければ危害を加えることはない。〇〇〇よって水が浄化され続けている。


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 森の木の場合は

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〇〇〇〇

 魔力を含んでいる木。素材として使える。

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 鑑定は出来ているが、わからないこともある。鑑定は称号の加護で獲得できているため、レベルを上昇させることが鑑定の能力をあげることかもわからない。ただ、湖は魔物や毒をもっている生物がいないため、今後の森の生活では、かなりうれしい場所だ。氷魔は湖の周りに目を向けると。


 「うおーーっ!巨大な岩だ!これなら拠点として使えるかもしれない!ここで拠点を構えられたら、最高だ!」


 巨大な岩に向かう。岩の周囲を観察していくと、特に目立ったヒビや、魔物や動物の痕跡は素人にはわからなかった。それに念のためにと、岩に鑑定をかける。


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 特に変わったところもない、普通の岩。


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 鑑定に何か特別な説明がないため、魔物がやってくる森側ではなく、湖側の岩の側面に手をあて錬金術の錬成を使い、石のブロックを錬成していく。


 そうすることで、岩をくりぬいていき簡易拠点をつくる。出入り口を人1人分の大きさにし、中の広さを横になれるような大きさに作っていく。


 出入り口付近は、岩から作ったブロックを出入り口から少し離した所で壁として使う。出入り口は寝るときに、出入り口の下から半分ほどの高さまでブロックを積むことにしようと考えていた。


 拠点の出入り口に作った壁の、あまりの石のブロックを使い、スコップなどの道具や武器をつくっていき、特に欲しかった槍を複数つくる。魔物と戦うために距離が有利となる槍は最初から氷魔は欲していた。それが叶い、氷魔は嬉しそうに錬成を使用していき、出入り口付近の壁と道具に使った残りのブロックを、道具と一緒にアイテムボックスにしまう。

 

 「こんなものかな。短剣だけ腰のベルトにひっかけて、槍やスコップなどは、アイテムボックスに入れておこう。……取り敢えず、湖で体の汚れを落とすのとホーンラビットの解体。それに、湖に何かあるか確認しないとな。」


 氷魔はまず最初に、湖の周りを少し観察しながら歩く。すると、3種類の色が違う小さな石を見つける。氷魔は気になりそれぞれに鑑定を使用する。


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魔鋭石 (まえいせき)

 魔鉱石の一種。魔力を含み、刃物によく使われる。所々白い、灰色の魔鉱石。

 普通の鉱石に混ぜてものをつくると、一段と鋭さ、切れ味が増す。

 刃物を研ぐことにも、使用される。

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魔岩石 (まがんせき)

 魔鉱石の一種。魔力を含み、鎧などによく使われる。茶色の魔鉱石。

 魔鉱石の中でも固さに特化している。普通の鉱石より硬いため、加工をするには魔力を使用しなければ加工できない。

 魔力を使って加工するため、加工者の魔力と魔岩石がうまれた場所の周囲の魔力によって、色が変わる。

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魔翠石 (ますいせき)

 魔鉱石の一種。魔力を含んでいる特に貴重な魔鉱石。淡いエメラルドグリーンの魔鉱石。

 魔鉱石の中でも柔軟性と魔力伝達に優れている。魔翠石を他の鉱石と混ぜると、柔軟性と魔力伝達が悪くなるため、柔軟性と魔力伝達の特性をうまく使いたいなら他の鉱石とは混ぜられない。魔力操作がうまければ、自由に動かすことも可能。

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 「………めっちゃレア物っぽいじゃん。この湖は当たりだな。魔鋭石は、武器に混ぜて使ったり、砥石としても使えるな。なにより魔岩石は色が変わるから、くじ引きみたいで楽しみだな。……だけど一番は魔翠石かな。魔翠石をワイヤーみたいに加工して操れたら絶対有用だろう!戦闘では距離のとれる槍を使おうと思ったけど、こっちのほうがいいかもな。よし、魔翠石は特にあるだけアイテムボックスに入れておこう。…それにしても、マジでアイテムボックスいいな。」


 アイテムボックスは頭で思い浮かべるだけで手元に物を出せるが、ステータスと同じように、タッチパネルの一覧表で表示も出来る。アイテムボックスの一番上に[?]マークがあり、そこを押すとこのような説明が表示される。


 *アイテムボックスは、ステータスの最大魔力量によって大きさが変わります。魔力量が仮に100だとすると最低でも約10メートルの立方体に物をしまうことができます。アイテムボックス内の物は、接触すること、時間が進むことはありません。ただし、生き物をいれることは出来ません。

 アイテムボックスにしまう時は、手で触れ収納と考えるだけで声に出さなくても、しまうことができます。

 アイテムボックスから取り出す時は、取り出したいものを頭で思い浮かべたり、一覧表から選んだりすることで取り出すことが出来ます。スキル保有者の半径10メートル内であれば、任意で取り出せる。


 このように、アイテムボックスは別空間に収納するスキルである。

 それから氷魔は見える範囲でできるだけ魔鉱石を集め、かなりの量の魔鋭石、魔岩石、魔翠石を集めることができた。短剣を錬成で石のブロックに戻し、魔鋭石と混ぜて短剣を再度作成。残っている魔鋭石のうち少しを使い、小さい砥石を作成し、そのあとに砥石で短剣の刃をたてる。


 そのあと、湖と森の間にいき、スコップで穴を掘りホーンラビットの解体を始める。


 ただ、初めての解体のためやり方がよくわからず、まず石のブロックで大きめのまな板をつくりその上で足と頭を短剣で切断。足を穴の方に向けて血抜きをし血が流れていかなくなったところで頭を穴に捨てる。

 次にホーンラビットの毛皮に肉がつかないように、剥いでいく。そのあと、魔石と内臓をとり、内臓を穴に捨て、スコップで穴を埋める。ホーンラビットの肉を食べやすい大きさに切り、湖でホーンラビットの肉と毛皮と魔石、ゴブリンの魔石、解体に使った短剣とまな板を一緒に洗い、アイテムボックスにしまう。


 そこで氷魔は魔石に鑑定を使い忘れていることに気づく。


 「気持ちが悪くなって、鑑定するの忘れてたな。よく異世界ものの本には、魔道具に使うらしいけど、どうなんだろな。…取り敢えず、ゴブリンとホーンラビットの魔石をとり出して、〈鑑定〉 」


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魔石

 魔物の保有魔力量によって大きさ、色が変わる。魔力によって魔物の強さが変わるため、より大きく、より色が鮮やかな程、価値が高い。

 魔道具などいろんなことに使われる。

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 「成る程、じゃあこのゴブリンやホーンラビットの魔石は、親指の爪程の大きさしかないし、色も赤黒いから、弱い部類ってことか。」


 氷魔は、魔石の確認を終わらせて、アイテムボックスにしまう。そのあと、自分の周りを見渡し、危険がないことを確認して、学生服をアイテムボックスに入れ、湖で体の汚れを落とす。そのあと、シャツで体の水滴をふき、シャツ以外の学生服を着る。シャツは湖で洗い、アイテムボックスにしまう。


 「ふぅー。すこしすっきりしたな。あとは岩の拠点で作業をして、飯を食って寝るか。」


 氷魔は50メートルほど離れた場所で湖にある大きめの石で、500ミリリットルのコップを錬成で作成し、水を飲む。


 「あぁ~~うまい!……緊張してたから、喉が渇いたことに気付かなかったなぁ。」


 コップに再度水を入れ、アイテムボックスにしまい、岩の拠点に戻る。

 岩の拠点で氷魔は錬金術を使い、石の槍と剣に魔鋭石を混ぜ、再度作成。

 氷魔は周りが暗くなってきたことに気づき、焚き火をするため魔鋭石と小さな石で火打ち石を作成した。


 「<カン、カン>……よし!ちゃんと火打ち石のように火花が出てるな。」


 氷魔は出入り口の壁よりすこし離れたところに石のブロックを椅子として置き、スコップで焚き火をする場所から草をどかし、地面をならす。そのあと、アイテムボックスから10本程の枯れ木を出し、大きめの枯れ木に溝をほり、燃えやすそうな繊維っぽい木に火打ち石で火をつける。そして、溝をほった枯れ木に火を移し、焚き火が消えないように数分程、管理する。


 「うまく火がついたけど、地球だと絶対つかないよなぁ~、こんな簡単に。……やっぱり異世界の木がつきやすかったのかな?まぁいいか。着きやすい方がいいしな。」


 氷魔は石を錬成で串とハンガーもどきにする。アイテムボックスからホーンラビットを取り出し、串に刺す。そして、石のブロックを焚き火の周りに隙間を空けて置き、ホーンラビットを刺した串の両端を石のブロックにのせて焼く。そして、焚き火からすこし離した所に石のブロックを積み、アイテムボックスから濡れたシャツを出し、ハンガーに掛けて乾かしておく。


 「これでいいな。肉が焼けるまで、他の鉱石で武器や防具を作るか。」


 氷魔はアイテムボックスから、魔翠石と魔岩石を取り出す。魔翠石は、大きめの指輪にワイヤーのような物を付けた新武器を5個、作成。魔岩石は鎧として作成しようとしたが、なかなかの重さなため、部分的に防御できる胸当てと籠手と脛当を作成した。


 「槍と剣はまぁまぁいい感じだな。なんといっても、この魔翠石の新武器はカッコいいな!後で練習しよう。……あとはこの魔岩石の防具だな。今回は、俺の魔力と合わさると黒くなるんだな。とりあえず防具を固定する物を作るために、上着の腰付近を切るか。」


 氷魔は防具を固定するために、学生服の上着を短剣で切る。切り取った服と魔岩石で防具を固定するベルトを作成し、防具に取り付ける。防具からベルトが外れないように、よく確認して着てみる。そのついでに、魔翠石の新武器も一緒に装備する。指輪をはめ、指輪から延びているワイヤーをとりあえず籠手に巻き付ける。


 「おぉー!いい感じだな。これなら、動きをあまり阻害しないものだから、活動するときには必ず着ないとな。……ただ、新武器はもうちょっと工夫しないとな。あと新武器だと呼びづらいから、なんか考えないとな。う~~~ん…………とりあえず安直だけど、操縛糸 (そうばくし) とでも呼んでおくか。」


 さらに魔鉱石を、ある程度のブロックに錬成してアイテムボックスにしまい、残っている石のブロックをほとんど使い、出入り口の下から半分ほどの大きさになる壁を錬成する。

 すると、<パチパチッ>という音がなる。


 「おっ。そろそろ、肉が焼けたかな?」


 氷魔はホーンラビットの肉を確認する。表面がしっかりと焼けたため、手で肉を押すと程よい弾力があり、中にまで火が入っている事がわかる。


 「いい感じだな。よし!いただきます!

ん~~、うまい!味付けしてないのにしっかり味がする。臭みもなくて食べやすいな。異世界ものの本だと、煮込み料理がおいしいんだったよな。今度は調味料を調達して、煮込み料理を作りたいな。」


 アイテムボックスから水を取り出し、食べ進める。ホーンラビットの肉を3分の1程食べ、満腹になり。氷魔は周りと空を見て、かなり暗くなってきたことを確認してから、着ていた防具と武器と出していた道具をアイテムボックスに片付け、学生服だけになった状態で拠点の中に戻る。そこは真っ暗になっているが、ここに焚き火の火を持ってくると確実に酸欠になるため、真っ暗のまま上着を脱ぎ、枕にして横になる。


 「……ホーンラビットの毛皮はきちんと処理できなかったから、下に敷くにも変な感じだしな。…明日はできれば木を倒して、錬成で寝床に必要なものを作るかな?あとは、どう…する……か…………スゥー……スゥー……」


 氷魔は馴れない森を歩き、周りから魔物や獣に襲われないように気を張っていたため、すぐに寝てしまった。



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