第21話 東部の防衛線

 王宮に着くなり朱音は案内の女性(メイドさんかな?)を全速力で振り切って飛び込んで見えなくなった。


「魔法を使わずあの走力ですか……」

「筋力にボーナスが入ってるっぽいからね」


こっちの世界に来て自分は異常とも言える魔法の才が与えられたのだから朱音に常軌を逸した剣術とそれを彼女で可能にする能力が与えられるのは考えられる。


(こっちはこっちでやる事するか~)


自分の任務的に移動中の貴族たちを転進させないといけないので鳥型のゴーレムを作った。

 『国境に転進せよ』という命令と何となくの地図で集合場所を描いた紙を鳥の首に結び付けて飛んで行ってもらった。大体の方向は合ってるはずなのであとは小鳥たちを信じるだけだ。


 残念なことに自分は馬を一人でさばききれないのでアレスさんの背中にしがみついて集合場所に移動する。朱音は皇女様と一緒に乗馬を練習してたからそれに混ぜて貰えばよかったと後悔してます。こんど教えてもらお。


 しばらく進み、集合場所よりもかなり手前で川を挟んで睨み合っている一団に合流した。


 「蒼殿!申し訳ありません、我々だけで奴らを押し返すことが出来ず……」

「大丈夫ですよ。下手に突っかかっていくと全滅するかもしれませんからね」


後ろから戦場を眺めながら本陣が置かれているであろうテントに入ったが、見たところ数では劣勢、遠距離武器も銃対弓でまあ不利だろう。

 それでも何度か攻撃を仕掛けたのか怪我人が少々いるようだ。

 取り敢えずこのラインを守り抜いて援軍を待つことにして嫌がらせの意味で夜中に時々岩を川に投げ込んだり、火球を敵陣の放り込む事にした。

 結果として鳥から伝令を受け取った2人が合流して数はそろえることが出来た。

 だが……


「さっさと奴らを引き潰して王国まで侵攻すればよかろう‼」

「侵攻するかはどうでもいいが、そもそも目の前の敵を蒼殿頼りにならん討つ方法を考えねばならんだろうが‼」


どうも反りの合わない二人が釣れたようで中々話し合いが進まなかった。

 最初に防衛線を張ったのがヴィンチ伯爵と言う方らしく、いがみ合っているのがニヘア侯爵とメイヘ侯爵と言うらしい。知らない子ですね。


「魔術師の力を使えばいいだろう!そのために陛下はこいつを送ったのだろうから」

「貴様。蒼殿は正式に準公爵の爵位を受けておられる。その方に対する態度という物があるだろうが」

「ふん、所詮アンナ殿下の子守りをさせるために与えただけだろう。そもそもこいつの爵位に正当性が全くない」


ニヘア侯爵はどうやら俺が気に食わないらしく、「さっさと魔法で片付けろよガキ」ぐらいのテンションでいる。

 確かにそのために来たのだが、こいつに言われて動いたとなると嫌だなぁって気もする。


(どうしたものか……)


サクッと終わらせて朱音を手伝いに行くのは難しそうだ。

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