第20話 剣士の出陣
宮殿の正門で蒼と別れて、案内を振り切ってアリアノールさんに会いに行った。
「こんにちはー!」
「わー‼びっくりした‼……どうしたんだい?」
ちょっと早めの昼食中だったようで驚かせてしまって申し訳ない気持ちになったが、やる事もあったので謝罪の気持ちを飲み込んだ。
「皇帝陛下として私に反乱軍鎮圧の指揮権をくれませんか?」
「それは蒼君の中立の姿勢を崩すことになるんじゃないのか?」
「確かにそうかもしれないですけど、私は別に中立じゃないし、関係ないですよ」
あれは蒼が私を思って(?)勝手にやってるだけだからね。公式が勝手に言ってるみたいなもんだよ。
「まあ、それで本人がいいならいいだろう。汝に鎮圧部隊指揮権を与える」
「感謝します。それじゃあもう行くんで!」
「お、おう。気を付けてな」
「はーい、行ってきます」
久々に行ってきますなんて言ってちょっとテンションが上がった。
小走りで宮殿の入り口に戻ると案内役で振り切った兵士さんが涙目で「良かった~。戻ってきた~」とつぶやいたのち、厩舎に案内してくれた。
よくよく考えると私が唐突にいなくなるとこの人が怒られる可能性があったんだなと少し反省した。後悔はしていない。
厩舎の前には整然と雄々しい軍馬の手綱を握りしめた近衛騎兵が並んでおり、そんな彼らの前には一般の兵のものよりも白く、まるで陶器のような鎧を着た白百合のみんながいた。
「……ついてくるの?」
「足手まといになるつもりはありませんし、皇女の存在は部隊の正当性を示す最たるものだと思いますよ」
正直驚いたが、自分で騎士団を組織しちゃうような皇女様が大人しくするはずも無いかと思いもした。
私たちの会話が一段落したところで少し豪華な甲冑の人が前に出てきて跪いた。
「近衛兵第一騎兵隊20名、陛下の命により朱音様の指揮下に入ります。ご命令を」
かなりドキドキした。
さっきまでアンナに危ないから待っておきな的なことを言っていたのに、いざ本職の人に指示を出すとなると震えてきた。
しかし、自分で「大軍の指揮権をくれ」なんて言いに行って、20人にも命令が出せないとなると拍子抜けもいいところだろう。
覚悟を改めて決めてなるべく威厳たっぷりに胸を張った。
「最速で鎮圧部隊と合流し、即座に討つ。精鋭たる近衛兵の力を見せつけろ!」
「はっ‼」
かなり胆力を使い果たして膝が笑っているが、初めてそれっぽい命令を出したにしては及第点だと思いたい。
一人で馬に乗るのは若干危ない感じだったのでアンナの後ろに乗せてもらうという格好のつかない感じになったが出発の準備はできた。
「前へ、進め‼」
ちょい速足ぐらいで復興作業中の帝都の大通りを抜けて郊外の草原に出た。
「各員最速で走れ‼」
確かに最速で合流とは言ったが、この速度は騎兵突撃かな?と勘違いされるだろう。
結局、馬の都合に合わせながら4時間ぐらいぶっ続けで移動して新要塞に向かう一団に合流できた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます