第16話 帝都攻防戦①

 宮殿が包囲されたという報が入ってくると流石に予想外だったのか、集まった貴族は混乱していた。

 この戦いを傍観する立場であったなら、これは非常に良い手だと拍手喝采だっただろうけど、残念ながら当事者なので感心することしかできない。

 皇帝派の貴族が一堂に会している宮殿を包囲すれば、作戦は兵士までは伝わりにくくなるし、もし臨時に指揮をする人が決まっていても判断が遅れることは想像に難くない。

 しかも運が最大限味方すれば最小限の被害で帝都を確保し、自分たちの正当性を示すことが出来るかもしれない。


(考えてるな……、神陽会の入れ知恵かな?)


相手さんには間違いなく神陽会という外部組織がバックについている。

 目的はわからないけど銃を与えたということは参謀的な役割をしている可能性は十分にある、気がする。


 色々と考えたが取り敢えず占拠されている区画を奪還する必要がある。

 部屋の窓から見る感じ貴族の屋敷がある区画とその一つ外側の商業区画は占拠されてて、一般の人が暮らしている居住区画は絶賛攻防中という感じっぽい。煙がモクモク上がってるからね。


「……敵の数は?」

「はっ!合わせて200強はいると思われ、全員が筒状の武器を携帯しております」

「宮殿に突撃してきてるか?」

「いえ、門の正面に三重の陣を張り実質的に門を確保されている状況です」

「なるほどね。報告ご苦労様」


 いきなり質問しだしたからか部屋は静まり返ってしまった。変な汗をかきそうな空気だが我慢して堂々とする。


「何をするにしてもまずは帝都を押さえないといけませんから。貴族の皆さんはもう一回作戦の確認でもしておいてください。帝国軍で宮殿にいる者は戦闘準備をして正門前に集合せよ」


一瞬俺が指揮するのは良いのか考えたが、こんな時に文句を言う奴もいないだろうと思ったのでそのまま発言した。後でアリアノールさんに皇帝お墨付きの権限を貰っとかなきゃ。

 ポカンとしている貴族を放置して、ポカンとしている兵士に発破をかけて、イマイチ何をすればいいのか分からないという顔の朱音のところに向かった。ぜひ安心してほしい。俺も何すればいいかあんまり分かってない。


「朱音は皇女様と陛下の護衛をよろしく」

「任せなさい‼」


そういうことなら得意です!と両手を腰に当てて胸を張っていた朱音の顔が少し曇った。


「気をつけてね」

「問題ないよ。俺が実際に前に出るわけじゃない。安心して任せなさい!」


多少不安ではあるが今はその不安を表に出すべきではないと思った。


(さてと、英雄っぽくカッコつけて行こうかな)


部屋から出て考えている作戦で大丈夫かと考えながら集合場所に向かった。

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