第15話 分裂の表面化

 エヴェラルド閣下が魔導銃を自分の私兵に人知れず導入しようとしていることが判明し、個人的な警戒度が上がった日から数か月が経ち、ついに要塞が完成し常駐する部隊の編制・配置も完了したことで本格的な運用が始まった。

 建築作業が終わったら完全に手を引いてしまおうと考えていたのだが、中々そういう訳にもいかなくなった。

 北部領主を中心とした貴族が帝都の屋敷を家族と一緒に引き揚げて行ったのだ。

 帝国貴族は帝都と自分の領地にそれぞれ家を持つことが定められており、人質的な意味を込めて帝都の家には身内から1人以上が常にいることも定められているらしい。

 その決まりを破って全員帰っていったので「爵位剥奪も含む対応をするぞ」と書簡を送るも無視。

 結果としてエヴェラルド閣下は国賊扱いとなり、資産の没収・領地の奪還を行うための遠征の準備が始まり、しれっと俺と朱音も参加することになっていた。


(まあ、ここまで来て中立ですってのも無理か……)


 正式に反旗を翻した者たちの爵位を剥奪する決定が下された日。

 実際にどうやって軍を動かすかの作戦会議が宮殿で行われた。

 帝国軍が皇帝家直轄の国防組織としてあるのは確かだが、実際に戦闘になった時には各貴族の私兵を使うらしい。

 個人的にはここで決まったことを自分たちの領地に持ち帰って、どこかで再集合して、進軍すると言うのは時間がかかりすぎるんじゃないのかと思っていたのだが、


 「――では、二週間を目安に新しく建設された要塞に兵を集め、そこから二つの部隊に別れて州都を奪還する。各員奮起し逆賊を討て」

「必ずや全ての帝国領土を陛下にお返しすると誓いましょう」


会議自体は全員集まってから確認作業で一時間足らずで終わり、アリアノールさんの許可が下りたことで実際に行動が始まった。

 よく考えればあれだけバチバチやり合っていたんだから実際に衝突した時用の作戦は事前に用意してるよね。

 後は自分たちはどう動こうかと聞きに行こうとしたときにいきなり扉が開け放たれ、かなり傷の入った鎧を着た兵士が飛び込んできた。


「ご無礼をお許しください。報告します。国賊エヴェラルド・ミナーダク並びにリアン・クレーモラの屋敷より多数の兵士が現れ、第一区画を占拠。宮殿を包囲するように展開しています」

「なんだと⁉」


こうして先手を打たれる形で帝国内戦は見えない影の戦いから、目に見える戦いに姿を変えた。

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