第14話 魔道具と教会

 案内されるがままに歩いて行くとかなり重厚な扉で閉ざされた部屋に案内された。

 中に入ると明らかな違和感に襲われた。


(なんだろう?気持ち悪いな)


何かがおかしい感じがするのだが、何がおかしいのかがイマイチ分からなかったので開いていた席に座らせてもらった。


 「今日の定例会には蒼殿も来ている。その知見を吸収し各部隊運用に行かしてほしい」

「「はっ‼」」

「蒼殿もご自由に発言してくだされ」

「分かりました」


この会自体は月一で指揮官クラスが集まって、担当する事案について話し合う物らしい。

 領兵は警察組織的な側面を持つとのことなので結構大事な会議だと思うのだが俺いていいのだろうか?

 ざっくりと報告が行われて、意見交換が一通り終わると自然と閣下に視線が集まった。

 ……俺はいまだに何もしていないのだが?


「報告された事案について各部隊で連携しつつ早急に解決せよ」


圧倒的な定型文感を醸し出す言葉を言い終わると閣下は席を立って壁際に立てかけられていたケースを俺の方に持ってきた。


(?)

「さて、ここからは蒼殿にも意見していただきたいのだが……」


そう言って箱を開けると中にはこの世界に似合わない、長物が入っていた。


「――これをどこで」

「帝国の東部に広がるトオニス王国で最近勢力を強めている神陽会という宗教団体が作っている物で魔導銃と呼ぶのですが、反応からするにご存じでしたかな」

「いいや、知らない。だが、分かるな」

「言葉が崩れているぞ、魔術師」


貴族としての言葉遣いなんて気にしていられないほどの衝撃だった。

 俺がこの世界には無い物で、伝えるべきではないと思っていたものがここにあるのだ。

 そして違和感にも気が付いた。

 この部屋に火が無いのだ。

 この世界の明かりと言えば火なのだ。

 だがこの部屋の明かりはランタンの中に光の球が浮いていて、それが部屋を照らしているのだ。


「……あの明かりも神陽会とか言う奴らの物なんですか」

「ええ、彼らは魔道具の制作を行っているのです。その品は非常に画期的で、教祖を名乗る隻眼の少年は神よりアイデアを受け取ってそれを作っているそうですよ」


それが本当ならその神様はさっさとプロメテウスよろしく最高神的な存在に起こられて欲しいものだ。


 「さて、これを試験的に一部隊に装備させる。試験運用であるため人目に付かぬ場所で実際どのように使うのが良いかを検討する」


閣下が席に戻って言い終えるとその視線は俺に向けられた。


(銃の集団運用について教えて、ってことだろうけど教えていいのか?)


気が乗らない。

 だけど「中立でいます。だからこれの使い方を教えられません」と言うには皇帝派に深く関わりすぎてしまった気もする。


(二股なんてするもんじゃないな……)


 少し考えた結果教えることにした。

 机の上に置かれたこいつを見る限り半自動小銃とか言う奴に近いものだと思う。

 この世界の戦い方は知らないけど、電話とか無線機を使っているのを見たこと無いから戦線を作って睨み合う物ではないと思う。

 となると現実的な使い方はやっぱり中世風な感じになるのだろうか?

 自分なりに色々考えて、後日自分の知っている運用方法を数通り紙に書いて送る事を約束してその場を後にした。


 「――神陽会か。気になるな」

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