第12話 蒼の魔術師
要塞建設のGOサインが出たことで軍務院では建設従事者選定やら、建設材の選定で忙しいのかしばらく我が家に来る人が少ない日が続いた。
とは言え皇帝命令で「手伝え」と言われているので暇では無かった。
この世界には無い星形の建築という概念を建築を本職にする人に伝えてちゃんとした設計図を書いてもらわないといけなかったのだ。
最初の頃は「何でこんな気持ち悪い建物を描くんじゃ!」と言われてしまったが、ちゃんと理由つきで説明したら渋々ながら理解してくれたらしく、後日完成版の設計図が届いた。
さらに数日が経ってアレスさんに顔を出しに行くと数人で頭を抱えていた。
「どうされたんです?」
「蒼殿でしたか。建材運搬用の馬車を調達するのに手こずっていまして」
苦笑いする大人たちの真ん中に置かれていたのは帝都にある商会の名簿とおそらく借りられる馬車の数だと思われる数字が書かれた紙だった。
「足りないんですか?」
「そうですね……。騎兵の馬に牽かせてもいいのですがそうすると訓練に支障をきたすので」
(それは全然足りてないんじゃね?)
どのぐらい要るのか分からないが大変だなと思っていると頭を抱えていた一人がハッとしてこちらを見てきた。
(こっち向くんじゃねえ)
「蒼殿の魔法でどうにかなったりしませんか」
「……なるかも?」
一瞬考えた結果、行ける気がしたので実際に事を起こすことになった。
翌日、アレスさんと一緒に馬車に揺られて帝都近くの森にやって来た。
「――これを運ぶんです」
「かなり大きいですね……」
森の小川のほとりには木こりが切り出してきたのであろう丸太が置かれていた。大体二十mぐらいかな?
これを馬車なり人力なりで運ぶのは気が遠くなるほど大変そうだ。
「じゃあやってみますか」
今まであんまり生活の中で実戦投入されることのなかった魔法を今ここで!
この世界の魔法は呪文を唱えてドーン!ではなく、イメージを練ってドーン!らしい。……なにいってんだ俺。
とはいえイメージを共有したり具体化するために魔導協会なる組織が共通の呪文を制定しているらしい。軍人なら知っておかないといけないんだろうけど俺には関係無い!
「〈
ポツポツと単語を並べながらイメージを固めて行くと体の中から”何か”が減っていく感覚と共にイメージしたものが現れた。
「お、成功かな」
「このサイズのゴーレムを短縮詠唱で……。流石蒼の魔術師と呼ばれるお方ですね」
「褒めても何も出ないですよ」
しかも敢えてつまらないことを言うなら二つ名として定着している蒼の魔術師なんて名前はアリアノールさんが考えたものだし、実力と名前が合って無かったらどうしようと震えてた時期もあったんだぞ。
「じゃあこいつらに担いで運んでもらいましょうか」
「それでお願いします。本当にありがとうございます」
いえいえ、と手を振って答えたのち、意識からゴーレムを外すと巨大な氷の塊は消え去った。
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