第11話 玉華会議の対立
アレスさんとの話し合いから三週間後、宮殿の大広間に帝国中の貴族たちが集まっていた。
「これより臨時の玉華会議を行います。議題は軍務院主導の要塞建築についてです」
オーレンシア帝国での最終決定権は皇帝にあるのだが、皇帝の暴走を防ぐために貴族の意見を伝える場として玉華会議がある。
この会議はミナダーク家、アスラン家、クレーモラ家、そしてハースモシュ家の帝国四公爵と呼ばれる貴族の誰かが求めれば開かれる物で今回はエヴェラルド閣下が反対の意を伝えるために開かれた。
そして俺たち異世界出身者二人も公爵位相当という扱いなので参加させてもらっている。
「此度の要塞建築は本当に必要なのですかな?」
最初に口を開いたのはエヴェラルド閣下だった。
そもそもこの要塞の裏の目的は帝国北部で領土を接するミナダーク家とクレーモラ家の主要街道を監視することだから当たり前といえば当たり前だ。
閣下は皇帝派が並んでいる方を向いて口を再び開いた。
「北部の街道は我々ミナダーク家とクレーモラ家が責任をもって管理しているのだ。わざわざ新たな要塞まで建てて監視する必要があるのかを聞いているのだ」
「そうだ!」「おっしゃる通りだ!」
一息つくとターン交代だと言わんばかりにホロズ閣下が一歩前に出た。
「建築予定地は二つの州都の中間点にあり、北部での有事の際に大規模な軍事行動に時間のかかる防衛の薄い場所だ。そこにあるということに意味がある要塞だと考えるが」
「その通りだ!」「まさしく!」
野次も収まるとアリアノールさんがつぶっていた目を開いた。
「蒼はどう思う」
(そう来るよねえ……)
正直なことを言うならば「知らねえよ」なのだがそういう訳にもいかないだろうからちょっとだけ話すことにした。
「帝国を通る道はまさしく帝国の動脈であり、それを管理するのは皇帝家であるべきと考えます。であればこの件以外でも陛下が気になる道があるのであればそこに兵を置くのは当然の判断かと」
「なるほど、皆の意見は理解した」
それっぽく受け答えをするとアリアノールさんは近くに控えさせていた使用人さんから紙を受け取ってサインした。
「此度の建設に許可を出す。また、この要塞の設計に蒼が多分に関与したと聞く。作業に手を貸してやれ」
「かしこまりました」
本音を言うなら「めんどくせえ」だが手伝えるところは手伝いたいと思っていたのでちょうどいいかもしれない。
アリアノールさんが部屋を出ると参加していた貴族たちも帰っていった。
以外だったのはエヴェラルド閣下がイライラして帰るのかと思いきや顔色を変えずにこちらにやって来たことだ。
「蒼殿はあちら側に与するのですかな」
(なるほど、確かに気になるかもね)
今日の発言だったり要塞への関わりからして「こいつ敵じゃね?」と思うことは普通のことだろう。
「私は片方に付くことは致しません。私はあくまで陛下の杖ですので」
「なるほど。ではこちらで何かあれば相談させていただくかもしれません」
「はい。その時はよろしくお願いします」
「では」
好感度は下がったかもしれないけど仕方ない。だって、
(要塞とか、カッコいいじゃんか)
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