第9.5話 剣士の仕事
その日もいつも通りアンナや白百合のみんなと剣の腕を磨いていた。
この世界に来て度々困ったことがあったのだが、そのほとんどをアリアノールさんや蒼が捌いてくれたので私はほとんど何もしていない。
このままではまずいなと思っているところにアンナが白百合騎士団に勧誘してくれたので二つ返事で飛びついた。
以来、家の裏庭か宮殿の中庭で近衛騎士さんに時々見てもらいながら訓練している。
太陽が真上に来て熱くなってきたので少し休憩することになり、横目で蒼の方を向くと横に立つ執事のリストスさんと談笑しながら何かを飲んでいた。多分白湯だろうね。
休憩を終えて再び訓練を初めてしばらく経つと何かを思い出したように蒼が家を飛び出していった。
「どうかしたんでしょうか?」
急いでるなーと思って眺めているとアンナが心配そうな顔でこちらに歩いてきた。
「大丈夫だと思うよ。たぶんどっかに忘れ物してきたーぐらいの用事だよ」
「そうですか」
アンナには適当を言ったけどちょっと気になったのでさっきまで話していたリストスさんを捕まえて蒼の要件を聞いた。
「蒼様は”何もしてない”とおっしゃって宮殿に向かわれました」
「なるほど。何もしてないか……」
そんなこと無いのになと思ったのがバレたのかリストスさんも若干困ったような顔をしていた。
「蒼様は知っている限りでも魔法を学び、貴族の相手をし、我々使用人の相手をしてくださっています。これで何もしていないと言われてしまうと、我々などいないに等しいですね」
「そんなこと無いです。いつも助かってます」
私は本当に助けられている。
アリアノールさんに使用人さん達、そして蒼に。
私はまだ何もできない。
だからいつか”何か”が出来るようにする。
それが今の私にできることなんだろう。
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