子猫ちゃんはそれを我慢出来ない

アほリ

子猫ちゃんはそれを我慢出来ない

 パシャっ!パシャっ!パシャっ!パシャ!パシャっ!パシャっ!パシャっ!パシャっ!パシャ!パシャっ!パシャっ!パシャっ!パシャっ!



 「おおっ!!か、かわいいいいいーーー!!!!!!それ!!それだよー!!」


 子猫のマミイは大小無数のゴム風船が飾られたステージの中に座らされて、カメラマンにパシャパシャと写真に録られていた。


 子猫のマミイは、猫雑誌の表紙を飾る事になったのだ。



 ・・・全く何度写真を撮られりゃ気が済むんだろ・・・?


 ・・・こちとら、好きで『可愛い子猫』してるんじゃないわよ・・・!!


 CMやドラマに引っ張りだこのタレント猫を母猫だったマミイにとって、このまま『親の七光り』でモデル子猫になったのは、肩身が狭く感じられた。


 ・・・うちの母ちゃんが有名猫の『ルミネ』だったから、その道のプロかも知れないけどねぇ・・・?


 ・・・全く一緒にしないでよ・・・?!


 ・・・私は遊びたいのよ・・・!!


 ・・・こっちは、周りの風船をじゃれて突いて飛ばして割って思う存分遊びたいのよ・・・!!


 ・・・うちのママがテレビでどんな愛想を振り撒いたか、テレビを見なくても解るけどさあ、『尊い』イメージを振り撒いたんでしょうし・・・



 ・・・あーーーー!!飽きた飽きた飽きた飽きた飽きた・・・!!



 「ふわぁ~~~~~~~!!」


 突然、突発的に子猫のマミイ大あくびをした。


 「あっ!可愛いっ!!尊いっ!!子猫のかあくびこそ!世界で1番萌える!シチュエーション!!」


 パシャっ!パシャっ!パシャっ!パシャ!パシャっ!パシャっ!パシャっ!パシャっ!パシャ!パシャっ!パシャっ!パシャっ!パシャっ!パシャ!パシャっ!



 カメラマンは、退屈過ぎて大あくびをした子猫のマミイをすかさず写真を撮りまくった。


 ・・・やっぱり、突発的はアドリブをいかすのが女優猫たるプロ魂の血筋ね・・・


 子猫のマミイは、タレント猫のルミネに子猫モデルに抜てきされた時に言われた事を思い出した。


 ・・・・・・



 「女優は『運』よ!『運』!!『運』が味方するからねっ!!」



 ・・・・・・



 「はい!!休憩!!」


 ・・・はっ・・・!!


 子猫のマミイがついウトウトと眠気が襲ってきた時に、撮影の小休止が入った。


 「風船!!風船!!風船!!風船!!」


 突然、頭にスイッチば入ったように、子猫のマミイは飾りの風船にじゃれつこうと必死に後ろ足立ちして、前足の肉体にフワフワと浮いている風船に触れようとした。


 「あーー!ダメダメダメダメダメダメ!!風船に触らないのっ!!『めっ』でしょ!!」


 子猫のマミイが所属している動物プロダクションのスタッフに、子猫のマミイを抱き抱えて控え場所の猫つづらに連れていかれた。


 ・・・なにするのよっ・・・!!


 ・・・尊い『役』のレディにこの扱いなのっ・・・?


 子猫のマミイは、猫つづらの前に用意された子猫用キャットフードを食らいながら、不機嫌そうにプンプンとふくれた。


 やがてスタジオの休憩が終わり、再び慌ただしくなった。


 「セットチェンジしよう!!」


 「よーし!風船の数を増やそう。子猫のマミイちゃんが、もーーーっと尊くなるように風船の飾り付けは派手にしよう!!」




 ぷぅ~~~~~~~~~~!!


 ぶぉぉぉぉぁ~~~~~~~~~!!


 ききゅぅぅぅぅ~~~~~~~~!!


 しゅっ!!しゅっ!!しゅっ!!しゅっ!!しゅっ!!しゅっ!!しゅっ!!


 猫つづらでひと休みする子猫のマミイは、耳にひっきりなしに風船にヘリウムガスを入れたり、ポンプや電動ブロワーで膨らます音が聞こえてきたとたん、目がキラキラと輝いてときめき髭をヒクヒクさせて興奮した。


 「風船!!風船!!風船!!風船!!」



 ドキドキドキドキドキドキドキドキ・・・



 ぱぁーーん!!



 「うにゃっ!!」


 「ビックリした?マミイちゃん。ごめんね!!こらっ!!風船を割るなよ!!子猫はナイーブなんだから!!」


 スタジオのスタッフのマミイを宥める声とは裏腹に、割れた風船の破裂音を聞いたとたんに興奮に拍車がかかった。


 「風船!!風船!!風船!!風船!!」


 「マミイちゃん出番だよー。」


 ・・・うにゃ・・・?


 動物プロダクションに抱き抱えられて、夥しい数に増えたカラフルな風船の中に設けられた、子猫のマミイのポディションに移動させられた。


 「じーっとしてるんだよ!!名優ルミネちゃんの娘でしょ!マミイちゃん!!」


 母猫のルミネの名前を聞くと、子猫のマミイは不思議に落ち着いた。


 ・・・そうだよな・・・私は名猫ルミネの娘・・・


 ・・・『尊い子猫』を演じる子役女優・・・


 子猫のマミイに『女優』スイッチが入った。


 パシャっ!パシャっ!パシャっ!パシャ!パシャっ!パシャっ!パシャっ!



 「さあ、花のバルーンアートの前に寝そべって!!よーし!尊いよーー!!」



 パシャっ!パシャっ!パシャっ!パシャ!パシャっ!パシャっ!



 「今度は、風船の束を見上げて!!よーし!マミイちゃん可愛いね!!可愛い!!」



 パシャっ!パシャっ!パシャっ!パシャっ!



 「今度は風船の花畑を見詰めて!!マミイちゃん!!超天使!!」



 パシャっ!パシャっ!パシャっ!パシャっ!パシャっ!パシャっ!



 カメラマンの指示通り、いっぱいの風船の中で子猫のマミイの頭のスイッチがコントロールが支障がきたしてきた。


 ・・・風船・・・風船・・・風船・・・風船・・・風船で遊びたいのよお・・・こんなにいっぱい風船が目の前にあるのに・・・風船・・・風船・・・!!


 「はい!今度は風船の上に俯せになってね!!はーい!爪立てないでぇーー!!爪立てたらパンクしちゃうからねぇーー!!

 はーいマミイちゃーん!!尊いねぇーー!!」



 パシャっ!パシャっ!パシャっ!パシャっ!パシャっ!



 「風船!!風船!!風船!!風船!!」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・


 風船に身体が触れたとたんに、子猫のマミイの女優スイッチが遂に狂い、風船へのフォッサマグナがどんどんどんどん抑えきれなくなってきた。

 鼻の穴が興奮でパンパンに孕み、髭がピクピク動き、尻尾がピンと立ち、目を見開き、身体がプルプルと震えた。

 子猫のマミイの興奮


 「風船!!風船!!風船!!風船!!嗚呼、風船!!風船!!風船!!

 風船で遊びたーーーい!!

 ふうせーーーーん!!」


 肉体で触れていた風船に、爪が思わず飛び出した。



 ぱぁーーーーーーーん!!



 「うにゃーーーーーー!!ふうせぇーーーーーーーん!!!!」


 子猫のマミイは、風船を爪で割ったとたんに『尊い子猫』を演じていた『子役心』が吹っ飛び、目の前の見渡す限りの風船という風船にハイボルテージになり、風船の海に飛び込んだ。


 「うにゃーーーっ!!ふうせぇーーーーーーーん!!!!」



 ぱぁーーーん!!ぱぁーーーん!!ぱぁーーーん!!ぱぁーーーん!!ぱぁーーーん!!ぱぁーーーん!!ぱぁーーーん!!ぱぁーーーん!!ぷしゅーーーーーーーーー!!ぱぁーーーん!!ぱぁーーーん!!



 「な、何してるの!!マミイちゃん!!あーーあ!!風船をこんなにも台無しにしちゃって?!」


 「あーーー!!せっかく苦労してセットした風船の飾りがーー!!」


 動物プロダクションのスタッフと撮影スタッフは、興奮して装飾の風船をパンパン割りまくる子猫のマミイに頭を抱えた。


 「いいぞ!!マミイちゃん!!これ!!これだよ!!お茶目なマミイちゃん!!

 尊いー!!尊いぞ!!割れーーー!!マミイちゃん!!もっと風船を割れーー!!」


 「か、カメラマンさん!!何言ってるんだよ!!」


 カメラマンは何を思ったか、どんどん割っていく風船の破片の中で更に割りまくり、すっかり全部風船を割ってキョトンと座ってる子猫のマミイの姿の写真を狂ったようにパシャっ!パシャっ!パシャっ!パシャっ!と撮りまくった。


 「これぞ、剥き出しの無邪気な子猫の姿。何て尊いんだ。

 『尊さ』を求めて小道具として風船をいっぱい使って飾ったけど、こんな子猫の姿の『尊さ』が出せて正解だった!!

 結果オーライってとこだな。」


 ・・・やっぱり、突発的はアドリブをいかすのが女優猫たるプロ魂の血筋ね・・・


 そんな親猫のルミネの言葉が、身体を風船の破片まみれの子猫のマミイの脳裏に巡っていたが、マミイはいっぱい思う存分風船で遊んだ余韻に浸っていた。


 「あー、楽しかった!!風船まだある?あったら、膨らませて!!ごろごろごろ・・・」


 子猫のマミイは、割れた風船の山の撤収作業に入るスタッフ達に身体をすり寄せてゴロゴロと甘えた。


 その後、この風船と戯れる子猫のマミイの写真がきっかけで名が売れて有名になり、マミイは『風船好きのマミイ』と呼ばれて成猫になっても大人気のタレント猫になったという。




 ~子猫ちゃんはそれを我慢出来ない~


 ~fin~


 


 











 



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子猫ちゃんはそれを我慢出来ない アほリ @ahori1970

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