2021_0615

「私の名前、知らないでしょ」


課題のレポートを出しに職員室に向かっている最中、そんなことを言われた。

実際、知らなかった。苗字は知っているけれど下の名前を知らない。

ものすごく困った。ここで他人に興味がなさすぎるのもだめだなぁと感じた。


「名字が河合っていうことは知ってるけど…」

「やっぱり。」


「私は河合杏だよ、朱里ちゃん。」


「河合ちゃん、私の名前は知ってくれてるのにごめんね」


初めてクラスメイトに名前を呼ばれた。逆に、私も初めてこの女の子、『河合杏』ちゃんを名前で呼んだ。

急に距離が縮まったような気がした。


「あ、名字で呼ぶんだ」

「河合ちゃんの方が呼びやすい気がして」


「私は、朱里ちゃんって呼ぶね」

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