2021_0525

美術の授業だ。学校の敷地内で自由に場所を決めて風景を描くのだが、私一人だけみんなとは離れた場所で描いていた。


体育教師がこっちに来た。どうせ話しかけてくるんでしょ?声を突然出すのはあまり好きではないから話しかけないでほしい。そう願っていると案の定話しかけてきた。


「すごい変わった場所で描くね。みんなと同じところに行けば?」


「えっ。」


特にこの場所にこだわりはないが、言葉を失ってしまった。

もっと体育が嫌いになってしまいそうだ。なぜお前の価値観を押し付けてくるんだ!

心の中で叫んだ。


その感情をグッとこらえ、ここで絵を描きたい理由を絞り出す。

「でももうここまで書いちゃったんで…」


今日は風が強い。セットした髪の毛もきっとグシャグシャだろうから、目を合わせて話せない。

きっと今の私は、この教師からすると弱々しく見えているだろう。


「そっか。頑張りな。」


私の肩を軽くポンと叩いて体育館に入っていった。




今日は日差しが強い。日焼けは絶対に嫌なので、日焼け止めのクリームを塗って、少しの日影に頼る。


近くで絵を描いていた男子が、絵の具を塗りに教室に戻っていった。

今回の絵も、一番最後に提出することになるのかな。


そんな焦燥感に駆られながら、絵の続きを描いた。

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